不思議な少年/第4話「鉄雄」(山下和美)

273 名前:本当にあった怖い名無し :2010/08/17(火) 06:32:26
不老不死で金髪蒼眼の少年が主人公の狂言回しみたいな話。うろ覚え

時代は終戦直後の日本。焼け野原となった町を主人公が歩いていると、どこからか歌声が聞こえてきた
主人公が目を閉じて歌声に耳を傾けていると、突如その歌声が途切れる
主人公が歌声のしていたほうへ行くと、そこには殴られて倒れている少年と、ヒステリックに怒っている女が居た
女はバーか何かの歌手らしく、少年の歌声や容姿を醜いと罵り、様々ないちゃもんをつけて罵倒していた
主人公は手を触れずにその女の舌を切り落す。突如として舌が切れた女は、取巻きの男に連れられてその場を去る
主人公は少年に「大丈夫かい?」と手を差し伸べる
顔を上げた少年の顔は醜かったが、主人公は顔色一つ変えずに少年と話しをする
少年の身の上話などを話した後(たしか両親が原爆で亡くなった的な話)、
主人公は少年に「いつか君を迎えに来る」と言ってその場を去る

その後少年は、北海道の親戚の家に引き取られる。その家は牧場で、少年と同い年の近い娘さんがいた
少年は学校で友達が出来ず、歌っていると「うるさい」「気持ち悪い」と言われゴミを投げつけられたりした
少年を引き取った親戚の叔父さんは、少年のことを歌ってばかりで男らしくないと馬鹿にして罵るようになるが、
娘さんだけは少年の歌声を好きだと言い、少年の味方になってくれた
中学生くらいになって、少年はレコードを買い、少女と共に外国の色々な曲を聴き、少年は歌った
高校生になると、娘さんには容姿の良いボーイフレンドができる。
それから娘さんは少年の相手をほとんどしなくなり、よく二人で聞いていたレコードを
少年の部屋から勝手に持ち出し、ボーイフレンドと二人で聞いていた
少年は自分の部屋にうずくまり、遠くの部屋から聞こえてくるレコードの音楽や
娘さん達の楽しそうな笑い声を聞きながら一人で歌うようになる
すぐ隣の部屋にいた叔父さんにうるさいと怒鳴られ、小声で歌うようになる
少年は心の中で「まあ、いいか」と割り切る。その頃からよく少年の口に血が滲むようになる(多分被爆)


274 名前:本当にあった怖い名無し :2010/08/17(火) 06:34:41
少年は青年になり、牧場の娘さんにはボーイフレンドとの間に可愛らしい女の子が生まれる
青年の歌声を聞いてくれる人はいなくなり、青年は動物の世話の合間に馬や牛に歌を聞かせるようになる
ある日、娘さんの娘の女の子が青年に歌を歌ってくれるように頼んでくる。
母親から青年の歌の上手さを聞いたのだと言う
青年は女の子の前で歌い始めるのだが、その直後に女の子の父親が女の子を呼びたてる。
女の子は父親の方へ走って言ってしまい、その場には一匹の犬だけが残った。
青年は心の中で「まあ、いいか」と割り切り、犬に向かって歌っい続けた

時が経ち、青年の顔色はますます悪くなっている
いつしか青年は牧場を出て行くことになり、ある晴れた日に犬を連れて歩き出す
周りをひまわりに囲まれた道をしばらく歩いていると、正面から人がやってくる
青年が子供の頃に一度会ったことのある主人公だった。主人公は青年に「約束通り君を迎えに来た」と言った
「どうだい?これまで君の魂や歌声を本当に評価した人間なんていなかっただろう?みんな下らない人間なのさ
 僕と一緒においで、君に永遠の命をあげるよ。君にはその資格がある。僕が君を世界に認めさせてあげるよ」
主人公がそう言うと、青年はいつのまにか外国の大きなコンサートホールにいた


275 名前:本当にあった怖い名無し :2010/08/17(火) 06:40:54
指揮者や演奏者達や観客は青年の突然現れた青年に困惑しているが、
そこが思いっきり歌っても良い場所だと悟った青年は、嬉々として今まで溜め込んだ分を吐き出すかのように歌い出す
演奏者や指揮者は一瞬で青年の歌声に圧倒され、とっさに演奏を合わせてしまう
青年の歌声を聞きながら、主人公は「やはり君の声は神に愛されている」と賞賛する
青年が歌い終わると、演奏者達や観客の拍手や賛美の声が青年を包んだ。誰もが青年の歌声に感動していた
だが、青年は足元に現れた一匹の老いぼれた犬に意識を奪われる
それを見て主人公の眉間に皺が寄る
(この辺マジ忘れた)
「こんなところにおったのか」
青年は自分が世界から絶賛されていることなど興味ない様子で犬に話しかける
主人公が問いかけると、青年は
「別に世界から認められなくても、僕が歌を聞かせてあげたい相手に聞かせてあげて、
 その相手が喜んでくれればそれでもう満足」
的なことを言う(マジ忘れた)
青年は地面に座り込み、口から血を滲ませながら息を引き取る
主人公は涙を流しながらその場を後にする
END

主人公が珍しくやたら個人に肩入れしてたから印象に残っていた。主人公が涙を見せたのもこれが唯一な気がする


276 名前:本当にあった怖い名無し :2010/08/17(火) 11:22:02
>>273
山下和美さんの「不思議な少年」かな?
いろいろな時代にまたがって少年が人の営みを見ていく感じだから、後味悪い話もいくつかあったし

 

不思議な少年(2) (モーニングKC)
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