火星探検(筒井康隆)
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52 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/07/06(金) 18:58:33
- 筒井康隆『火星探検』
主人公は火星探検隊の一員。シャトルの発射場に向かう電車の中で
少年時代の同級生や、近所のおじさんたちと再会する。
「あの腕白小僧が探検隊員だなんてねえ」
「ちょいと服を触らせとくれ」「ばあさん、服にばい菌がついちまうぜガハハ」
って感じで口々に褒めそやされ、激励されるが、
同級の栗原という男を見つけ、主人公はいやな予感に襲われる。
彼は絵のコンクールで主人公より上だったのを唯一の自慢にしているそうだ。
「日本は世論の関係で出発が遅れてしまった」という話が出たとき栗原が憎らしげに言う。
「今だって火星探検に反対してるやつは多いんだぜ」
「いくら技術が発展しようがこのあたりの家はウサギ小屋さ。
火星探検には莫大な予算がついてるがな」
まずいことになったと思う主人公。栗原の言葉で周囲の雰囲気は一変した。
「結局は国家の威信のためだものなあ」「そんな金があるなら、養老院でも立ててほしいねえ」
「祝賀会、テレビで見たわよ。タレントにもててたわね。おいしい料理付きで」
「わたしのこと、ばい菌のかたまりだなんて言ったね」
「俺の弁当なんかキムチと煮ぬき卵だけなんだ。ローンでこれがあと十三年も」
主人公の弁解は無視される。さらに栗原は「おい、こいつを駅に下ろすな」「終点まで、絶対に逃がすなよ」と絶叫。周囲も同調する。
上司に通信機で事情を説明する主人公。上司は国民感情の逆なでを恐れ、補充要員を使うことにする。
「君は次に行ってもらおう。自宅待機。」
主人公は冷静を装いつつ、ぐったりと座席に座り込む。電車を沈黙がおおった。
静けさに耐えかねて栗原がまたしても叫ぶ。
「こいつ、マスコミにしゃべるつもりだ」
「いやだあ。根掘り葉掘り聞きだされちゃうのお」
栗原、さらに絶叫。「やられちまうなら、さきに仕返ししてやれ」と乗客を扇動。
「そうだ」「たたんでやれ」「みんなで殴れば怖くない」
と主人公が袋叩きにされて終わり。下手な要約でだいぶ抜けたけど、旧知の人間が一転して主人公を責めまくる描写がきつい。
このほかにも後味の悪い部分が満載の短編なので、ぜひ。
『夜のコント・冬のコント』所収です。
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54 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/07/06(金) 20:12:22
- >>52
里帰りした男がボコられる話もあったよな。でも筒井の作品は「そういうもん」ってイメージができちゃって、後味悪いと思えなくなるんだよな。
初めて読んだ時は吐き気がしたが。