まんが日本昔ばなし/「吉作落とし」

446 名前:本当にあった怖い名無し :2009/08/27(木) 20:00:33
「吉作落とし」を思い出した。

吉作は働き者のたくましい若者で、危険なイワタケ採りを仕事にしていた。
イワタケは崖の面に生える珍味の地衣類で、命綱一本で下りていく。
その日、吉作はイワタケがたくさん生えた場所を見つけ、夢中になって取っていった。
ひとしきり仕事を終えると、すぐ下方に人ひとりが休憩できる程度の岩棚を見つけた。
縄から手を離しそこに降りて休んだ吉作は、帰ろうとして、
今まで自分の体重で垂れ下がっていた縄が軽くなってやや上方に上がり
手を伸ばしてもギリギリ届かない位置になっていることに気付いた。
吉作は助けを求めて必死に叫んだ。何日も何日も過ぎ、体力を消耗していった。
山を通りかかり吉作の声を聞いた者もあったが、叫び続けてすっかり喉が潰れ
山間にこだます声を聞いた人々は、天狗や化け物の声かと恐れた。
やがて、ある夕方、意識も朦朧としてきた吉作は、ふと
小さな石のかけらが足場から落ち、上から見ると、ゆっくりとまるで木の葉のように
ふわりと降りて行くのを眺めて、自分もこんな風にそっと麓へ舞い降りれるのではないかと思った。
吉作はついに崖から身を躍らせた。 谷間の岩は、林の紅葉よりも赤く染まって美しく見えた。
生まれて初めて見る美しさだった。その美しさの中に吉作は消えていった。