ケータイ捜査官7/第40話「桐原とサード」

344 名前:1/8 :2010/11/21(日) 14:12:03
ケータイ捜査官7の「桐原とサード」。後味悪いというか重い。

ケータイ捜査官7てのは、喋る・歩く・ハッキングできる、踊る事だってできるよ!な
携帯電話※が人間の相棒として出てくる特撮ドラマ。
※つってもケータイの形したロボットと思った方が分かりやすいかも。

そのケータイたちは作中では、アンダーアンカーという名前の秘密組織で作られており、
そこはネットが関わる犯罪を未然に防ぐ・起こった場合は即対処・解決するという組織。
基本的に組織に所属するエージェント(人間)1人と携帯電話1台がコンビを組んで事件を解決する、
というのがセオリー。

主人公はひょんな事から事件に巻き込まれ、
それをきっかけにアンダーアンカーのエージェントになった高校生。
バディ(相棒)の携帯電話セブンは以前にも別のエージェントとコンビを組んでいたが
そのエージェントが殉死したため、主人公と新しくコンビを組み直した。

殉死したエージェント・滝本はバディ携帯セブンにとっても大きな存在だったが
主人公にとっても同じで、出会った期間は短かくとも考え方や生き方について大きな影響を受けている。

本編では基本的に主人公の成長や、彼が生真面目なバディ携帯セブンと喧嘩したり
ぶつかったりしながらも次第に絆を深めていく様子を描いているが、
このストーリーの中心となるのはタイトルにも出てくる「桐原」という人物。

「桐原」は主人公の先輩エージェントでいつも不機嫌で誰に対しても挑発的な男。
ネットと常に近い存在にいるアンダーアンカーのエージェントでありながら、
ネット社会を嫌っている。ただし実力は折り紙つきでアンダーアンカーのエースともいえる存在。
主人公に対しては最初は主人公の未熟さもあり冷たく当たっていたが、
主人公が成長するに従って、少しずつ彼を認めていった。


345 名前:2/8 :2010/11/21(日) 14:14:15
この桐原は本編でも度々「過去になにか事件があり、それがきっかけでエージェントになった」ことが
語られるがそれがこのエピソードで明らかになる。

その事件は桐原の人生を根底から変えるもので、13年前に起こった通り魔殺人事件であった。
その被害者は桐原の家族。桐原の両親と小学生の弟は買い物の帰り、
何者かに刃物でメッタ刺しにされるという惨い方法で殺されたのだった。

当時まだ高校生だった桐原は友達の家に遊びに行っており難を逃れたのだが、
いつものように家に帰ってきた彼が見たものは家族の変わり果てた姿と、
犯人が面白がるように残した、家族の血で書いたメッセージだった。

犯人はそれと同じメッセージを“アカツキ”と名乗りインターネット上にも書き込んでおり、
不可解なメッセージと猟奇的な殺人は世間の注目を集め、雑誌やテレビ、様々な媒体で取り上げられた。
そして警察の手を逃れ、いまだ未解決、謎の多い事件の犯人である“アカツキ”は
アンダーグラウンドを好むネット上の住人たちの間で神のように祭り上げられていた。
そして、被害者である桐原の家族の情報までもがあっという間にネット上に流れ
“アカツキ”事件を語る上での格好のネタにされていたのだった。

それ以来桐原はネットを悪用する人間を憎み、安易にネットを信用する者を軽蔑してきた。
そして犯人を捕まえるため、アンダーアンカーへと入ったのであった。
ネットでアカツキの名が出るたび、犯人らしき人間が現れるたび
桐原は独自に調べ、がむしゃらに犯人を追っていたのだ。

主人公が普段のようにアンダーアンカーに来ると、桐原は犯人らしき人物を見つけ
コンタクトを取るため外出していた。主人公は上司や年上の同僚からアカツキ事件の事を聞き驚愕する。
そしてこの件に関してアンダーアンカーが口出ししないと桐原と約束を交わしていたことに対しても。
納得のいかない主人公は桐原の向かった場所へと急行した。


346 名前:3/8 :2010/11/21(日) 14:15:30
『行ってどうする?』とバディ携帯セブンに聞かれて答える主人公。
「わかんない。分かんないけど、何も知らないままじゃ何もできない!」

