玉野五十鈴の誉れ(米澤穂信)

986 名前:1/2 :2010/09/07(火) 21:51:39
米沢穂信「玉野五十鈴の誉れ」

主人公は名家の一人娘。
女系一族で祖母が女主として君臨し、母も婿養子を取って家を守っていた。
タイトルの玉野五十鈴は主人公と同い年の側仕え。
身寄りはないが頭の良い娘で主人公にとってはしもべにして無二の友人でもあった。
跡継ぎを外に出すことも、家を治めるのに特に必要ない学を身に着けるのも嫌がる祖母を説得し
遠くの大学に進学した際にも身の回りの世話と堕落防止の見張りを兼ねて五十鈴がついていった。
実家には料理人がいたのでそれまで気付かなかったが、何事もそつなくこなすと思われた五十鈴は
料理だけは下手だった。
特にご飯がまともに炊けたことがなく主人公は「あなたにも弱点があるのね。」と笑いながらも
「はじめちょろちょろなかぱっぱ」から教えてやった。
食事以外は順調だった大学生活だが突然打ち切られてしまう。実家に呼び戻されたのだった。

実家では祖母が苦々しい顔をして主人公を待ち構えていた。
父の兄弟が強盗で捕まったのだと言う。
格式ある我が家に犯罪者の親類がいるなどとは言語道断であるので
母を父と離縁させ新しい婿を取る、
主人公も犯罪者と血が繋がっているので本来なら放り出したいが特別に家に置いてやる。
ただ大学へ通わせるような贅沢はもはや許さない、そう告げられた。
母は精一杯祖母に抗議したが逆らい切れず新しい婿と結婚した。


987 名前:2/2 :2010/09/07(火) 21:53:06
五十鈴は主人公の父が追い出されると掌を返したように冷たくなってしまった。
「私があなたと仲良くしていたのはあの時旦那様であった人から頼まれたからです。
その人がいなくなった以上、側にいる理由がありません」と。
五十鈴は側仕えの任を解かれ下働きとなった。

数年後、主人公に異父弟が生まれた。
その頃屋敷内に軟禁状態だった主人公の元に五十鈴が現れ祖母から言いつけられたと小瓶を差し出した。
毒だった。新しい跡継ぎが出来たので主人公は用済みになったのだ。
主人公はそれを拒否した。五十鈴は黙って小瓶を下げた。
その日以降、質素だった食事はより一層粗末になった。
栄養失調から意識が朦朧とし、人生を諦めかけたその時、父と母が助けに来てくれた。
祖母に逆らえなかったことを泣きながら詫びていた。
五十鈴もいてすっかり衰弱していた主人公に献身的に世話をした。

まだ1~2歳だった異父弟がかくれんぼ気分で焼却炉に潜んだ。
そうとは知らない使用人の誰かが火をつけてしまった。
姿が見えないと皆が探しまわった頃には焼死体になっていた。
祖母はショックで急死し新たな主となった母は2代目婿養子を追い出して父と共に救出に来たということだった。
祖母の急死に主人公はかつて五十鈴が差し出した小瓶の行方が気になった。
異父弟のことも隠れていたって火をつけたら泣き叫ぶだろうに死体になるまで誰も気付かないなんてあるだろうか。
横で世話をしてくれる五十鈴が、かつて主人公の教えたフレーズを鼻歌のように口ずさむ。
「はじめちょろちょろ なかぱっぱ 赤子泣いても蓋取るな」


988 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/07(火) 21:59:37
>>986
面白かった
個人的に気になるのは五十鈴と主人公の父との関係だな…
異父弟と祖母が死ねばまた主人公の父が戻ってこれると思って異父弟を殺したのだろうか

989 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/07(火) 22:12:15
五十鈴は主人公に仕えていたいだけ。
「旦那様が~」発言は周囲を欺くためにまず味方から。
ずっと主人公に肩入れしてるとバレたら屋敷から追い出される可能性があったんだと思う。
少なくとも異父弟や祖母には近づけない。
主人公父は人柄が良かったかし両親揃ってたら主人公が喜ぶから
五十鈴も嬉しかろうけどまあ副産物みたいなもん。

992 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/07(火) 22:25:32
何、その五十鈴って奴はキチガイだったってこと?
罪もない子供焼き殺す以外の方法なかったの?
ババア打ち殺すとかの方がまだまし

993 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/07(火) 22:37:28
>>992
そこなんだよね。後味悪いのは。
主人公は跡継ぎの座には執着して無かったから何も罪の無い赤子は殺さんでもと。
五十鈴っつか作者が「赤子泣いても」をオチに使いたいから殺さざるをえなかっただけという。

996 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/07(火) 23:47:19
おもろかった
最後の鼻唄がすげえゾクッゾクッするねぇ
焼き殺すの怖え

998 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/08(水) 00:12:24
焼き殺したんじゃなくて毒盛ってから焼却炉に、、って流れでしょ
面白かった、読ませる文章だねぇ

1000 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/08(水) 00:15:20
>>998
毒は祖母へ。

 

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)
儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)
Story Seller (新潮文庫)
Story Seller (新潮文庫)