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894 名前:本当にあった怖い名無し :2011/03/09(水) 17:55:20.78
石原はるひこの短編集「海猫の城」の中の一編

主人公は初老のサラリーマン。単調な日々に倦んでいる。
彼には長年連れ添う妻がいる。子供はいない。鶏をペットにしている。
何十年もの間、同じ時間の同じ満員電車に揺られる毎日。
「まるでブロイラーのようじゃないか」
ある日、彼は衝動的に、そんな日常にささやかな反抗をする。
いつもと反対方向の電車に乗って、海に。
解放感から鞄を投げ捨て、服も脱ぎ捨て、全裸で浜を駆け回る。
通報があったのか警察官がやってきて叱られる。
同じ頃、ペットの鶏は檻から抜け出し、
戸外に羽ばたこうとするが、車にはねられる。
その夜、初老のサラリーマンが自宅に帰ると、妻が晩御飯の仕度をしている。
「今日はかしわご飯にしました」
鶏を締めたのか! 憤るが妻から事情を聞くと、
「あいつも外で生きられなかったんだな」
諦観のため息を吐く。
夫婦には珍しく深酒をする二人。
初老のサラリーマンは突如、鶏の真似をする。
こーこっここっこーっこっこっこっこーっ
酔っぱらって、ふざけているんだわ、と笑う妻。夫を寝かしつける。
次の日の朝、妻は夫を起こそうと夫の寝室に呼びかける。
そこにいたのは一羽の鶏だった。

昔読んだ時はグレゴールザムザの如く変身したのだと思ったけど、
今は狂気に陥ったことの暗喩かとも思う。


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