ジョーを訪ねた男(手塚治虫)

845 名前:1/2 :2009/07/19(日) 21:39:46
手塚治虫短編集「空気の底」より
ジョーを訪ねた男

アメリカ南部出身の軍人ウィリー・オハラ大尉は、黒人に強い偏見と侮蔑の感情を持っている。
戦闘中に、部下の黒人であるジョー・ロビンスに
「黒人は白人のかわりに死ぬために戦争に来ているんだ」
「きさまはおれのイヌだ、主人のために前を行け」などと暴言を吐き、突撃させる。
その結果、ジョーは死亡。すぐ後ろにいたオハラ大尉も瀕死の状態になる。

心臓の止まったオハラ大尉は日本で心臓移植やその他の臓器移植を受け、なんとか一命をとりとめる。

回復したオハラ大尉だが、上司が見舞いに来た際に
「君の心臓はジョー・ロビンスのものを移植したのだ」という事実を聞かされてしまう。
自分の身体に黒人の心臓が移植されたと知り、「自分はもう白人ではない」とうろたえ絶望しかけるが、
気を取り直し、完全に回復した後日ジョー・ロビンスの故郷を訪ねる。

黒人の住むスラムのような場所で、ピストルで住人を脅しながらジョー・ロビンスの母親の居場所を探し、
自分にジョー・ロビンスの心臓が移植されたと話すオハラ大尉。

「あなたの身体の中に息子が生きているのですね。せめて音を聞かせてください」
とすがるジョーの母親から、『あなたの息子が上司に心臓を提供した』と知らせる手紙を奪い、焼き捨ててしまう。

これでもう自分の中に黒人の内臓が生きている証拠が無くなったと安堵するオハラ大尉だが、
その様子を見ていたほかの黒人たちの言葉に愕然とする。


846 名前:2/2 :2009/07/19(日) 21:41:07
「戦場や病院で使われている輸血用の血は自分ら黒人が売ったもの」
「既に多くの白人の身体に黒人の血液が輸血され、流れている」
「いまにアメリカ中の白人に黒人の血が混じるだろう」

絶望したオハラ大尉は何も言わずにその場を立ち去ろうとする。
が、ジョーの家を出る直前に気を取り直し、ジョーの母親の元へ戻っていく。
「ここにジョーがいる。遠慮せずにさわってくれ」
と胸を差し出し、息子の心臓の感触を確かめ泣いている母親に「元気でな」と優しい声をかけて出て行く。

ジョー・ロビンスの家の外には、オハラ大尉に道を聞かれピストルをつきつけられた黒人の若者たちが集まっていた。
オハラ大尉が家を出た瞬間、「白人が思い上がりやがって」と一斉に銃の引き金を引く。
若者たちに撃たれ、蜂の巣になったオハラ大尉に向かってジョーの母親が「ジョー!」と叫ぶシーンで終わり。

 

空気の底 (手塚治虫漫画全集 (264))
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