冷たい方程式(トム・ゴドウィン)

792 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/07/05(木) 01:10:22
古典の名作「冷たい方程式」とか、やりきれんよね。

813 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/07/05(木) 10:42:17
冷たい方程式 ってのはSF小説の一系統で
基本的には数日間飛行する事になっている宇宙船内に
密航者が入り込んでいて酸素は正規乗組員の飛行日数分しかない
このままでは全員死んでしまうというシチュエーションから話を進めていくもの
多数の作家が書いたものを纏めた短編集とかが出ている
SFに限らずこういうシチュの小説を冷たい方程式形式とか言ったりもする

823 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/07/05(木) 11:55:01
ついでに「冷たい方程式」自信はないがまとめてみる

主人公は緊急小型宇宙艇EDSのパイロット バートン
開拓途中の惑星ウォードンに熱病の血清を届けにゆく途中
ウォードンにはふたつのキャンプがあり 片方は熱病で全員やられ
もう片方は嵐の影響で救助に向かうことが出来ない
そこで惑星間連絡船からEDSが派遣された

EDSには 未開の開拓星に逃れようと 犯罪者がときどき密航を試みる
しかしEDSには「船」と「パイロット」と「積荷」を目的地まで運ぶ
ギリギリの燃料しか積まれないため 密航者を乗せるわけにはいかない
そのために特別の法律が制定された
空間条例第8条 項目L
「EDS船内で発見された密航者は 発見と同時に船外へ投棄すること」

バートンは EDS内に密航者を発見する
20歳になるかならないかの娘 マリリン
彼女は地球育ち 他の開拓済みの惑星にある大学に合格し 向かう途中
兄のいるウォードンに向かう船があると聞き
しばらく会ってない兄さんに会いたいと その一心で乗り込んでしまった
(兄のいるのは無事な方のキャンプ)
彼女は安全な地球で育ち 辺境の環境がどれだけ苛酷であるか
そこではどれだけ簡単に人の命が失われるかを知らない
自分が何をしでかしてしまったのか まったく分かっていない
「渡航費は雑用で払うわ」と無邪気に言う彼女


824 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/07/05(木) 11:56:10
バートンは彼女を助けたいとあらゆる可能性をさぐる
が 彼女を助ける方法はない
母船の連中も状況を聞き あらゆる手を尽くしてくれるがダメ
彼女を引き取る方法はない
母船は戻れない(スケジュールが乱れ 多くの星に回復不能の被害が出る)
代わりのEDSを打ち出せる船も近くにはいない
彼らに出来るのは 彼女がEDSにあとどのくらい留まれるのか を算出することだけ

そこでバートンは 彼女に全てを説明する
彼女が何をしてしまったのか
何故 死ななくてはならないのか
このままではバートンも彼女も死ぬ ウォードンで血清を待つ者たちも全員死ぬ
彼女が出て行けば 死ぬのは彼女だけで済む
これは人の力ではどうにも出来ないんだということ

彼女は結局「何故自分が死ななくてはならないか」を理解は出来ない
でも「何かとんでもない 取り返しのつかないことをしてしまったこと」だけは理解する
そしてバートン始め 周りの人が自分を助けようと必死になってくれたこと
誰も「彼女に死んで欲しい」と思ってる人なんていないこと も何とか理解する


825 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/07/05(木) 11:57:11
彼女はバートンにふたつの願い事をする
「家族に手紙を残したい」そして「ウォーオンの兄さんと無線で話したい」
バートンは自分の手帳を渡し マリリンは地球の両親と兄に当てて手紙を書く
みんなに感謝してること みんなを愛してること
自分のことは心配しないで 私は大丈夫 怖くないから
と 最後の一行がウソであることが一目瞭然な 震える文字で
バートンはそれを預かり 必ずご家族に渡すことを約束する

ウォードンのキャンプに連絡は取れたが マリリンの兄は朝から嵐の観測に出かけている
ヘリの無線機は故障中 使えない
キャンプの連中も事情を聞き 出来る限りのことをしてくれるが それも限られている
まもなくキャンプはウォードンの自転によってEDSの反対側に回ってしまう
そしたら無線も切れる と聞き 「それまで待つ それから出て行く」と言うマリリン

制限時間ギリギリでやっと兄が無線に出る
数言 別れの言葉を交わし 無線は切れる
マリリンは 自分の足でエアロックに向かい バートンは彼女を船外に投棄する

・・・・・・
これ読んで一ヶ月くらい あまりの衝撃に活字を一切受け付けなくなったよ 俺


826 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/07/05(木) 12:01:08
自業自得とはいえ、ちょっと残酷だわな。

つーか
もっと余裕のある設計しとけw


827 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/07/05(木) 12:08:43
>>826
それも無理なんだよ
EDSは小さいから核融合タービンは積めない
昔ながらの固形燃料エンジンを搭載してる
固形燃料はかさばるからスペースに限りのある母船に搭載できる量も限られる
他にまたEDSを打ち出さなくてはならない事態も予想できるため
燃料はギリギリしか積むことが出来ない

バートンが変わりに死ぬことも出来ない
彼女はEDSの操縦が出来ないから

状況を追い詰めるために 本当によく出来てるんだよ この話
逃げ場なし


830 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/07/05(木) 12:14:10
>>813 いや、まずはトム・ゴドウィンの冷たい方程式ありき。
名作だったから後に多くの作家が同じシチュを踏襲したまででしょう。

>>823 乙。
お兄さんとは少しだけ話せたんだったと思うけど。
あと、事態がなんとか飲み込めた時の少女の台詞は必須かも。
「私は死ぬような事はしていないわ・・死ぬような事はなんにも・・」

少女を宇宙空間に放出した後も、その台詞が主人公の耳に残る。


837 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/07/05(木) 13:14:34
冷たい方程式
後味云々つうよりきちんと説明がついてて美しいと思ってしまった

838 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/07/05(木) 13:29:29
>837
まさに方程式、だよな。
導き出せる答えは一つしかない、でもそれ故の葛藤。
確かに美を感じる。

 

冷たい方程式 (ハヤカワ文庫SF)
冷たい方程式 (ハヤカワ文庫SF)