桐原は新しく犯人と目星をつけた人物と接触しようとしていた。
その人物は“アカツキ”を名乗り、再び殺人を行うことを匂わす発言をインターネット上に書き込んでいたのだ。
コンタクトを取った桐原はそのアカツキが今までの名乗るだけで満足するような小物とは違い、
今度こそ犯人に違いないと確信しているようであった。
昂ぶる桐原に彼のバディ携帯サードが落ち着いて欲しいと諭す。

彼の持つバディ携帯「サード」は非常に礼儀正しく温厚で、
挑発的であったり偽悪的であったりする桐原の言動のフォローをいつも買って出ては
周囲との摩擦をなくそうと心がけている優しい性格のバディ携帯だった。

桐原はそんな相棒に分かっていると繰り返すが、それでもなおサードは言った。
“アカツキ”の事件だからこそ、普段のバディでいて欲しいと。
『私が初めて桐原様の手に握られてから、貴方を理解しようとし、従ってまいりました。
 ……あなた様はいかなる状況でも自分を見失うことなく任務を遂行し、
 私もそのお手伝いができることを大変誇りに思ってまいりました』
今日に限って思い出話か、と苦笑する桐原にサードは
『人間の表現を借りるなら胸騒ぎがするのです』と言う。そこに“アカツキ”が現れた。

一方、桐原と犯人が待ち合わせた場所の公園にやってきた主人公。
あの犯人は本物なのかと思う主人公に相棒セブンが説明する。
かつて殺人事件現場で桐原の家族の血を使って書かれたメッセージにはまだ続きがあった。

それは警察が真犯人特定のためあえて伏せていたものだが、それを桐原もまた犯人特定に使うのだろうと。


347 名前:4/8 :2010/11/21(日) 14:16:20
「もし、本物だったら・・・?」と心配する主人公にセブンは言う。
『滝本も同じ事を聞いていた、そして桐原に「考えろ」といっていた』と。

桐原は、ニヤニヤ笑いの不快なその男を罠にかけるためあえて“アカツキ”を持ちあげ賛美した。
そしてコンタクトを取った理由を説明すると話し、
アカツキ事件の遺族が犯人のことを追い、調べているらしい、と続けた。
「自分はアカツキに伝説でいて欲しい。
 だからアカツキ世代の俺たちで、遺族からアカツキを守らないか?」と
「賛成」と笑った男はすっかり桐原を同類だと勘違いし、
桐原の事を「目がにごってる。俺と同じだ」などと言い出した。

「人を殺したいんでしょ? あれはヤバイよ。でも、すぐ二度目をやっちゃ駄目なんだ。
 模倣犯が駄目なのも、そこなんだ。みんなが焦れた頃にやる。
 時効なんて恐れない。やりたい時にやる。そしたら、アカツキはもっと凄い伝説になる」
恍惚と語る男に桐原はもう一つのメッセージの事でカマをかけた。
すると男はついに尻尾を出したのだった。
男が犯人だ。そう理解した瞬間、桐原は犯人を殴りつけていた。

「お前を探している遺族っていうのは俺だよ!!」
もう一度殴りつけようとしていた所を近くにいた子供に見つめられ、桐原は思わずためらう。

通信を通じてそれを聞いていた主人公は本部に連絡を取る。
本部では「警察に連絡を」という署員を上司がなぜか止めた。
「……待ってあげてください」何を待つんだ、と焦る主人公に上司は言う。
「桐原さんの気持ちは分かっていると思います。だから彼がどう選択するか、
 彼に一任したいとおもいます」
その言葉に主人公は反発し、無責任だと責めた。
「滝本さんは『考えろ』って言ったんでしょ!? それって考えることを放棄してませんか!?」
部長はかつて滝本の恋人であった。滝本の名前は彼女に感慨を呼び起こす。


348 名前:5/8 :2010/11/21(日) 14:17:18
滝本の死は自然なものではなく、
『ゼロワン』という名前のバディ携帯のうちの1台が引き起こした事故によるものだった。
彼女の中には理不尽な事で愛するものを奪われる悲しみや、
それに伴う憎しみを抱える桐原にどこか共鳴する気持ちがあるのだ。
だがその言い争いの間に桐原は犯人の男をどこかへ連れ去ってしまっていた。

