医者の目に涙(石川恭三)

646 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/29(水) 21:31:32
『医者の目に涙』ってお医者さんが書いたエッセイ集に載ってる話。

冷たい雨が降ってるクリスマス・イヴの夜10時頃、著者の病院に
車にひき逃げされた40歳の女性が運ばれてくる。
内臓破裂の疑いで緊急手術をすることになり、白血球数を調べたところ、白血病ということが判明。
無事手術を終えたが、白血病の話は女性には伏せておくことに。
術後三日目、女性は著者に「ほんの少しの間でいいですから私の話を聞いてください」と、
自分の生い立ちを話しはじめた。

順さん(仮名)は、3歳下の弟と上海で終戦を迎え、父は行方不明、母と病気の弟は上海にとどまり、
順さんだけが、一人、広島の実家に帰ることになった。しかし実家は原爆で跡形もなく、親戚も見つからず
上海の母とも連絡がつかなくなってしまう。
14歳の順さんは施設に引き取られ、施設を出てからは、工場の女工をはじめ幾つも勤務先を変え、今はバー勤め。
一度、結婚をしたが、別れて今は独り身だった。

実は、順さんは、弟と奇跡的な20年振りの再会をしていた。
銀行に貼ってあった顔写真入りの行員紹介のポスターがきっかけだった。
弟は銀行員で、一男一女の父となっており、母親は順さんを手を尽くして探したこと、
母親は10年前に亡くなっていたことを知った。
順さんはみじめな過去を弟に全て話さなかったが、「お母さんの位牌にお線香をあげたい」と言っても
弟の家に呼んでもらえず、いつも外で会い、この2年は会ってもいなかった。

順さんは、「弟と会わなければよかった、もうこの世に未練なんかないです。いやなことばかりの一生でした。
早くあの世にいって、母の胸の中で思いきり泣きたいんです」と語った。
弟は自分にとってはただ一人の肉親だから、自分が私が死んだらハンドバックの中の貯金通帳とハンコを
弟に渡してくださいと、著者にお願いをした。

その翌日、順さんは息を引き取り、連絡を受けて駆けつけてきた弟は、順さんの亡骸にしがみついて
「姉さん、かんべんしてぇ」と大きな声で号泣。
二ヵ月後、弟から順さんの遺骨を母親の墓地に埋葬したと著者に知らせがあった。


647 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/29(水) 21:46:05
>>646
被爆後の広島に帰ったから白血病になったんかな・・

653 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/30(木) 02:54:14
>>646
会う気があるってことは好きなんだろうに、なんで家に上げて
あげなかったんだろ・・・

654 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/30(木) 03:10:06
集られると思い込んで妻子が再会に反対してたとか

655 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/30(木) 03:27:05
バツイチでバー勤めってとこからして、
たとえ根は真面目だとしても、表面的な言動や容姿が
銀行員が身内扱いしたがらないタイプだったと思われる

656 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/30(木) 07:50:24
そもそも 本 当 に 弟 だったのか?
子供の時別れたきり大人になるまで顔みてないんだし
通帳貰ってたトカ
著者はお墓に骨壷納めているところ見たわけでもなさそうだし

665 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/30(木) 19:55:28
>>656
かなりはしょって書かなかったんだけど、お姉さんが
自分の七五三のお祝いのときに撮った家族4人の写真を見せて
弟さんは、写真の母は間違いなく亡くなった母であると確認。
それまでの出来事を、父親は行方不明のままどうやら死んだらしいとか、語り合った。

後味悪くねえじゃねえかと言われるかと思った。
だって姉さん自殺じゃないし、弟を恨んでないし、天国に還っただろうから。


666 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/30(木) 21:12:21
>>653-655
実際、そういうケースはよくあったようだよ。
戦後に家族離ればなれ。
やっと見つけて会いたがるけど、
片方はすでに仕事も家族も持ってまっとうな生活を送っている。
関わりたくないから…と会うのを拒否したりね。

弟が独身で子供いないとか
姉が結婚してるとか真面目につとめていれば反応変わったかもなー。


667 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/30(木) 22:39:31
弟さんの奥さんの立場からすると、
長年行方不明だったお姉さんが突然現れた、
しかもあまり堅い商売ではないみたい…となると、
少々警戒してしまうのも無理はないような気がする。

679 名前:本当にあった怖い名無し :2010/10/01(金) 03:28:06
>>667
というか、奥さんに話してたかどうかも怪しくない?
もし自分のところに、姉が一見DQN風になって20年ぶりに来たとしたら、
やっぱり「借金背負って金せびりに来たかな」くらい考えるし
そうでなくても恥ずかしくて今の家族に紹介したくない。
20年も経てばそれぐらい相手の事がわからなくなるだろうし、
自分の身内意識も薄れると思う。

この場合は姉が亡くなって弟が遺産を相続したから、

・それなりの財産がある (←たかり目的で家族を探したわけではない)
・その財産を弟に残す (←20年会ってなかった弟でも、本気で身内と思っている)

という事がやっとわかって、弟も姉を認めて後悔したんじゃないかな。


697 名前:本当にあった怖い名無し :2010/10/01(金) 22:54:18
>>679
>というか、奥さんに話してたかどうかも怪しくない?

推測の通りです。はしょったばっかりに、すみません。
お姉さんが弟さんに、「あなたの奥さんや子供たちにも会いたいわ。いつが都合がいいかしら」ときいても
「家内は妊娠6ヶ月だから、もう少し先になってからにしてよ」と、家に来て欲しくない感じだったそうです。

何度か会っても、家への誘いはなく、奥さんからも手紙電話もなかったので、
たぶん、自分のことは奥さんには話してないんだろうと著者には語ったそうです。


699 名前:本当にあった怖い名無し :2010/10/02(土) 02:16:55
自分に置き換えたら弟の気持ちもわかるわな。
銀行勤めで家族持ちの30過ぎの自分の元に、
10才の頃に生き別れた姉がやってきたらどうするか。

ぶっちゃけ「姉よ」と言われてもわからんだろう。
「本当に姉かも?」と思っても、水商売で酒焼けした顔や声、
派手な外見の女に懐かしさを覚えるかどうか。
記憶にあるのは素朴な中学生の姉だもんな。