くだんからの伝言(柳原望)
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143 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/02/14(水) 18:35:06
- タイトル忘れたけど短編漫画
主人公の勤める地方のラジオ局が、牛の被り物をつけた男に占拠される。
男は自分の事を「くだん」と名乗り、ラジオ局占拠の目的は、
ラジオを通して町のみんなに自分の予言を聞かせたいからだという。
で、少年の言った通りに晴れと予報されたばかりなのに雨が降ったり、
スーパーの看板が落下したり、堤防が崩れたり、病院の焼却炉が爆発したりする。
でも天気予報が外れる事なんてよくあるし、
スーパーの看板や堤防は前から危ないと言われていたし、
病院の焼却炉は何度注意しても整髪剤の缶を捨てていく患者がいたらしい。
人質の身を案じつつ局外で現場を見て周る主人公は、
くだんの発言は予言ではなく、あくまでもただの予測だと察知していくが、
なんでこんな事をするのかその目的がわからなかった。
その質問に対してくだんは「祭がしたいから」とわけのわからない事を言う。病院を訪ねると、入院中の姪がいつもより明るい感じだった。
ラジオで予言を聞いて野次馬がいっぱいくるし、
病院中盛りあがってる感じで面白いのだという。
入院の長い姪は、最近では看護婦たちとの会話もマンネリ気味で、
新たなニュースで盛りあがれるのが喜ばしいのだった。
祭とはそういう意味なのか? と主人公は思う。やがてくだんは人が死ぬと予言する(その発言は放送されなかった)
そして、くだんは突然倒れた。くだん自身が死んだのだった。
被り物の下の顔があまりにも幼いので、くだんは逃げてしまったことにして
警察には引き届けず、彼の双子の兄だと名乗る、同じ顔の少年に渡した。ごく普通な兄に対して、弟は幼少期から病弱で学校もろくに行けなかった。
でも入院中にいつも本を読んでいたから語彙などは普通の子より多いくらい。
頭もよく、なによりいつも兄から学校であった事を全て聞き出していたから
数ヶ月ぶりに登校しても「この前あった事」をみんなと一緒に語り合え、
賢くて気さくなのでむしろクラス内では兄よりも人気者なぐらいだった。
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144 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/02/14(水) 18:35:40
- ある日、弟は久しぶりに登校した。
今のみんなの目下の話題は先日あった体育祭。
みんながどの種目に出て何位になったか、どんな活躍をしたか、
弟は全て兄から聞いていて、みんなの話題にすんなり溶け込んだ。
「そういえば」と誰かが口を開く。
体育祭の日は特に暑くて、汗がびしょびしょでシャツが気持ち悪かったと。
「あっという間に水筒のお茶がなくなって、水道水がものすごく美味しく感じた」
「じりじり焼かれて、太陽って痛いんだなって思った」
続けてそうしゃべっていくみんなの輪に、弟ははじめて置いていかれてしまった。
いつも室温の整えられた部屋ですごす弟には、
いくら知識を与えられてもその感覚だけは共有できなかったから。兄はそんな弟の思いを知りつつも、ちょうど自立したくなる時期で
弟の存在を煩わしいとも思うようになっていたので、内心気にかかりつつも放置していた。
その一件以来「もっと毎日学校に行きたい」と弟が親に向かって泣き叫んでいても、
「来週からは行けるから」と親がなだめているのを横目で見ているだけだった。
その頃から弟はおかしな事を言うようになった「夢にくだんが現れて僕をくだんにしてくれた」実は弟はもう余命短い身だったとわかる。来週になったら学校に行けるという親の発言は、
そう言えば元気付けられるからと思っての嘘だった。
なのに何故ラジオ局を占拠できるまでに体力が回復していたのかはわからない。
そして、予測できた事とはいえ、何故予言した直後にタイミングよく一連の事件が起こったかも。
ただわかることは弟がラジオ局を占拠して予言を流した理由。
そんな滅多にない「祭」が起きれば、弟はクラスのみんなとその話題について盛りあがれて、
体育祭の話題の時に感じた孤独感を払拭できるからだった。
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145 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/02/14(水) 18:37:29
- 主人公はくだんについて調べる「人面に牛の体を持つ架空の生き物 予言をし、数日しか生きない」
日常が戻ったラジオ局。以前と違うのは、事件で関心が集まってリスナーが増えた事。
それ以外は以前と大して変わらず以前と同じようにまったりとしている。主人公の姪が病院で「看護婦さんもうすぐ彼氏できるよー」と話しかける。
手元にはクレヨンとスケッチブックがあり、顔が人間で体が牛の生き物が書かれている。
それなあに?という質問に姪は「くだんの夢をみたの」と答えた。平和落ちでも弟の心境とかで十分後味が悪くなれた話だったのに、
その上妹までくだんになる=数日で死ぬ事になるのは……
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146 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/02/14(水) 20:02:21
- 連鎖する不気味さはあるけど、
弟も姪もそれで幸せっぽいから逆に「よかったなぁ」と思ってしまう。
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147 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/02/14(水) 20:36:45
- >>146
ttp://malon.my.land.to/kudankaranodengon.htm
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152 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/02/14(水) 23:47:09
- 後味悪いことは悪いが話は面白いね。
姪が楽しげに喋るシーンが、結末とは裏腹に明るいイメージ。
でも疎外感を抱えたまま死んだ弟は可哀相だな。