目のない賽(都筑道夫)

2791/2:2012/12/20(木) 00:32:30.72
都筑道夫「目のない賽」初出不明

いかさま賽作りの天才職人、友次郎。
彼が昭和30年代に死んでから、東京にはいかさま賽を作れる職人はいない。
友次郎のサイコロは、ちょっと練習すれば丁半どちらでも自由に出せる。
並みのいかさま賽は丁目賽、半目賽とわかれているのだが。

友次郎は空襲で前妻を亡くして、若い後妻を迎えた。
後妻は、友次郎のいかさま賽で自殺した男の遺児だった。
友次郎にいかさま賽を作らせまい、いかさまの犠牲者を出すまいとしてわざわざ嫁ぎ、
がむしゃらに働いて友次郎を養って過労で死んだ。

後妻は、自分の骨でいかさま賽を作れるだけ作ったら引退してほしい、
と言い遺して亡くなった。
彼らは土葬の習慣のある土地に越していたのだ。
友次郎は後妻の遺言を守ったが、後に狂って自殺した。


2802/2:2012/12/20(木) 00:33:31.18
…博打道具の収集に血道をあげている浜本が、
友次郎のいかさま賽をついに手に入れた!と駆け込んで来た。
「サイコロは消耗品だからね、しかもいかさま賽なんて、
大っぴらに売り買いできるもんじゃない。苦労したよ」

その二つのサイコロには目がなかった。
浜本が言うには、後妻の怨念のせいで友次郎が何度目を刻んでも消えてしまったとか。
友次郎は首をくくって死んだ。

未完成のサイコロを売りつけられたんだな、マニアはしょうがないな、
と思っていると、浜本が自殺した。
浜本夫人の話によると、いかさま賽に目を彫り込み、
朱と墨を入れた翌朝には失明していたそうだ。
眼科医に連れて行くため、夫人が身支度をしている間に浜本は首をくくった。

通夜の席で賽を転がしてみると、わずかな練習で丁半が思いのままに出せるようになった。
私たちは夫人とも相談して、その賽ふたつを浜本の棺に入れてやった。終。


282 本当にあった怖い名無し:2012/12/20(木) 11:08:35.15
>>279-280
後味が悪いというより、普通にホラーな話だな。

 

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