復讐執行人(大石圭)

624 名前:1/2 投稿日:2006/06/09(金) 17:10:59
「復讐執行人」  大石 圭

主人公「香月健太」には、妻と二人の娘がいる。
事件は明日から家族旅行に行くという夜起きた。
夜中、コトンという小さな音で健太は目を覚ます。
一階に降りていくと男がいた。そして健太は腹部を刺されて気を失う。
気が付くと健太は、二階の寝室の柱に猿ぐつわをされ、縛られていた。
ベッドには妻があられもない姿で、大の字に手足を縛られていた。
傍には自分を刺した痩せた男が立っていた。
男は「奥さん俺のこと覚えてる?あれだけ仲良くしてたのに・・・」等と言いながら
妻を健太の目の前で犯し、デジカメで撮影しまくった。
「香月さん。奥さんは聖女じゃないんだよ。とんだとばっちりだったな」
男は健太の目の前でそう言うと、まだ刺さっていたナイフを引き抜き、部屋を出て行った。
健太は自力で戒めを解き、妻がまだ生きていることを確認し、電話した。
健太は病院で、妻が脳死状態、娘二人が殺されていたことを知る。
妻の交友関係を調べ、似顔絵も作成されたが捜査は難航した。
自問自答し、嘆き悲しみ、涙も枯れ果てた頃、健太は復讐を決意する。

健太の事件がTVを騒がせなくなってきた頃、犯人は事件を起こす。
被害者は「村山博和」一家(四人家族全員死亡)警察は健太の事件と同じ犯人だと告げる。
刑事は健太と村山の妻同士になんらかの接点があるとにらみ、捜査するが見つけられない。
健太は殺された村山の寝室で、一枚の写真を見て気づく。


625 名前:2/2 投稿日:2006/06/09(金) 17:11:35
自宅に帰り古い写真を確かめると、そこには健太・村山・犯人「草野純一郎」の姿があった。
小学生の頃、うまく友達と付き合うことができない、無口な子供達を集めた柔道教室の
合宿に行ったときの集合写真だった(健太は3ヶ月でやめた)
三人は子供の頃会っていた。妻に言っていたことは自分に言ってたんだと気づく。
興信所を使い草野の居場所を突き止める健太。
その日脳死状態だった妻が息を引き取る。
最後の朝食、最後の切符購入、そう思いながら草野のマンションに着く健太。
草野を妻と同じようになぶり殺して、自分も死ぬつもりだった。

健太は草野を殴り倒し、ベッドに妻と同じように縛り付け問いかける。何故だと。
草野は悲しげな顔をして約束を覚えてないのかと言った。
健太は、おまえの顔は思い出せたが約束は知らないと答える。
ほんとに覚えてないんだなと草野は言う。
三人は内気で無口で空気のような存在感の子供だった。
それを治そうと柔道教室にそれぞれ通い始めた。そこで三人は仲良くなっていった。
合宿の夜、三人で星空を見ながら約束をする。
「俺たちは誰も気にしない雑草だ。恋愛も結婚もできずに一人で生きていくのだろう。
それなら一生結婚しない。誰かが結婚したら、残った奴がそいつと家族を殺しに行く」
そんな昔の事で俺たちをこんな目に・・・健太は愕然とする。
健太は殺すことができず、通報すると告げ電話を掛けた。
振り向くと草野はベランダに立っていた。不思議と恐怖は感じなかった。
草野が差し出した缶コーヒーをもらいながら健太は理解した。
オレと村山にはお互いに最愛の妻という奇跡が起きた。こいつには起きなかったんだ・・・。
ベランダに座りコーヒーを飲む二人。
「健太。おまえは誰に生きる方法を教えてもらったんだ?」
「僕は今でも友達って言葉を聞くとおまえと村山の事を思い出すんだ」
「僕は地獄に行くだろう。いつか天国に行ったら村山に伝えてくれ」
健太は何も言えず、ただ草野を見つめるしかなかった。

 

復讐執行人 (角川ホラー文庫)
復讐執行人 (角川ホラー文庫)