天使禁猟区/シャティエルの死(由貴香織里)

737 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/07/16(日) 17:23:59
天使禁猟区というファンタジー漫画の一エピソードがなかなか後味悪い。

この漫画内での天国はかなり戒律が厳しく、
天使たちは両性あって生殖器も備え付けられてるのにセックス禁止、
それどころか恋愛そのものを禁止。神以外を愛するなというスタンス。
もちろん、禁じられた行為の末に産まれてくる『天使同士の子供』は
存在自体が認められず、ただ天使同士の子供だというだけで死刑対象。
それは天使同士の濃すぎる血によって時折発生する、
アイオーンと呼ばれる特殊能力を持つ天使を恐れたためだとも言われている。

天界での幹部候補生の少年・ラジエルは研修のために貧民層を訪れる。
そこは何らかの罰を受けて社会復帰できなくなったホームレス天使や、
羽の欠損などで産まれながらに『天使未満』扱いされたカタワ者や、
愛し合ってしまったために人目を忍んで移り住んだカップルやら家族やらが住んでいる。
基本的に『負け組がなにやろうとシラネーヨ』という扱いで野放し。
健全に育ったラジエルは人々や街の荒れた姿にびびりつつ、将来のためだと自分に言い聞かせる。
そんなところへ、いきなり現れた片羽の少女に殴りかかられた。
はじめはなんだこいつと思いながらも片羽の少女と仲良くなっていくラジエル。
少女は赤い目の大勢の子供たちと暮らしていた。
赤目は血の濃すぎる天使同士の子供によく見られる奇形だ。
もちろんその子供たちの親は全て処刑されており、年長の少女が世話をしているのだという。
「生まれながらに罪があるなんて馬鹿げてる。上級天使は理由をつけて狩りを楽しんでるだけだ。
 愛する者がいてなにが悪い。あんただって好きな人を抱きしめたいと思うだろ」と少女は主張。
純粋なラジエルはそんな事思った事はないと赤面しながら答え、
「あんたがそんな生真面目すぎる性格だって知ってたら殴らなかったのに」と少女は言う。

何度か研修に訪れ、ラジエルは今の天界の考えは間違っていると思い始める。
会うたびに少女との仲も深まっていき、赤目の子供たちにも慕われるようになった。
飢えに苦しむ子供たちのために、貧民層の人たちに奉仕活動を行いましょうと提案するラジエル。
それは受け入れられ、ラジエルは子供たちにケーキなどの食糧を渡し、飾り気のない少女に首飾りをあげた。


738 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/07/16(日) 17:25:20
首飾りをつけた少女をラジエルは綺麗だとほめる。
少女は泣きながら、何故自分がはじめてあった時にラジエルを襲ったのかを語る。
研修隊としてやってくる大抵の天使たちは、
殺しても罪にならない下層天使を遊び半分に虐殺したり、
存在自体が認められていないからバレにくいと、
下層に暮らす少女たちをレイプして楽しんでいる。
少女はいかにも上級天使といった風情のラジエルを見た時、
また酷い事をされると思い、殴りかかったのだと言う。
「だからもうあたしは綺麗になれないんだ」と泣きじゃくる少女をはげますラジエル。
そして彼女の姿を見ながらはじめて「どうして好きな人を抱きしめてはいけないんだろう?」と疑問に思う。
少女にふれようとしたところで赤目の子供たちが呼びに来たのでストップ。
和やかに笑いあいながらケーキにナイフをいれたところ、いきなり身の周りの物が爆発した。
救援物資の中には爆弾が仕込まれており、ケーキの中に起爆スイッチがあったらしい。
ラジエルは怪我をしただけですんだものの、周りの子供たちは血まみれで死に絶えていた。
少女の姿を探すと、生首がふってきた。それは少女の顔をしていた。
首飾りに仕掛けられていた爆弾のために、少女は首と胴体が切り離されたのだった。

物資をよこしてくれた人に抗議すると、
以前から上層部へのテロを企む集団がいたから始末しただけだと言われる。
いまだに生存者はいるが、どうせクズだから必要ない、
その地のものは全て消し去りこれから清浄化するという。
「お前は良い事をしていると自己満足にひたりながら、
 我々に下層を一掃させるチャンスを与えただけなんだよプギャー」
と笑われるラジエル。
しかも下層天使と組んでテロを起こそうとしたと無実の汚名を着せられ始末されそうになる。
上司が土下座し、ラジエルも無理矢理謝らされなんとか許されるものの
「僕はあの時頭を下げて許しを請うより、潔白を叫びながら殺された方がどんなに良かったか…」
とラジエルは少女の生首を思い出して上司に向かって泣き叫んだ。


752 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/07/16(日) 21:01:17
性欲をもてあます天使たちが争ったりする様を見て
神様や幹部天使がプギャーするって感じで、ラスボスも神様だった。
神様がつくりだすってより、
神様のつくった装置(?)から生まれてくるって感じだったような(ごめんうろ覚えだ)
一部の上級天使は下級天使を創りだす事もできる。
人口が増え過ぎると、地獄との間に戦争を起こさせて間引く。
最終的には主人公が神様を殺して「これからの天国は民主主義だ!」みたいな感じになって一応ハッピーエンド
でも物語全体がハッピーエンドでも、このエピソードはどうしようもなく救いがない。
セックス禁止令のせいで下層に追いやられてる人々を蔑みながらレイプする矛盾天使やら、
綺麗になるだろうと思ってあげた首飾りのせいで首チョンパという展開が読んでて後味悪かった。
善意が害悪になってしまうという展開に弱い

757 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/07/16(日) 22:08:32
天使禁猟区で一番後味悪いのは、この先一生人に白い目を向けられたり、
捕まって引き離されたりする可能性を抱えつつ後ろ暗い一生を承知の上で、
相思相愛の実妹とのめくるめく愛とセックルの日々に思いを馳せ、自分に惚れてる第三者を前に
「そんな人生が送れる俺たちってすげえハッピー」と、主人公がどーしょもない幸せで
頭一杯になってる終わりかただと思うんだが。
(最初の構想どおり、死んでいればまだ良かったのに)

 

天使禁猟区 (第6巻) (白泉社文庫)
天使禁猟区 (第6巻) (白泉社文庫)