桐原は人目につかない場所に犯人を連れ込み、激情のままに殴る蹴るの暴行を繰り返していた。
そして「なぜ自分の家族を殺したんだ!」と叫ぶ。
だが犯人はその問いには答えず薄ら笑いを浮かべるだけだった。
それが更に桐原の憎悪を煽り、暴行はエスカレートしていった。

『おやめください、それ以上やれば死んでしまいます!』とサードが必死に
止めるも桐原は「自分がずっとこの時を待っていた事、お前なら分かるだろう?」と
サードに「口を挟むな」と命令する。
だがその命令を拒むサードを、桐原は激情にかられ投げ捨ててしまう。

傷だらけの犯人に桐原は冷たく告げた。
「お前をアカツキではなく、本名で晒す。……お前も、ネットで消費されるネタになれ」
だがまだ犯人は笑っていた。
「俺を殺しても俺はずっと『少年A』のままだよ、ネタにされるのはあんたの方だ」

その挑発に桐原の怒りは臨界点を超えた。
高い場所から飛び降りざまに犯人の腹を膝で蹴る。
苦痛に呻く犯人の顔を水に押し付けている所に桐原を探していた主人公が到着した。
「やめてください、桐原さん!!」
突進するようにして桐原にぶつかり、彼を止めようと必死に叫ぶ。
「桐原さん、考えてよ! 忘れたの? 考えるんだ!こんなのエージェントの仕事じゃないだろう!?」
だが、それも復讐にとらわれた桐原の心には届かない。


349 名前:6/8 :2010/11/21(日) 14:18:03
「俺の家族を殺したとき、こいつは何歳だったと思う?」
当時、犯人は未成年だった。警察に引き渡しても犯人に与えられる裁きは軽い。
それが桐原には許せないのだ。
「誰かがこいつを裁かなくてはならない!」
主人公はこみ上げる感情に涙目になりながら桐原を止めようとし続ける。
「桐原さんは、人を殺すためにアンダーアンカーに入ったんですか!?」
だが、桐原は主人公の手を振り払った。
「俺は、お前がゼロワンを許したようにはできない」

滝本の死の原因を作ったバディ携帯ゼロワンは、かつてアンダーアンカーに所属しながらも
パートナーであるエージェントを立て続けに失い、存在意義を見失っていた。
自らを「バディ殺し」と呼び、ネットを利用する犯罪者の片棒を担ぎながらさ迷うゼロワンは
かつて主人公たちと敵対し、本編の黒幕である人間と組み、主人公とセブンを捕らえ
彼らを痛めつけ、セブンを機能停止にしようとした事もあった。
だがすべてが終わった後、主人公はゼロワンが自らの存在意義に迷い、
悪事に走った一面を理解し、ゼロワンを許した。桐原はその事を言っていた。

桐原は複雑な感情に身を灼きながら、更に犯人に憎悪を向ける。
犯人に手錠をはめ、抵抗できないようにして更に殴りつける。
さすがの犯人も桐原に許しを乞うた。
「た、助けて! ……許して、殺さないで!!」
「……俺の、家族もお前に対してそう言ったはずだ!! だがどうだ?お前は許さなかった!!」
そして犯人に向かって振り上げた拳に相棒サードが身を挺して止めようとくらいつく。
「おやめください、本当に死んでしまいます!」
だが桐原は再び相棒を投げ飛ばした。コンクリートに強く打ちつけられ
サードの表示画面にヒビが入る。
損傷激しいながらもサードはよろよろと立ち上がり、桐原に向かって言った。


350 名前:7/8 :2010/11/21(日) 14:19:02
『桐原ーーーっ!やめろってつってんだろぉおおおっ!』
今だかつて聞いたこともないようなサードの声に桐原も思わず振り向き
主人公たちも唖然となる。

『殺すのか? ああんっ!? お前がそんなに頭の悪い事をしやがったら
 お前とは今日限り、バディの縁を切るっ!
 ………ということで、私が言いたいことは以上でございます。
 桐原様があくまで一線を越えるというのならわたくし本日限りでお暇をいただきとうございます。
 長々お世話様にございました』
言うだけ言うと、サードはお辞儀をして足を引きずりながら立ち去っていく。

