島ひきおに(山下明生)

398 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2005/05/10(火) 18:41:24
むかし、ある無人島にひとりの鬼が住んでいた。
鬼はひとりぼっちでとても寂しい思いをしていた。
ある嵐の晩、暗闇に光る鬼の目を、街の明かりと勘違いした漁師が助けを求めて島に辿り着く。
明かりの正体が鬼だとわかった漁師は、恐怖におののき、
今にも逃げ出したい気持ちでいっぱいになった。
しかし怖い鬼の機嫌を損ねたら大変だと思い、ビクビクしながらも
鬼と共に島で一夜を明かすことにする。
鬼の方はというと、突然の訪問者に大変喜び、漁師を手厚く歓迎した。
そして「自分はひとりぼっちで寂しいし、村のみんなと仲良くしたいんだが、どうすればいいか?」
と漁師に相談する。
「冗談じゃない!鬼なんかが村にやって来たら大変なことになる!」と思った漁師は、
「私の村はとても小さいので、鬼さんが住めるような場所はありません」と答えた。
それでも友達が欲しいと言う鬼。
あまり断り続けても、鬼の機嫌を損ねて自分の命が危うくなってしまうし…。
「この島を引いて来たらいいかもしれません」と漁師は適当に答えた。
鬼はそのアイデアに頷き、とても喜んだ。
次の朝、漁師は村へ逃げるように島を後にする。
数日後、鬼が島を引いて村にやって来た。
「おーい、こっち来て遊んでけ!」と村人に声をかける鬼。
しかし村人たちは鬼を怖がり、色々な理由をつけて追い返した。
追い返された鬼はまた広い海の中、「えーんやこら。えーんやこら」と島を引いて歩いた。
あちらの村、こちらの村、ひたすら島を引いて歩いた。
「おーい、こっち来て遊んでけ!」と声をかけ続ける。
だがどの村へ行っても、村人は鬼に近寄りもせず、怖がられ、追い返された。
「えーんやこら。えーんやこら」
鬼はすっかり痩せ細ってしまったが、それでも友達を探して広い海の中、島を引いて歩き続けた。

399 名前:398 投稿日:2005/05/10(火) 18:45:35
小学校の時、国語の時間に先生が読んでくれた
島ひきおにというお話です。
思い出しながら書いたので若干違うかもしれません。すいません。
後味の悪い、というか、切ないお話ですね。
小学生ながら人間というものについて色々考えさせられたような記憶があります。

 

山下明生・童話の島じま〈3〉梶山俊夫の島・島ひきおに
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島ひきおに (絵本・日本むかし話)
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