願望(星新一)

885 名前:本当にあった怖い名無し :2008/11/29(土) 18:34:24
星新一のショートショート。

ある男が散歩の帰り、気まぐれに神社に参る。
その夜、男の家に狐が現れる。あの神社の使いだという。
「あなたは参拝10万人目なんで、願いひとつ叶えてあげます」
「そうか。叶えて欲しい願いがあったのだ。
ただ、それが何だったか、突然なのでド忘れした……」
思わぬ幸運に驚き、願いを思い出そうとする男。
「金?権力?女?」
狐がいろいろ探りを入れるが、
「金はあるし、権力いらない、女は厄介事の種だ」
首を首を振る。
「私も暇じゃないし、今回は権利放棄する?」
という狐。男は頭を抱え、
「待ってくれ、思い出させてくれ。
こんな時でないと叶わない夢なんだ」
と、男の顔がぱっと明るくなる。
「そうだ、この通り私は物忘れがひどくて困っていたのだ」
男は嬉しそうに狐に言う。
「私が記憶力が欲しい。できるか?記憶力をくれ」
「ええ、できます……だが」


886 名前:本当にあった怖い名無し :2008/11/29(土) 18:35:37
狐はゆっくりと男の方を見た。
「だが断る」 
男の顔が強張る。
「何……だと?何故だ!」
「何故……?お前、今『何故』って言ったのか……?
 テメエはさっき、『思い出させてくれ』と言った。確かに言ったよなァァァ~~?
 オレの聞き違いじゃなかったよなァァァァァ~~~?!」
「……!」
「お前が『願いを思い出した』時ッ!既に『願いは叶えられている』ッ!」
「…………!」
「それがオレの能力!お前の『願いを思い出したいという願いは』叶えられているッ!」
男は茫然とした顔で、狐を見返した。
「じゃあ……おれの願いはもう……
 思い出したことで……終わり……?」
「Exactly!(その通りでございます)」

「記憶力の件は、頑張って20万人目になってくださいね」


887 名前:本当にあった怖い名無し :2008/11/29(土) 18:48:58
何故ジョジョになる
ものすごーく些細な願いをかなえて「かなえてやったぞw」と言われるパターンは
ありがちだけど後味悪い

 

宇宙のあいさつ (新潮文庫)
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