桐原は迷っていた。桐原にとっては、サードはバディというだけではなくもはや家族と呼べる存在だ。
拳を下げるが、犯人を見れば相手が憎い。
このまま殺してしまいたい。桐原は自らの憎悪と理性の間で揺れていた。
桐原は叫ぶと、ついにその場に座り果てた。

そこに警察がやってくる。ここに居ない人間が警察に通報したようだった。
通報者の言葉は「アカツキ事件の遺族が犯人を殺そうとしている」という内容だったらしい。
(通報者は本編の黒幕の人間。愉快犯的な性格)

犯人を引き渡した相手の刑事は桐原を知っていた。桐原はかつて刑事だったのだ。
彼は警察に限界を感じ、アンダーアンカーに所属したのだ。
だが、そこでも限界を感じていた。桐原はやってきた刑事と言葉を交わす。
「ネットワークを守るだけじゃだめだ。犯罪が起こってからでは遅いんだ。
 ネットワーク自体を変えていかなくてはいけないんじゃないか」
「……でも我々は今の法に則ってやっていくしかないんです」

連行されていく犯人は連れて行かれながら振り向き、桐原をみて薄笑いを浮かべた。


351 名前:8/8 :2010/11/21(日) 14:25:28
数日後、新聞の紙面に「アカツキ事件解決」の記事が載った。
犯人=「少年A」として。桐原が危惧していたとおり紙面によると
「犯行当時犯人が未成年だったことから実名など個人情報は一切公表しない方針」との事だった。
怒りのあまり桐原は新聞を投げつける。
修理の済んだサードは桐原の傍におり、暴言を吐いた事を謝っていた。
『無意識のあまり我を忘れてしまったようです。……わたくしに比べれば、
 桐原様は立派でした。アカツキに対し己の欲望を抑え込んだのです。
 滝本様の言葉を『考えた』結果なのですよね』

サードの言葉を聞きながらネットを眺める桐原。
(こいつの顔と本名見れるサイトないかな)
(この少年A、そのうち手記とか出すんだぜ)
(時効になると思ってたけど)
相変わらず、お気楽な第三者たちによって事件は『ネタ』として扱われていた。
桐原は苦しみをこらえるような顔で言った。

「どう考えても……やつの勝ちだ」

【終わり】

これが平日の夜19時半に子供向け番組でやってたあたりすごい冒険だと思う。
子供向け番組だったけど作り手が本気出してて作ってたので良作なエピソード多し。
後味は悪くないけど、居眠り運転による交通事故の後遺症で盲目になった少女と
罪の意識に苦しみながら贖罪を続ける加害者の出てくる、救いを描いた話とか良い。


353 名前:本当にあった怖い名無し :2010/11/21(日) 15:09:05
テレ東の本気が見れるドラマだったなあ。
毎週水曜、定時に帰って夫婦揃ってテレビの前でwktkしていたのを思い出した。
まとめおつ。

355 名前:本当にあった怖い名無し :2010/11/21(日) 16:00:33

そんなに面白そうな番組だったら見ときゃよかった
ただの子供向け番組だと思って全然見たことなかった

356 名前:本当にあった怖い名無し :2010/11/21(日) 16:06:36
なんで偽善者が必ず出てきて復讐を完遂させてやんねーのかと
こーゆー話し読むたびに思う

357 名前:本当にあった怖い名無し :2010/11/21(日) 16:41:49
モヤモヤするよね。また犯人がクズでしかも少年法に守られてるから。

ただこの話で桐原を止める人達は偽善者ったらまぁそれまでだけど
自分の良心ていうよりもむしろ桐原が大事だから彼を犯罪者にしたくない
ダークサイドに落ちて欲しくない一心で必死に止めてる。
逆に「気持ちが分かるから口出しするな」言った上司は上司でそいつの事を考えてるし。

だから余計にモヤモヤするというか。


358 名前:本当にあった怖い名無し :2010/11/21(日) 16:51:14

傷を負いながらよろよろ立ち上がるケータイを想像したらワロス

 

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