「小さい潜水艦に恋をしたでかすぎるクジラの話(野坂昭如)
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672 名前:長文スマソ 投稿日:02/04/24 21:53
- 小学生の時、市民会館でこども映画祭りというのがやっていた。
何でそんなのに行ったのは覚えていないのだが、
その時みたアニメ映画は今でもよく覚えているのだ。それは日本が外国と戦争をしていたころ。
あるところに群れからはぐれた一頭のクジラがいた。
確か名前があったのだが忘れたんで仮名、太郎にしておく。
太郎は海鳥や魚の群れを見るたびに寂しいから友達になってと頼むのだが
「おめーはクジラだろが!!」と馬鹿にされるか、逃げられてしまう。
いつも彼はなぜ自分は一人なのかとホロホロ涙をこぼすのだった。
そんなある日、彼は自分とそっくりな子を見つける。
「ねえねえ、僕は太郎。君は?」
相手は何も答えない。
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673 名前:長文スマソ 投稿日:02/04/24 21:54
- それもそのはず、それは日本軍の船(潜水艦か軍艦)だったのだから。
しかし太郎の目にはその黒くて大きい体が自分と同じクジラだと思ったのです。
(まあ、ガキ向けのアニメだしな)
船は物資を運び終えて日本に帰る途中でした。
太郎は勝手にこの船を友達だと思い、ついていくことにした。
勿論、太郎のお喋りに答えてくれるはずはないけれど
船はただ一人、彼を拒みも傷つけたりもしなかったから。
いつも一緒のこのクジラに船の船員たちもいつしか気づくようになった。
「船長、このクジラいつもついてきますね」
船員達の声に、お決まりのマドロスパイプ加えたヒゲもじゃの船長は
愉快そうにパイプをくゆらすのであった。
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674 名前:長文スマソ 投稿日:02/04/24 21:55
- そんなある日、突如船がアメ公の潜水艦に見つかってしまったのだ。
「なんてこった、もう少しで日本だというのにっ!!」
船長の叫びも空しく、敵船の魚雷が船を掠める。
反撃する武器のないこの船では沈没も時間の問題である。
船室では最期の時を待つ船員達が、震えながら
「天皇陛下バンザーイ」とか「花子(仮名)父ちゃんもうだめだー」など叫びあっている。
魚雷の第二波が来た。皆、死を覚悟した。その時だ、船の間に割ってはいったものがある。太郎だっ!!
太郎は友達(船)がいじめられているものと思ったのだ。
魚雷は盾となった太郎に次々と当たっていく。
「いじめないで!僕の友達をいじめないで!!」
太郎の叫びも空しく魚雷は次々と打ち込まれる。
傷だらけで生き絶え絶えになった太郎は渾身の力を振り絞って、
アメ公の潜水艦に体当たりをしかけるのであった。
攻撃がやんだのに気づいた船員達は恐る恐る外にでていく。
彼らが目にしたのは今にも息絶えそうなボロボロの太郎の姿であった。
太郎は薄めを開けて船が無事な姿を確認する。
そして「よかった、君が無事で・・・」そういい残して暗い海の中に沈んでいくのだった。
「船長、あのクジラ馬鹿ですよね、敵の魚雷に突っ込んでいくなんて」
一番年若い航海士が泣きながらそう言った。
みんな何も言わなかった。あちこちで嗚咽があがっていた。
「帰ろう、日本へ。命を懸けてくれた彼のために」
太郎のいたところに敬礼すると、船長は舵をとるよう命令を下した。
夕暮れで赤く染まった海を、船は静かに進んでいった。ハッピーエンドだと思ってたのに・・・。
これって原作あるんでしょうか(´д`)。
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677 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:02/04/24 22:31
- その鯨の話、たしか野坂昭如の原作だよ。
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683 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:02/04/24 23:15
- >>672
俺も読んだ事あるなあ。
たしか「戦争童話集」とかいう
タイトルだったような。
ちがってたら五面。
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705 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:02/04/25 21:41
- >>672
いい話をありがとう。
心から感謝する。