午後のブリッジ(小松左京)
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606 名前:本当にあった怖い名無し :2011/09/30(金) 17:49:26.60
- じゃあ今しがた読んだショートショートから。
小松左京「午後のブリッジ」
今より未来、人口爆発で食べれる肉類が少なくなり、奪い合いと密猟の果てにほとんどが絶滅してしまい、
強権的な全世界的自然保護活動により、可食動物が厳重な保護におかれた世界。
食べれるタンパク質は合成物だけになり、それで育った若者はいいが、自然食品で育った年寄りは自然食に飢えていた。
結果、キャビア1グラムがヘロイン1グラムと同じ価格で裏取引されるようになっていた。そんなある日、主人公の金持ちは自然食を密かに愛好する仲間から「レート5のブリッジ」に誘われる。
「ブリッジ」とは隠語で自然食のことを意味しており、レート5とはとても高いという意味だった。
主人公は「最高のゲームだ」という仲間の誘いに乗り、舌なめずりしてその会に参加を決める。
何重ものエアロックをくぐった先で、大ステーキパーティーが開かれており、
その大盤振る舞いに仲間たちは大喜び。
しかしなんでそんなに大量に肉が手に入ったか、と云う疑問にマネージャーはこう答えた。
「大地震が起きて放棄された都市の遺跡から、頑丈に保管されていた原子力動力で
冷凍保存されていた肉の倉庫が見つかった。肉はそこからのものだ」と。
主人公を含む仲間たちは「レート5では安い!」と歓喜の声を上げて、次々おかわりする。一転料理場にシーンは移り、冷凍肉を解凍する料理人たち。
「急速に解凍すると味が落ちるぞ」とマネージャー。
その「肉」はまるで生きているかのよう。よく見るとピクピク動いてもいる。
マネージャーも、料理人も、その肉がなんであるかは知っていたが、
何故そこまで頑丈かつ永久的に保存されていたかまでは解らなかった。もう薄々感づいたかもしれないが……その「肉」とは、一世紀前不治の病に侵され、
未来の技術発展に期待して冷凍保存された「人間」たちだった。
「未来のヒューマニズム」に希望を託した結果が……電子レンジにかけられ、
バターと共にソテーされることになろうとは。