チキタ★GUGU/第11話(TONO)

631 名前:1/4 :2010/07/22(木) 23:33:45
皆、まとめるのうまいな。自分下手すぎてなんかすげー長いんだけど。
TONO「チキタグーグー」の熊のシャルボンヌの話が後味悪いというか
何度よんでも切なくて泣けてくる。

チキタグーグーのおおまかな話は人食いの妖ラーと妖しい屋
(拝み屋とか妖怪退治屋とかそんなんぜんぶいっしょくたみたいなの)の
人間チキタと彼らを巡る悲喜こもごも。
チキタは世にも珍しい人食いにとってめちゃくちゃまずい人間で、
その涙一粒の苦さで胃を壊して死んだ妖もいる。
ラーはそんなチキタを「まずい人間は100年飼育したら非常に美味になる」
という噂を信じて「飼育」してる。
ただ、人間は弱くてなかなか100年ももたない。特に弱いのがその精神で
人間は一人じゃ生きられないから、擬似でも家族みたいなものを与えろと
いわれて、自分がそれやって上手く育てようとかしてるうちに
情が移ってしまい遂には他の人間まで食べられなくなっていく……という。

チキタは他の妖にも詳しいラーも傍にいるしで、妖しい屋関係で
段々頭角を現していく。その関係で、人を襲う熊の妖・シャルボンヌを
退治してくれといわれるのだが、シャルボンヌは見た目はカラフルな
水玉模様のついている熊で人間を襲うと言っても、衣服を奪い取って
それを食べるだけ、という妖だった。誰も傷つけたりもせず無害な妖で
チキタはむしろそのシュールさに脱力してしまう。
その場はチキタの服を食べさせるぞ!(シャルボンヌにとってもまずい)と
脅して追い払うが、その日チキタは何かを感じたようにシャルボンヌの夢を見た。


632 名前:2/4 :2010/07/22(木) 23:34:25
元々シャルボンヌはサーカスのアイドル熊だった。
かわいらしい姿でラッパを吹くとそれだけで皆が魅了された。
だが流行りというのはあっという間に変わってしまうのが世の常で
サーカスのアイドルは火の輪くぐりの虎へと変わってしまった。

するとシャルボンヌの人気が落ちてきたのをみたサーカスの園長は
シャルボンヌにペンキで水玉を描くことを団員に命じる。
見た目が変わればまたちょっと人気も出るだろうという浅はかな考えだった。
だがペンキの毒でみるみるうちに熊の体調は悪くなり、団員は
子熊の頃から育ててきたシャルボンヌがこんな風になるのをみたくない
お願いだからペンキを落とさせてくれと懇願する。
だが、体調も悪くなってますます芸もできなくなった熊なんか
ただの厄介者だ。ただ飯くらいを置いておく余裕なんかうちにはない!と
サーカスの移動時にゴミと一緒にシャルボンヌは山へ捨てられてしまった。

死にかけたシャルボンヌは懸命にラッパを吹こうとする。
そんな熊に誰かがいった。
「かわいそうに。小さな頃から人間に育てられて、だからこんなになっても
 人間が憎いのか恋しいのかわからないのか」と。
そして「わかるまでさまよってごらん」と魔法をかけ熊を妖へと変えた。
それがチキタの見た夢だった。

ある日、シャルボンヌはまたチキタの元に現れる。
今度は前よりもずっと人語がなめらかになっており、驚くチキタ。
シャルボンヌはチキタとラーに「何か精のつくものをよこせ」と言い出した。
なんでもシャルボンヌは今、偶然知り合ったおじいさんとおばあさんと
暮らしているのだという。
人から逃げながらもこっそり人家に忍び込んでその家のカーテンを
食べていたところ、酔っ払ったその家のじいさんばあさんに見つかって
その場の勢いで意気投合して一緒に住むことにしたのだと。


633 名前:3/4 :2010/07/22(木) 23:37:36
次の日酔いのさめたジジババは昨日の勢いを後悔したのだが
シャルボンヌは愛らしく、老身の二人に代わって薪割りをしたり
家事を手伝ったりで、今はすっかり仲良くなったのだとも。

妖と一緒に暮らすなんて…と心配した爺婆の息子にも
「あれは気の良い妖だよ」と笑いながらかばうジジババ。
だが冬になり寒さが老身にこたえるのか最近二人はめっきり
元気がなくなり、寝付くようになってしまったと言うシャルボンヌ。
だから年寄りに精のつくものを食べさせようと思ったのだ。

どうにも気になってチキタはシャルボンヌについていくことにした。
チキタはずっと気になっていたのだ。
シャルボンヌの体に描かれた水玉と、そのペンキの毒を。

じいさんばあさんの家に到着すると、そこには泣きはらした顔の
息子がいた。息子はシャルボンヌを見つけると、呼んできたチキタの家とは
別の妖しい屋に「あいつだ! あいつが父さんと母さんを殺した妖だ!」と
矢を射掛けさせる。

チキタは慌ててかばうが、シャルボンヌは二人が死んだことを信じない。
こないだまで元気だったのに!と。そんな熊に息子は叫ぶ。
「お前のペンキの毒のせいで二人は死んだんだ! この人殺し!」と。
妖しい屋はシャルボンヌを殺そうとするが、チキタは「ペンキの毒は
シャルボンヌのせいではないんだ」とラーの力を使ってその場から退散する。

矢がささったまま、おじいさんおばあさんに食べさせようしていた物を
持ってシャルボンヌはとぼとぼと歩いていた。
チキタはかける言葉を選びながら、心をこめてなぐさめるが
シャルボンヌはぽつりと言う。


634 名前:4/4 :2010/07/22(木) 23:38:30
「二人は、おれのせいで死んだんだなぁ……」
妖のラーはこの雰囲気に我慢しきれずぶち切れて
「そうだよお前のせいだよ!」とぶちまけてしまう。
「だからもう人間に関わろうとか思わないで隠れて布でも喰ってろ!」と。

シャルボンヌはずっとおじいさんたちの事を考えていた。
3人で囲んだ食卓の楽しさや、息子の前で「気の良い奴だよ」と
かばってくれたときの誇らしさを。
二人はもう死んだんだ、もうどこにもいないんだ……と思い知る熊。
「きっとこの先も、ずっとこうなんだ……」
ラッパを吹いても、かわいがってくれた人たちももういない。
「それなら……もう…いいや……」
そう言ってシャルボンヌの体はどんどん薄くなり、遂には消えてしまった。

驚くチキタにラーは言った。
「あいつ、もうとうに体なんかなかったんだ……」
ずっと昔に死んで、妖となってよみがえったシャルボンヌはこうして消えた。
そこには一枚の古い布切れだけが残っていた。
それは、妖となったシャルボンヌが全てを忘れてよみがえった後に、
ふと心ひかれる匂いを感じて口にしたものだった。
それが、彼を捨てていった人間のものだとは知らずに。

結局シャルボンヌは人間が憎かったのか恋しかったのか、それは
シャルボンヌにしか分からない、というモノローグが入って
このエピソードは終。

この後も奇形児を生んだために村八分になった母子が
毒饅頭を食べ、死にかけた子供が妖になって出てきたり
輪姦された少女とか、虐待の末に「痛み」が分からない少女や
大好きな妖を死なせたくないために、餌にするため人間をたくさん
殺した男や、色々欝エピソード満載のシリーズです。

 

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