ホーム » 小説 » 小説/さ行 » さなぎ(筒井康隆)

256 名前:本当にあった怖い名無し :2010/08/16(月) 12:59:35
『さなぎ 1/2』

若者たちが集っている。その中の一人がやけに怯えていた。
先日父親に口答えをしてしまったのだという。
この世界では、反抗的な若者は「さなぎセンター」に収容されてしまうのだ。
センターでは肉体は擬似冬眠状態にされ、3年の期間、絶えず夢を見続けさせられる。
その夢の内容は全て、反抗の失敗、革命の失敗、あるいは革命が成功することの虚しさがテーマである。
そうしたのちにセンターを出た若者は、「社会を構成するに相応しい人格」になっているのだという。

主人公は若者の一人である。彼は怯えている友人を励ます。たかが一度の口論じゃないかと。
しかしその直後、集いの場に警察がやってきて、泣き喚く友人を連れ去ってしまう。
呆然とする主人公。そんな彼をグループの女が誘い出す。一緒にさなぎセンターへ行ってみないか。

二人は連れ立ってセンターへ向かった。
1階では、先ほど連行されていったばかりの友人が、早くもさなぎとなってカプセルに入っている。
茶褐色のさなぎ状態になった友人は、生前の卑屈さばかりが強調された醜悪な見た目となっていた。
そして2階には、二人のそれぞれの恋人が収容されていた。
いや、違うか。彼は思う。元恋人と言うべきなのだろう、と。
彼には、さなぎ期間を終えた自分の恋人が、以前のように自分を愛してくれるとは思えないのだ。
同じように感じたのだろうか、隣に立つ女が彼の腕を取る。「どこかのホテルへ行かない?」
寂しさを紛らわしたいのだろう。そう察した彼だったが、どうにも気分が乗らず、その場で女と別れた。


257 名前:本当にあった怖い名無し :2010/08/16(月) 13:01:39
『さなぎ 2/2』

肩を落として帰宅した彼を待っていたのは父親だった。酒を飲んでいる。
「こんな時間までどこへ行っていた」
まだ8時だけど、と返した彼だったが、父親の顔に怒気が篭ったのを見て即座に謝る。
だが父親の怒りは収まらない。彼がどのように答えようと、揚げ足を取って彼をなじる。
しかし機嫌を損ねるとさなぎセンターに追い遣られてしまう。それだけは嫌だった。あんな風にはなりたくない。
彼は表面上は媚び諂う。ついには土下座し、涙を流し、父親に取りすがる。
それでも父親の勢いは止まらない。「お前は俺が嫌いなのだろう」と語尾を震わせながら喚く。
父親はわかっていたのだ。虚勢を張って怒鳴るばかりの自分が息子に恨まれているのだということを。
そして、やがて成長した息子が自分へ復讐してくるのを防ぐには、なんとか口実を見つけて
息子をさなぎセンター送りにし、今のうちに反抗心を削いでおく必要があるのだということを。
そう考えていた父親であるから、彼がいくら謝ろうと納得するはずがないのであった。

父親の興奮は収まらない。とうとう彼は暴力を振るわれる。
殴る、蹴るでは済まない。椅子を振り下ろされた彼は頭から血を流し、それでも耐える。
いつか復讐してやるぞ。それだけを支えに。
そして5年が経った。虐待は続いていた。10年が経った。虐待は続いていた。
20年が経ち、父親は死んだ。そして彼は思った。
自分だけが親から虐待されていたのは不公平だ。俺も息子を虐めてやる。
なに、反抗されたらさなぎセンター送りにすればいいだけだ。


268 名前:本当にあった怖い名無し :2010/08/16(月) 22:18:50
>>254
「ウィークエンド・シャッフル」内の短編だな。
父親がかなり気持ち悪かった覚えがある。

 

ウィークエンド シャッフル (講談社文庫)
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くさり―ホラー短篇集 (角川文庫)
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