鶏頭樹(須藤真澄)
-
199 名前:1/2 :2009/01/18(日) 22:26:16
- 須藤真澄の「鶏頭樹(けいとうじゅ)」
主人公の女子高生・すぎなは、
校庭に生えている彼女が「鶏頭樹」と呼んでいる木と話ができる不思議な力を持っていた。
ある日、学校の鶏小屋に、目のふちに隈取のような模様のある、
巣作りをして棘のある卵を産むおかしな鶏が大量発生した。
生物部は新種の鶏が見つかったと大喜びし、卵を部室に持ち帰るが、
その棘で怪我をした部長が、その鶏に変化してしまった。
さらに職員室でも、試しに卵を食べてみようとある教師が卵を割った瞬間、強烈な光がその中から発せられ、
それを浴びた教師達もやはり鶏になってしまった。
事態に気がついたすぎな等他の生徒達は、鶏を小屋に閉じ込め、卵はプールに沈める。
が、ある生徒がうっかりミスで卵を落として割ってしまい、また被害者が。
すぎなの友人等、わずかな生徒を除いてほとんどが鶏になってしまい、
さらに何故か、鶏頭樹も巨大な鶏のような姿になってしまっていた。
すぎなが鶏頭樹に話しかけると、鶏頭樹は「伐ってくれ わたしを終わらせなくてはならない」と言う。
当然すぎなは拒むが、どうしてもと言われ、泣く泣くチェーンソーで鶏頭樹を切り倒した。増えすぎた鶏を体育館に閉じ込め、ひとまず騒動は落ち着いた。
が、もう鶏も卵も学校だけで手に負える状態ではない。
友人達は警察に行こうとするが、何故かすぎなは「鶏頭樹に水やらなきゃ」と動こうとしない。
鶏頭樹が「置いていかないで」と言っているような気がしたからだ。
とりあえず友人達は「明日警察呼んでくるからね」と一旦下校した。
-
200 名前:2/2 :2009/01/18(日) 22:27:33
- 次の日から、すぎなは鶏たちや鶏頭樹の世話をしながら、学校で寝泊りするようになる。
すぎなは心のどこかで信じていた。今ある光景がみんな夢で、目が覚めたら鶏になった人たちも
みんな人間に戻っていて、鶏頭樹がいつものように「明日も晴れだよ」と言ってくれるのではないかと。
しかし、友人達も、警察も、一向に来る気配がなかった。次の日も、その次の日も……
そうしてある日、突然鶏達が一声泣いたかと思うと、バタバタと死に始めた。
なんで鶏のままで死んじゃうのよ、と戸惑うすぎな。
「夢から覚めて 人間に戻るの!!」
しかし結局、鶏は皆死んでしまった。
こんなことになってるのにあたしはまだ目が覚めない……
絶望したすぎなはプールから卵を拾い上げ、割ってみるが、光は出てこなかった。
「どうして目が覚めないの…?」
その時、フェンス越しに鶏頭樹の切り株から新芽が出ているのが見えた。
大喜びでその側へ行き、友人達に知らせに行こうとするが……その時、鶏頭樹が何事かを彼女に語りかけた。
そして、校門の向こうから、何百という鶏が一斉に鳴いたかのような大きな鳴き声が響き渡った。
夢が終わり、現実の始まる時を告げる声だった。