空き缶ユートピア(井上ひさし)
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545:本当にあった怖い名無し:2013/01/03(木) 11:37:21.62
- 井上ひさし「空き缶ユートピア」
かつては新進気鋭の画家、縫製工場の腕利き工員、新劇一座の花形女優など
自身の仕事を誇りにしながら今は年を重ね落ちぶれ、
細々とホームに寄り添って暮らす老人達。
彼らは自分達の特技を生かし大金を金持ちから巻き上げる計画を立てていた。
(画家の模写能力で高い絵画とすり替える)ホームは若い女性Aが勤めており、老人たちとも仲が良いこともあってその計画に感付く。
Aには将来を誓った恋人がいるのだがA親が今で言う毒親で
Aの稼ぐわずかな給料を全て搾取していた。
絶対にばらさないから仲間に入れて手伝わせてほしいと懇願するAと恋人。
老人たちはAが好きだし信頼していたのだが、万が一を考えしらばっくれ仲間にはしなかった。それからしばらく経ちホームに新たに男性Bが入ってくる。
彼は若い頃政府の甘言に騙され満州に渡り、苦労の末全てを失ってしまった人物だった。
Bは未だにその宣伝の音頭をとっていた大物政治家Cを恨んでいる。
計画は立てたものの、誰から盗むかを決めかねていた老人たちは
標的をCに決め、Bを仲間に入れる。各自が特技を生かし、計画は首尾よく進み老人たちは無事Cから大金を騙し取る事が出来た。
とりあえず今晩は休み、明日改めて山分けしようとしたところ翌朝大金はなくなっていた。
長年付き合っていた自分の事は信用しなかったのに新入りのBは
あっさり仲間に入れたのを逆恨みしたAが大金を盗んで恋人と駆け落ちしたのだった。
結局Aは気が変わったか元々逃亡する気はなくて戻ってくるも
肝心の大金はどこかに捨てたか寄付してきていて老人たちに説教。
老人たちはがっかりするがこれで良かったんだと和解し終了。倫理的にはいくら悪党の金でも犯罪には違いないから確かにこれで良かったのかもしれないが、
心情的には大金山分けで終わらせてほしかった。
Aも可哀相な人ではあるんだけど、最初は盗みの仲間に入ろうとしたくせに
逆恨みしてドヤ顔説教とかまさにお前が言うな状態。
復讐物で最後の最後で仇が逃げ、復讐果たせなかったもやもや感と同じ。