ホーム » 小説 » 小説/わ行 » 我ら地獄を見たり(西村京太郎)

309 名前:1/3 :2011/07/19(火) 20:24:30.29
西村京太郎の短編「我ら地獄を見たり」
うろ覚えな部分が多いので間違ってたらすまん

主人公はある大きなマンションで妻と暮らしている青年
そのマンション群は山を切り開いて建てられたもので、周囲は豊かな自然に囲まれた静かで住み心地が非常にいい
マンションには同じサラリーマン(以下B)、子供が誕生したばかりのC夫婦、
老後をのんびりと満喫しているD夫婦など、様々な人々がいた。

ある日突然大地震が発生し、住民たちの何人かはマンションの崩壊に巻き込まれて命を落としてしまう。
なんとか九死に一生を得た主人公と他の住民たちは助けが来るのを待つことにした。

しかし土砂崩れで道も寸断されてしまい、自力で助けを呼ぶことはほぼ不可能。
「これからどうしよう」という妻を
「大丈夫、これだけの大災害だ。絶対に助けは来る。それまでみんなで力を合わせて頑張ろう」
と励ます主人公。住民たちは協力し合って食料を調達し、助け合いながら救助を待つことに。
しかし、三日、五日、一週間と時間が過ぎても一向に救助は訪れなかった。
次第に彼らの中の希望が焦りへと変化していく、
情報収集はラジオのみだが、そのラジオから流れるニュースも主人公たちが期待したものとはほど遠いものだった。
「マグニチュード○○の大地震が関東地方を襲い、犠牲者は万単位に・・・」
「政府はこの地震を南関東大地震と命名・・・」
「日本全国だけでなく各国から次々と義援金が送られ・・・」
「アメリカ軍を中心とする国際救助部隊が結成され、各地に救助を・・・」
主人公はニュースを聞きながら舌打ちする。
「義援金なんてどうでもい、救助部隊がなんだっていうんだ。
 全然おれたちのところに助けはこないじゃないか。政府はなにやってるんだよ!」


312 名前:2/3 :2011/07/19(火) 20:47:48.57
主人公は口調もだんだん荒っぽくなり、次第につまらないことで妻と口喧嘩するようになる。
それと同じく、他の住民たちの間でも諍いが起こるようになった。
彼らの中はもう諦めと不安、絶望がほとんどを占めつつある状態に。

ついに、人々はわずかな食料をめぐって互いに傷つけあうようになった。
他人を傷つけなければ、犠牲にしなければ自分が死ぬ。力の弱い老人や女性や子供も犠牲になった。
それとほぼ同時に、体力の限界から力尽きて死亡するものも増えてきた。
主人公たちはその「奪い合い」には参加せずに見ているだけだったが、
やられていく「被害者」のほうを見て「自分たちもあんまふうになるならいっそ・・・」
と思うようになった。主人公と妻の体力も精神もほぼ限界に近かった。

川に水を汲みに来た主人公。しかし数日前まで水を汲んでいた川の水は、もう飲めたものではなかった。
その周辺には多数の遺体と血飛沫、血まみれの凶器が散乱していたからだ。
流石に川の水が血で真っ赤に染まる、という状態にはなっていなかったが、
ぷかぷかと川に浮いている遺体が主人公の目に入った。
「あれは、隣人のEさん・・・」
主人公と同じサラリーマンの男性だった。先日、彼の妻と子供は他の住民に襲われて殺害されていた。
「おれはあんなふうになりたくない、なってたまるか」と言う主人公。
ふと川に写った自分の顔に気づいた。髪が乱れ、髭が伸び放題の自分の顔。
そして普段の自分とは違い、目に光が無かった。その顔は冷たい鬼のようだった。

そのときに妻がそばにかけ寄ってくる。「どうした」と聞く主人公。
「あまりにもおそいから心配で。Dさんみたいなことになってるかもしれないって・・・」という妻。
「Dさん夫婦に何かあったのか?」
「Dさん、隠れて隠していた缶詰を食べようとして、襲われたの。二人とももう・・・」
主人公はため息をつく。まさか温厚で心優しいあの二人がそんなことになるとは・・・
「それで、あなたもまさか同じように・・・」
「シッ!」
思わず主人公は妻の口をふさぐ。誰かが近くに来た。二人は急いでがれきの陰に隠れる。


