寵蝶の歌(皆川博子)
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857:1/3:2013/05/25(土) 10:22:16.65
- 皆川博子の短編「寵蝶(ちょうちょう)の歌」
明治時代、政治家の幼い一人娘みちよの視点で話は進む。 母が亡くなり、女中のおキミが後妻におさまった。 
 屋敷には母の妹のみどり叔母が居候している。
 後妻は
 「みどりさんは淫らだから油断がならないわ、いいえ子供は知らなくていい事よ」
 「みどりさんは立派な人だからママは見習わなくてはならないの」
 などと言う。母の生前、両親とおキミは階下の座敷に三人仲良く寝ていた。 
 (3Pなのか女中を寝室の付属品と心得ていたのかは不明)
 みちよは二階の座敷で婆やに添い寝してもらっていたが、後妻が父に
 「いつまでも赤ちゃんのようでおかしゅうございます」
 と言いつけたので、婆やは暇をとりみちよは一人で寝ている。
 二階の座敷は底冷えがするが、後妻は火事を心配して火鉢を置かない。婆やは暇をとる前に、二階の座敷に母の嫁入り道具のひとつだった由緒ある雛人形を飾った。 
 「お雛様のお目々は真っ黒でございましょう、夜が潜んでおりますんですよ」
 「ですからみいちゃまのお目々のかわりをいたしますよ、
 みいちゃまには見えないような所のものも見えますの」
 そう言われたみちよは、女雛を応接間に飾った。
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858:2/3:2013/05/25(土) 10:23:25.85
- (婆やはみちよが寝付くまで昔話や歌であやしてくれた。タイトルに繋がるが割愛)
玄関ホールには大階段があり、長い手すりが踊り場の所で向きを変えている。 
 みちよは手すりを滑り降りる遊びが得意だが、母は危ないからと厳しく止めたものだった。
 しかし後妻は、
 「そうね、みいちゃんはお上手ですものね」
 と笑うだけだった。父が外遊で数ヵ月留守にした時、土曜日ごとに若い男が大勢集まって酒を飲んでは 
 レコードの音楽に合わせて踊っていた。母も叔母も着飾って踊った。
 父が帰ってきてしばらくすると母が亡くなり、おキミが後妻におさまった。
 父の洋行土産はビスクドールだった。
 みちよは「少し恐い顔」の人形が好きではなかったが、遊ぶと父の機嫌がいいのでよく遊んだ。ある日、庭でうっかり人形を落としてしまい、顔が割れてしまった。 後日手すり滑りに失敗して床に落ちた時、みちよは人形の事を思い出した。 
 応接間で父と叔母と後妻の言い争いが始まった。
 大階段に腰掛けていたみちよには見えないはずだが、
 応接間に飾った女雛の目を通して見ていた。
 (婆やの言った通りだわ、こんなにもはっきり見える)
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859 :3/3:2013/05/25(土) 10:27:28.17
- 叔母が屋敷を出ていくと言うと、父は抱き締めて止めた。
 そこに後妻が入ってきた。
 父は出ていくよう命じたが、後妻は、そんな口の聞き方をして、
 叔母に「あの事」を言ってもいいのか、と居直った。「なんの事。御義兄様が姉を階段から突き落として、外遊中にできた不義の子を流産させた事?」 
 「それが原因で姉が亡くなった事?」
 「不義密通を知った御義兄様がオセローのようにお怒りになった事?」
 「おキミさん、あなたが御義兄様を脅迫して首尾よく後妻におさまった事?」
 さらに叔母は、後妻がみちよを殺した場面を見たと言った。後妻は、階段横に飾ってあった西洋甲冑を手すりから落ちて気を失ったみちよの頭の上に倒し、 
 指紋を拭いてから人を呼んだのだった。
 「三人で仲良くやりましょう。でもあたくしが一番有利ね、手を汚してないのはあたくしだけ」(なんの事かしら、みちよはここにいるのに) 
 (手すり滑りに失敗してから誰もみちよに話しかけてくれない…)
 (おとうさまとママは手を洗ってないのかしら?みちよの手はきれいだわ)後妻に虐待された事にも死んだ事にも気づいていない幼女がかわいそうで後味悪い。 
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869 :本当にあった怖い名無し:2013/05/25(土) 15:57:11.40
- >>857
 婆やに暇を出したのって、
 主人公をひとりにして消しやすくしたかったからか
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871 :本当にあった怖い名無し:2013/05/25(土) 17:17:09.70
- >>857
 いいなぁ、こんな話は好きだわ。





