ホーム » スレ別 » 後味の悪い話 その116 » 岸辺露伴は動かない エピソード16:懺悔室(荒木飛呂彦)

452 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/23(木) 02:39:32
アラーキーの短編

ある作家が海外へ取材の旅行に行った
教会に訪れた漫画家は、神父のいない間に教会内で写真を撮りまくった
作家は懺悔室(罪悪感に耐えられない人が神父に罪を告白する小さな部屋。
小さな窓の付いた壁で二部屋に区切られ、
片方に神父、もう片方に告白者が入る)を見付け、興味本意で中に入ってしまう
「自分には犯した罪など無い」と考えている作家(性格が悪い)が何を告白しようかと考えていると、
向いの部屋に誰かが入ってくる。向かいに入った男は、自分の罪を告白し始めた
そこで作家は自分が間違えて神父側の部屋に入ってしまっていたことに気が付いた

男の話はこうだった
当時の男は若くて貧しく、下働きの仕事をしていた。
とても忙しい仕事で、ガールフレンドを作る暇も無かった
ある日、男が残業をしていると、一人の浮浪者がフラフラとやって来た
浮浪者は東洋人で、出稼ぎに外国に来たはいいが、仕事が見付からなくて脱落したような雰囲気だった
浮浪者は食べ物を恵んで欲しいと言い、男の弁当をチラチラと目で追った
働いてもいないのに食べ物を強請る浮浪者に対し、残業までしている男は怒りを感じた
男は、荷を運ぶ仕事を浮浪者が全て変わりにやることを条件に、弁当を恵んでやると言った
浮浪者は5日も何も食べてないと言い、必ず働くから何か食べさせてほしいと懇願してきたが、
全て嘘だと思った男はそれを拒否し、あえて重い荷物を無理矢理浮浪者に持たせて働かせた
浮浪者がフラフラと重い荷を運ぶのを見ながら、男はテーブルに付いて、
浮浪者に恵むと約束していた自分の弁当を食べ始めた
しかし、浮浪者は倒れ、重い荷物の下敷きになってしまう
男は怒り、怠けるなと浮浪者に怒鳴りつけた
すると、テーブルの下から浮浪者が這いずって現れ、男の足を掴んでこう言った
「この報いは必ず償わせる。お前が『幸せの絶頂の時』おまえを迎えに来る」
驚いた男が椅子ごと倒れると、足を掴んでいた浮浪者の姿は消えた
浮浪者の体は荷物の下敷きになったままで、死んでいた。浮浪者が5日も何も食べてないという話は本当だった


453 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/23(木) 02:43:21
つづき
それからの男は不気味なほどに良い事が続いた
遠い親戚から遺産が入り、くじが当選し、買った土地が何十倍もの値で売れ、
男が考えた食品が会社で売り出されて世界中で大ヒットした
それまでガールフレンドに縁が無かったのに、元モデルの美女と結婚した。
使い切れないほどの収入が入った。別荘を買い、召し使いや運転手を大勢雇った
男はこの幸運の連続にいつも不安を抱いていた。あの死んだ浮浪者のことがいつも頭の片隅にあった
そして子供が生まれた。母親に似た美少女だった
ある日、男は娘と一緒に公園へ行った。男の召し使いも一緒だった
娘はポップコーンを上に投げて口でキャッチするという遊びに興じていた
そんな娘の姿を見ながら、男は
「こんな愛くるしい娘が側にいるなんて、『なんて私は幸せなんだろう』」と思ってしまった

その瞬間、娘は男の首を掴み、人間とは思えない恐ろしい顔でこう言った
「約束どおり、お前を迎えに戻ってきた」
娘はあの浮浪者だった。召し使いは娘に殴り付けられて倒れた
男が富と名声と家族を得られたのは浮浪者が影から手伝っていたからだった
その幸福の絶頂から突き落とすことで、浮浪者が味わった絶望を男にも味わわせることが目的だった
逆恨みだと主張する男に対し、浮浪者は最後のチャンスをやると言った
男が運試しをし、運が良ければ「逆恨み=許す」、運が悪ければ「逆恨みではない=殺す」というものだった。
それは神と運命が判断してくれるのだと浮浪者は言う
男は藁にも縋る想いで運試しに乗り、三回の運試しをさせられる。
男は最三回目の最後の運試しまで行き、あと後一歩で成功というところで運悪く失敗してしまう
浮浪者は言った「審判は『逆恨みではない』と下った」
男は娘の手で首を切断された。
つづく


455 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/23(木) 02:44:42
作家は話を聞き終えると沈黙していた。向かいの部屋の男は言った
「私のこと『生きてるじゃないか』そう思ってますね、神父様。
 私が『懺悔』に参ったのはそこのところなんです
 あの浮浪者は、私を望むものなら何でも手に入るほどの金持ちにしてくれたんです。
 私の言いなりになる召し使いが簡単に見つけられるほどの」

すると、懺悔室の外から声がした
「旦那様、出て来て下さい。いくら懺悔に来てもこの私の恨みは消えません。出て来て下さい、旦那様」
作家が恐る恐る懺悔室の外を覗くと、そこには切断された自分の生首を抱えた身体が床を這いずっていた
抱えられた生首は言った
「この私を金でつって整形手術させて、騙して、
 あんな恐ろしい目に遭わせてくださった怨みは絶対に許さない。死んでも死にきれない」

懺悔室から出てきた男の顔は召し使いの顔で、床を這いずる召し使いの顔は男(旦那様)の顔だった
召し使いは言った「この恨みは、旦那様の娘が『幸せの絶頂』の時、必ずあんたを迎えに来ます」
すると、召し使いの後ろから浮浪者が這いずって出て来て言った
「迎えにくるのは駄目だ。今度は騙されないように四六時中見張っていないといけない」
男は歩いて教会を出て行き、二人の死者が這いずりながらのそ後を追っていった
作家はただそれを見届け続けた
「怨霊に取り憑かれても諦めず、孤独に人生を前向きに生きる男。彼は悪人だと思うが、そこのところは尊敬できる。
 そう思うのは僕だけかもしれないが」
という作家のモノローグで終わり


456 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/23(木) 04:12:16
乙です
>男は歩いて教会を出て行き、二人の死者が這いずりながらのそ後を追っていった
想像したらなんか可愛くて笑ってしまうw

457 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/23(木) 09:29:22
>>452
主人公の作家は漫画家なのか

460 名前:本当にあった怖い名無し :2010/09/23(木) 14:26:44
>>452
アラーキーは露伴が大好きだな

 

死刑執行中脱獄進行中 (集英社文庫)
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