くじ(シャーリィ・ジャクスン)

4161/3:2013/11/30(土) 11:42:11.83
シャーリィ・ジャクスン「くじ」

今日は毎年恒例の、神聖なくじ引きの日。
午前十時、怪我や病気で出掛けられない者を除いて、村人全員が広場に集まった。
この村は人口300人足らずなので、十時開始でもくじ引きは正午までに終わる。
ある町では、前日から始めないとこの日のうちに終わらないそうだ。

男の子は石を集めながらやって来て、広場の一角に石の小山を作った。
女の子は賑やかに喋りあっていたが、仕事を終えてやって来た親達を見つけて
走ってゆき、家族単位で集まった。

くじ係がくじ引き開始を厳かに宣言した。
本当は長い詠唱が付き物らしいが、村一番の年寄りも覚えちゃいない。


4172/3:2013/11/30(土) 11:45:06.25
くじ引きは、それ程古くからある伝統なのだ。

くじ係と世話人が名簿をもとにくじを作り、
専用の箱に入れて金庫で厳重に保管する。
この日、まず一族の長がくじを引く。
次に、当たりを引いた一族に連なる一家の家長がくじを引く。
最後に、当たりを引いた一家全員がくじを引く。
当たりを引いた者は…

外れを引いた一族の年寄りがぼやき始めた。
ある村ではくじを止めてしまったそうだ、
若僧の意見を聞き入れるとは実に嘆かわしい。
アメリカの伝統を何だと思っているのか。

当たりを引いた一家の妻が騒いでいる。
くじ係が夫を急かして、くじを十分に選ぶ時間を与えなかった、と言うのだ。


418 3/3:2013/11/30(土) 11:47:23.71
でも神聖な伝統なので、その一家(夫婦と息子娘)はくじを引いた。
娘の友達の、「どうか(娘の名前)じゃありませんように」という呟きは
あっという間に広場中に広がった。

当たりを引いたのは妻だった。
ずるいよこんなのってフェアじゃないよ、と騒ぐ妻に、村人は石を投げた。
ついさっきまで親しくお喋りしていた隣人の妻は、
頭を狙って特別大きな石を投げつけた。
夫と息子と娘も石を投げた。終

1948年『ニューヨーカー』誌掲載


421 本当にあった怖い名無し:2013/11/30(土) 14:37:11.01
>>416
間引きってこと?怖いなー

422 本当にあった怖い名無し:2013/11/30(土) 14:43:04.05
ジャクスンは山荘奇談といいずっとお城で暮らしてるといい
このスレ向きの作品が多いな

 

くじ (異色作家短篇集)
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贈る物語 Terror みんな怖い話が大好き (光文社文庫)
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