315 名前:3/3 :2011/07/19(火) 21:23:53.39
それはBと何人かの住民だった。彼らの顔はみな冷酷な鬼そのものだった。
普段の穏やかで紳士的な顔つきとは全く違うBの顔を見た主人公は悟った。
「あいつらはもう人間じゃない。俺も同じようになりつつあるな」

マンションの近くに戻った主人公と妻は、食料を探すもののもう残っていない状態だった。
このときの主人公は、自分よりも妻のほうが気がかりだった。妻はもう限界に近い状態である。
無理もない。最後に何か口にしたのがいつか覚えていないほどだ。
なにか、なにかないか。そんな主人公の耳に悲鳴が飛び込んできた。
悲鳴の方向を見ると、悲鳴の主であるC夫人とBがいた。
BはC夫人からミルクを奪っていた。
「返してほしい、子供が死んでしまう」と懇願するC夫人。
しかしBは「お前の旦那もガキももうくたばってんだよ」とC夫人を足蹴にする。
C夫人は狂ったように喚きながら、横になってぴくりとも動かない夫のCにすがって泣き始めた。
そして、これまたぴくりとも動かないわが子を抱き、ふらふらと川のほうに歩いて行った。


316 名前:4/3 :2011/07/19(火) 21:25:16.03
オーバーしてもうた・・・

主人公の精神状態はもう切れかけていた。気づいたら、主人公はBの手からミルクを奪っていた。
「妻を助ける。他人はどうでもいい。やられる前にいっそ・・・」
主人公は隙を見て奪ったミルクを持って走った。そのあとを鬼の形相で追いかけるBとその仲間。
隠れ場所になんとかたどり着き、半分ほどミルクを飲んだあと、妻にミルクを渡す主人公。
「残りはお前が飲め」と妻に言う主人公。しかし妻は硬直したまま動かなかった。
「どうした、早く飲めよ!」自然に怒鳴るような声になる。
妻の目にはもう夫の姿は見えていなかった。
「いいから飲め!!早く!!!さっさとしろ!あいつらが来る」
怒鳴り声を妻に浴びせる主人公。
妻の目に映るのは夫ではなく、Bたちと同じ顔の「鬼」であった。
なんとかミルクを飲んだ妻だったが、そこへBたちがやってくる。
「この野郎、全部のんじまいやがった!」「殺せ!」「死ね!」
急いで逃げる主人公と妻、しかし足がもつれ転んでしまう主人公。
追いついたBたちは容赦なく主人公に襲いかかる。
何か硬いもので殴られ、意識が飛ぶ感覚に見舞われる主人公。
「俺は死ぬのか」と思った主人公だったが、ふいにぴたりと攻撃がやんだ。
なんだ・・・と思っている主人公の意識がしっかりしていくうちに、バリバリという爆音が耳に入ってきた。

自衛隊の大型ヘリだった。主人公も、妻も。Bも、その仲間も、他の住民たちも呆然とそれを見上げている。
ヘリが着陸し、中から自衛官が降りてきた。
自衛官は周囲を見回しながら、「ここにいるのは、あなたたちですか?」と質問した。
「ええ、生存者はこれだけです。他の者は、皆地震で亡くなりました」と落ち着いた口調で答えるB。
その顔は、普段のサラリーマンの顔に戻っていた。

読んでてどうしようもなくもやもやした気持ちになった。
やっぱ人間って極限状態だとこうなるんだろうなとぞっとした。


317 名前:本当にあった怖い名無し :2011/07/19(火) 21:57:50.42
ぐわーーーーー超モヤモヤ!!!!

「蠅の王」とちょっと似てるね アレも結構読後がヤな感じだった


319 名前:本当にあった怖い名無し :2011/07/19(火) 22:55:29.18
面白かった!
恐いのは徒党を組んで勝手に掟を作り出しちゃうB達みたいな奴らだな
日本人だと特に、集団だと歯止めがきかなくなるしね

321 名前:本当にあった怖い名無し :2011/07/19(火) 23:24:53.98
Bの変わり身の早さが怖い…何事もなかったようにただの被災者として生きていくのかな?
でも災害での死亡と他者による死亡なら遺体にも違いがあるよね

323 名前:本当にあった怖い名無し :2011/07/19(火) 23:42:17.14
お肉食べればよかったのにと思わなくもない

 

ナイター殺人事件 (光文社文庫)
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