レミングの行方(大橋薫)
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386 名前:1/3 :2010/07/11(日) 21:54:49
- 少女漫画で大橋薫の『レミングの行方』。舞台は近未来のアメリカ。
本当はもっと個性的な登場人物も多いんだが、長くなり過ぎるので はしょって強引に辻褄を合わせた。プロローグは、精神病院のような場所へ主人公の青年が神妙な面持ちで見舞うところから。
背を向けた女性の部屋へ通されるが、「彼女はもう何も分かりませんよ」と案内した医師に言われる。場面は変わって、凄惨な一家殺害事件現場。
犯人や動機は一切不明で、両親を殺された唯一の生き残りである10歳くらいの美少女は
ある政府公認の高級児童養護施設へ引き取られた。その施設へ、事件の捜査に当たっていた主人公の刑事が聞きこみに来る。
迷宮入りしそうな事件について主人公はあれこれ少女に質問を浴びせるが、
女性職員が割って入り、「無駄です、この子はもう事件のことは忘れました!」と止める。
その養護施設では、トラウマを抱えたワケありの子を集め、電磁操作の機械で忌わしい過去を消して
新たに創作した記憶を脳へ植え付け、第2の人生を歩ませる機密の試験的施設だった。
思い出を全て消してそんな偽りで繕うのか、と主人公は女性職員に詰め寄る。
しかし女性職員は逆に、自分も昔ショッキングな経緯で親を亡くして精神を病み 辛いリハビリに長年要した事、
自分と同じ苦しみを他の子供には味わわせたくなくて研究員になった事などを語り、反駁した。
施設の子供達は確かに、他の孤児院の鬱屈とした雰囲気とは違って皆 明るく笑顔だった。あまり良い出会いではなかったが、これがきっかけで
何度か養護施設に通う主人公と女性職員は徐々に親しくなる。
子供想いで献身的な女性に、主人公は好感を抱いた。
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387 名前:2/3 :2010/07/11(日) 21:57:18
- やがて、美少女の両親の正体は軍事研究の博士夫妻で、家を襲ったのはテロリストと見られ
唯一の生き証人である少女を抹殺するために施設も襲撃を受ける可能性があることが判った。施設の所長は、自分の実験への名誉欲もあって、証言のために再び少女の記憶を蘇らせることを決めた。
「子供の脳はフロッピーディスクじゃない」と女性職員が反対するも、所長権限で記憶再生は実行される。記憶を取り戻した少女は、自分が博士夫妻から
人体実験で脳にあらゆる兵器の知識を仕込まれた「歩く殺人鬼」だった事、
両親が自分をテロリストに引渡して命乞いするつもりだと知り 彼らを惨殺した事を思い出した。
もはや自分が「汚れない子供」には戻れぬ事を悟り、
天使のような愛らしいな外見と悪魔のような殺人能力を利用して、
施設に侵入してくるテロリストはもとより
自分をいじめる年上の子供達や気に食わない職員、自分の正体に気付きかけた警察官など
か弱い子供を装いながら邪魔者を次々に抹殺していく。施設周辺で事件が続発するため、調べに当たっていた主人公は
養護施設へ連れて来られた子は、里親に引き取られる以外にも、多数の死者が闇に消えていたことを知る。
脳操作の影響で、作りものの記憶と現実とのギャップから発狂し、やがて死に至るのだ。テロリストとの戦いが終わって荒廃した施設で、主人公は少女を追い詰める。
そして、彼女の両親は既にテロリストから死の宣告を受けており、せめて娘の命だけでも救うために
「研究の集大成」として大切にもてなされるよう、少女に軍事知識を移植していた事実を告げた。
真相を知った少女は、じゃあ自分がした事は何だったんだ と
両親や他の大勢の人々を殺した罪にさいなまれ、自ら頭を撃ち抜いて自殺する。
施設は閉鎖され、生き残った子供達は散り散りに他の施設や里親に引き取られ、所長は児童実験で告発された。
こうして、一連の事件は終焉を迎えた。
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388 名前:3/3 :2010/07/11(日) 21:59:16
- …かに見えたが、さらにもう一波乱のどんでん返し。
事件が片付いて交際を申し込む主人公を、女性職員は断り、主人公を眠らせた隙に
自らの脳を媒体にして 施設跡地の中枢に残っていたマザーコンピューターを破壊し、重症を負った。
じつは彼女こそがこの施設の実験体第1号で、親が死んだというのは植え付けられた偽の記憶であり、
本当は所長の実娘だった。だが、実験が成功だと信じていた所長に反し、成長するにつれて彼女は
実際の記憶を徐々に取り戻していた。過去を忘れたままのふりをして施設員として働いていたが、
装置が子供の幸福のためなどではなく 本当は国の軍事目的の洗脳実験機関で
死んでも狂っても誰からも文句の出ない身寄りのない子をモルモットにしていただけ
という真の目的も知って、自分と似た境遇の美少女を所長が迷わず次なる段階の実験へ供したのを機に、
施設の破壊と 地獄の発狂前に子供達に「死」という救いを与えるため
美少女の記憶再生プログラムに手を加えて殺人衝動が発動するように仕向けた。
殺人鬼の少女を操っていた黒幕は、施設職員の女性だったのだ。
だが、死を救いと考えていた彼女とは裏腹に、生き残った子供達は
うすうす蘇り来るトラウマの記憶を抱えながらも、自らの意志で克服して強く生きようと模索しつつあった。エピローグは、再び冒頭の場面に戻る。
一命は取りとめたものの、脳への衝撃と精神的ショックでボロボロになった女性職員は
父親から記憶操作を受ける以前の幼児期に退行していた。
仕事ばかりで放ったらかしの自分より「優しかった亡父」という記憶を与えてやる方が幸せだと考え
良かれと思って実験を施したが、まさかこんなに娘を追い詰めていたとは気付かなかった、と
話を聞かされた拘置所内の所長は泣き崩れた。
退行した女性職員はもう主人公のことも覚えておらず、幼児のように振舞っている。
そんな彼女を、それでもこの先も見守って支えていこうと主人公は心に決めた。―― ん~…、こうして はしょって文章にすると、
なんか実際の作品の印象とは違う気もする…。
文庫本3巻程度のコミックなので、興味のある人は実物をどうぞ。
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389 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう :2010/07/11(日) 22:06:44
- 退行しっぱなしだとアレだが、成長していけるんならいい気もする
生まれなおした感じで
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390 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう :2010/07/11(日) 23:22:06
- これ読んだ話だ…後味悪いのかどうかは読者の解釈しだいだと思う。
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391 名前:本当にあった怖い名無し :2010/07/12(月) 02:07:27
- 近未来が舞台なのにフロッピーディスクってところが
執筆年代の技術レベルが知れてむしろ懐しい味を出してるな