二者択一(関よしみ)
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268 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/11/05(日) 01:35:32
- 関よしみ「二者択一」
受験生の涼美は、なんにでも迷ってばかりの幼い妹・奈々美に苛立ってばかり。
奈々美は二つのケーキを前にしても、どちらを食べようか悩み出す。
涼美はケーキを半分にわけて半分ずつ食べるように提案した。
賢いねとはしゃぐ妹。あんたがバカなのよと言う涼美に、奈々美は言い返す。
だって世の中はケーキみたいに割り切れる事ばかりじゃない。
たとえば、もうすぐ生まれる赤ちゃんの名前だって……
祖父と両親は、赤ちゃんの名前を剛にするか光一にするかで争っていた。母が突然倒れた 医者は、母か子かどちらかしか生かせないと言う。
母を選べば、もう子供を作る事のできない体になるという。
祖父母は子を、父と涼美は母を選んだ。2対2だ。
奈々美に意見を委ねると、悩んだ末に奈々美は母を選んだ。
祖父は跡取も産めない嫁などいらないと騒ぎ、
今までも娘ばかり産んだことで責めつづけられていた母はとうとう離婚を決意した。
母は実家に帰るという。父と母、どちらを選ぶか迫られる姉妹。
涼美は父を選んだ。もうすぐ受験なのに、今更母の実家のド田舎に行くわけにはいかない。
妹は母と祖父母との板ばさみで苦しみ、
自分の選択のせいで弟が生まれてこれなかった罪悪感もあり、
「赤ちゃんの声がする」と泣き叫びながら奈々美の部屋に飛び込んできた。
一人だと怖いから涼美のベッドに寝かせてほしいと言う。
勉強しているところなんだからダメよと涼美は拒否した。
一段落終えて、冷たくしすぎたと反省しながら謝りに行くが、奈々美はいなかった。
「おとうさんもおかあさんもだいすき えらべないからあかちゃんのトコにいく」
家族総出で探し、やがて奈々美は橋から飛び降り死体となって発見された葬式に出るために母が実家から出てきた 祖父はお前が奈々美を殺したと母を責める
父は母をかばいながら、これからはもっとちゃんとみんなでいようと母を抱きしめ、母は離婚をやめることにした
あの夜奈々美が自分の部屋にきた時、受け入れていれば奈々美は死ななかったのだろうかと思いながら涼美は眠る。
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270 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/11/05(日) 01:37:47
- 夢の中に奈々美が現れた。「天国」「地獄」という標識の前でどちらに行こうか迷っていた。
「天国に決まってるでしょ なんで悩んでるの」
「でも神様に、自殺するのは悪い子だって言われちゃったよ」
奈々美はそう言いながら泣いていた祖父は、もう悪い事が起きないようにと魔よけの鬼瓦を取り付けに屋根に登った。
だがすべってしまい、なんとか縁につかまったものの今にも落ちそうだった
助けようとして祖母もすべり、同じ状態になる。
体重の軽い祖母を助けているうちに、祖父はすべりおちて死んでしまった。
祖父は首の骨を折り、しばらくは浅い呼吸を続けていたが、やがてそれも止まり脳死状態になった。
医師は「このまま延命処置を継続するか、生命維持装置を取り外すか」選べという。
祖母は「あたしが死んじゃえばよかったのに」と泣き叫ぶ。
「あたしが間違ってたの?おじいちゃんを先に助けた方が良かったの!?」
今まで涼美は迷った事などなかった。自分の選択が間違いだと思った事も。
だが全ての選択が間違っていたのかもしれない。あの時ああすれば…
結局葬式を3回も続けて出すのはあんまりだという事で、祖父は延命された放課後。友人二人が「図書室に行こう」「それよりウチで一緒に勉強しよう」と話しかけてくる。
どっちを選べばいいかわからないと涼美は答え、別にいいよと友人たちは困ったように言い、結局涼美は一人で帰った。
帰路は二つあって、どちらを通っても距離はそんなに変わらないので、今まで気紛れで通っていた。
でもそれも間違っていたのかも…二つの道を前に、どちらを通ろうか悩みつづける涼美。これでは奈々美と変わらない。
意を決して走り出すと、向こうから車が走ってきた。乗っているのは両親だ。
車は涼美を避けて崖に突進し、崖際にある木にぶつかって停止した
今にも折れそうな木に危ういバランスで支えられ、車はすぐにでも落ちそうだ。
両親は左右の車からそれぞれ手を伸ばして助けを呼ぶ。
父か母。どちらかを選ばなければならない。
このままでは二人とも死んでしまう。でも涼美にはどちらも選べない。
「あ、そうだ!」涼美は吹っ切れたような顔で、ある方法を思いつく。
「ど・ち・らにしようかな~天の神様の言うとおり~」
自分で考えるという事から解放され、笑顔で涼美は歌い出した