ホーム » 小説 » 小説/さ行 » 下の世界(筒井康隆)

132 名前:1/3 :2010/02/23(火) 10:43:22
筒井康隆の短編小説

その世界では「上の人間」と「下の人間」とにはっきり分けられていた。
「上の人間」はエリート的な頭脳労働に特化されていて、
身体は細くてあまり動き回らずに優雅に何ひとつ不自由な暮らしをしている。
「下の人間」は肉体労働に特化されていて学問等は全くせずに
食料もまともに与えられず底辺の暮らしを強いられている。
「上の人間」は地上で、「下の人間」は地下で暮らしていた。

「下の人間」にも「上の人間」になれるチャンスは年に一回だけある。
年に一回開催されるスポーツの祭典で優勝すれば上の世界に行けるのだ。

主人公は上の人間になる事を夢見て肉体の鍛錬に励んでいた。
主人公にはある友人がいた。下の人間には珍しい本を沢山読みながら
隠居する老人だった。彼は知識を驚く程沢山持っていたので主人公は
ときどき彼のもとを訪れ知識を得ていた。

祭典のときが来た。男も女も入り交じって必死に戦う祭典。
格闘技も競技に含まれる。
そこでは女も女ではなかった。執念に歪んだ顔で男につかみかかる姿は
人間ですらなかった。
主人公はその醜さにつくづく下の世界は嫌だと思い、
必死に勝ち上がり、翌日の決勝を待つ身になった。
主人公の優勝は確実と思われた。


133 名前:2/3 :2010/02/23(火) 10:45:21
その夜、主人公は地下と地上の境に行ってみた。
地上から美しい女が地下を覗きこんでいた。美しく小さい顔、
細い身体、薄い生地で作られた美しい服、その全てに思わず主人公は
夢中になってしまう。主人公は思わず身を延ばし、女の手を握ってしまう。

女は鈴をころがすような美しい声でささやいた。

しかし、実際は女は激痛に悲鳴を上げていたのだ。


134 名前:3/3 :2010/02/23(火) 10:46:10
下の人間が軽く握ったつもりでも、
華奢な上の世界の人間にとっては
堪え難い痛みをもたらす程強い力に感じられたのだ。

悲鳴をあげる女は集まってきた上の世界の人間に助けられ
主人公は競技への参加権を永久に剥奪された。

主人公は泣きながら老人のところへ行く。
主人公は老人に全ての事情を説明した。女の特徴を聞いて驚く老人。
「それはこの女じゃないか?」と老人は自分が描いた絵を
主人公に渡す。まさにその女が描かれていた。
「何故?」と驚く主人公に老人は語る。

老人も昔祭典に参加して上の世界へ行こうとしていたのだ。
そして優勝しそうになったときに彼女に会い、
同じように思わず手を握ってしまい失格になってしまったのだ。

「でも彼女は若かったです。同じ人物だとしたら
年齢があいません!」と反論する主人公。

老人によれば、上の世界の人間は整形手術が発達してるので
驚く程長いあいだ若さを保てるのだという。
美しい顔も細い身体も整形のたまものだし、
美しい声は人工声帯が発するものだった。彼女はただの老婆だったのだ。

絶望し泣きわめく主人公。
しかし泣き止んだ後主人公は言った。

「教えてください。私は何の本から読み始めればいいのですか?」


135 名前:本当にあった怖い名無し :2010/02/23(火) 11:55:43
あまり動き回らなかったらぶくぶく醜く太ってるやつばっかりになると思うけどな>上の世界。
そこも改造手術なんだろうか。
そこが後味悪いポイントなんだろうか。

主人公が腐った世界の方に行かなくて良かった。


136 名前:本当にあった怖い名無し :2010/02/23(火) 12:23:18
むしろ彼女は主人公を救ったんだと思うけど。

137 名前:本当にあった怖い名無し :2010/02/23(火) 13:34:16
その女はなんでそんな事を繰り返してるんだ?

138 名前:本当にあった怖い名無し :2010/02/23(火) 17:48:20
>>137
整形技術が発達して、誰の生活習慣も似たようなものになって
同じような顔が増えてるんじゃないかと思った

139 名前:本当にあった怖い名無し :2010/02/23(火) 18:37:12
「上の世界」の連中は、本当は下の世界の住民を受け入れるつもりなんかこれっぽっちもなく
わざと事件を起こして資格を剥奪させるためのハニトラかもと思ってしまった>女

 

佇むひと―リリカル短篇集 (角川文庫)
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