秘密 ―トップ・シークレット―/秘密2008(清水玲子)

704 名前:秘密2008 1/3 :2008/08/06(水) 23:38:31
秘密の最新刊(5巻)が相変わらず後味悪かった。

本編は2つの別々の事件が絡んでいるのだけれど、
両方のあらすじを書こうとすると複雑すぎて混乱するので、自分的に後味悪い方だけに絞って。

前提設定:近未来、死者の脳を取り出し、電気刺激を与えることで活性化し、
その脳の視覚記憶を再生・記録する技術(MRIスキャナー)ができ、
犯罪捜査に応用する試みが始まっている。
主人公達は、警視庁科学警察研究所法医第九研究室でMRI捜査に携わっている。

末期がんで死の床にある男が、病床に牧師を呼んで
「60年前に子供を誘拐して殺し、埋めた」と懺悔をした。もちろん、すでに時効である。
男は警察による取調べにも正直に応じ、男の告白した場所から死蝋化した死体が出てきた。
脳の腐敗が進行すると使えないMRIではあるが、腐敗とは異なる死蝋化した脳からの視覚記憶の再生に成功する。

60年前に行方不明になった子供の母親(すでに95歳の老女)は、
死蝋化した子供の脳の視覚記憶を自分の目で見ることを希望する。
「守秘義務を守ること」「いかなる映像を見ても、それについて訴訟・抗議行動を起こさないこと」等の
条項のある同意書にサインをして、看護婦が常時血圧を監視する状態で、子供の脳の視覚記憶の再生が始まる。


705 名前:秘密2008 2/3 :2008/08/06(水) 23:40:43
犯人に与えられたパンを食べる子供、その後眠ってしまった子供を
ロープで絞殺しようとする犯人、目が覚めて息絶えるまでの2分間抵抗する子供。
その映像を見ながら犯人が実の甥であること、就職を世話してやるほど
目をかけていたことを、着物姿の老女は座った目で口にする。
その様子に、老女に子供の視覚記憶を見せることを許可した研究室責任者は、
部下に「自殺の危険があるので、タイミングを見計らって老女の着物の『たもと』を調べろ」と命令をする。
抵抗する子供の手と、首を絞める犯人の形相とに、老女の血圧は上がり、
ここが限界と判断した責任者が映像を一時停止すると、老女が立ち上がって叫ぶ。
「待って、いま確かに犯人以外の顔が見えた!
 どういうこと、誰か他の人が子供を殺したの?!あれは誰?早く!」
その言葉に、一時停止していた映像を1コマ送る責任者。
モニターには犯人の顔ではなく、優しげな女性の顔が映し出される。

それは、子供が行方不明になった当時の母親の顔、老女の60年前の顔だった。

子供は、パンを食べた後についた眠りの中で、母親と父親との楽しい旅行の思い出を夢に見ていたのだ。
そして、息を引き取る直前、直前に夢見た優しい母親の幻影を見たのだ。


706 名前:秘密2008 3/3 :2008/08/06(水) 23:42:20
部下が、老女にたもとを調べさせて欲しいと声をかけようとすると、老女は言う。
「今度は犯人の脳を見せていただけるのかしら?」
死の床にあるとはいえ、まだ死んでいない人間の脳は見られないと
説明しようとする部下の声が、老女の表情に凍りつく。
たもとから出したナイフで自ら喉を突こうとする老女、ナイフを弾き飛ばし老女を保護しようとする部下。
転がったそのナイフには血がついていたのだが、それはすでに乾いていた。
老女は、子供の視覚記憶を見るために研究室に来る前に、犯人である甥の病室を
「生きている唯一の肉親」として訪ね、「相続の相談があるから」と
人払いをして犯人を殺害していたのだった。

「何故こんなおろかなことを」と問う責任者に、手錠をかけられた老女が言う。
夫は死んだ、甥(犯人)の母親である自分の実姉もとうに死んだ、自分は95歳。
「今の私に失うものが…まだ何かありますか?まだ、この手で守るべきものが」
しかし、そう言いながら老女は涙を流して泣き崩れた。

子供が夢見た優しい母親との優しい思い出、そして、老女の記憶にある
笑顔の子供との優しい思い出のシーンがセリフ無しで描かれ、END


710 名前:本当にあった怖い名無し 2008/08/07(木) 01:27:28
>>704
よくできた話や。

711 名前:本当にあった怖い名無し :2008/08/07(木) 01:34:58
なんとなく高嶋忠夫を思い出した。

高嶋夫妻はお手伝いを雇っていた。
まだ10代で働くお手伝いに、夫妻はとても優しく接していた。
やがて夫妻に待望の赤ちゃんが生まれる。
が、この手伝いが「子供のせいで私が可愛がってもらえなくなる」と思いこんで赤ん坊を殺害した。

これだけでも後味悪いが、事件後になぜか被害者夫妻をバッシングする人たちがいた。
家に電話かけてきて夫妻をなじった人もいるそうだ。
夫妻も息子(政宏、政伸)も事件についてコメントすることはなかったが、
40年経ってやっと口に出した。
で、この直後に「殺された子供をネタにするなんて…」と叩くレスをネットで何度か見た。
何で夫妻が非難されるんだ…

 

秘密―トップ・シークレット (5) (JETS COMICS (4535))
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