22XX(清水玲子)

466 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/23(木) 19:39:52
清水玲子の漫画「20XX」(既出でしたらすみません)

完璧に人間らしくプログラミングされたロボット、ジャックは、
誘拐された王女の救出を依頼され、ある星に降り立った。

ジャングルにある誘拐犯のアジトに向かう途中、ケガをして倒れている少女、ルビィを助ける。
彼女は、夜になると妖婦に変身し、寄って来た男を食べるという、食人風習のある少数民族の少女だった。

手をケガをしているルビィに狩りの獲物を渡したジャックは、プロポーズだと勘違いされてしまう。
ジャックを食べ、子供を産み、自分も子供に食べられたいと語るルビィ。
ロボットであるジャックは複雑な心境になる。彼女らにとって、食事は神聖な行為で、
「食べられること」は「命を繋ぐこと」であり、食べられず朽ち果てることは恐ろしいことだった。

行動を共にしていた2人だが、ジャックが誘拐犯に捕まってしまう。
誘拐犯はかつての相棒の弟だった。
その相棒は、かつての仕事でジャックと共に監禁され、ジャックと食事を分け合った末に亡くなったのだ。

「ロボットのくせにお前が意地汚く食事をしたせいで兄は死んだ!」
その言葉に「あの頃は自分がロボットだと知らなかった。」と答えるジャック。
しかし、飢え苦しんで死ねと独房に閉じ込められる。
食事の必要性はないのに、プログラミングの為、飢えに苦しむジャック。
そこに、ジャックを救出しようとルビィが現れた。


467 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/23(木) 20:03:22
ルビィを救おうと、架空の医師を呼びに行かせ、遠ざけようとするジャック。

街までは一週間かかると渋るルビィを怒鳴りつけると、何かが独房に投げ込まれた。

それは、ルビィの右手だった。
「戻ってくるまでそれを食べていて。」そういってルビィは駆け出して行った。
1人涙を流すジャック、どう言えば良かったのだと。吐き気を催し、ジャックはそれを食べることは出来なかった。

間一髪、仕掛けた爆弾で脱出したジャックは政府のヘリに拾われる。

爆発で火の海と化したジャングルに人影が見え、ルビィだと悟ったジャックは、強引にヘリにスカイフックさせる。

しかし、右手を失ったルビィはうまくロープにつかまっていることができない。
ロープから落ちそうになりながらルビィは「私の右手、食べてくれた?」と問う。
狩猟民族である彼女が、どんな覚悟で右手を渡したかを悟ったジャックは、答えることができない。
その表情ですべて悟ったルビィは、手を滑らせ、火の海に飲み込まれていった。

王女の無事を祝い開かれた豪華な祝賀会、美食を尽くす客から、食べないのかと聞かれたジャックは、
報酬で食欲のプログラミングを消したと答え、食の楽しみがないなんてと気の毒がられる。

ジャックが今食べたいものは、ルビィの右手だけだった。

繰り返しの後悔が、彼を苦しめた。

 

22XX (白泉社文庫)
22XX (白泉社文庫)