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173 名前:本当にあった怖い名無し :2011/08/08(月) 21:56:49.21
即身仏つながりで。

ある僧が即身仏となることを決意し、地面深く穴を掘って生き埋めになった。
その時僧の年齢は六十一歳。それ以来五十五年間、塚からは念仏と鉦の音が聞こえ続けた。
埋められた塚の印に松の木を植えたが、それが大木となり苔むしても、一向に念仏が止む気配がない。
ある時台風でその松の木が根こそぎ倒れ、人々は好奇心から塚を掘り起こしてみた。
すると中には白髪白髯をのばし、炭の欠片のようにやせ細った僧が鉦を鳴らし、念仏をつぶやいていた。
庄屋が「あなたは仏になるため入定したはず。なぜこれほど長い間成仏できずにいるのですか?」と尋ねると
僧が答えて言うには、
「私は諸国を巡って修行を重ね、いよいよ仏の国に赴こうと入定しました。
 その際、私からの回向を受けようと隣の国からも人々が集まり、私の前にひしめき合っていましたが
 その中にいた十八、九の美しい女がつと進み出て、私の衣にすがり涙をこぼしたのです。
 私はこの女に念を残してしまい、その念が成仏を妨げているのでしょう」と。
庄屋が当時から生き残っている老人に尋ねてみると、その女は美人で聞こえた某であり、今も存命であるとわかった。
庄屋はその女を僧の所に連れ来たり、「あなたが念を残したと言う女です。まだ愛着がありますか?」と訊いた。
女は乱れた白髪に目はただれくぼみ、歯は残らず抜けて腰が曲がった有様で、よたよたと僧の前に出た。
僧はつくづくと老婆を眺めたが、ふと朝日に融ける霜のように皮膚や肉は消え失せ、わずかな白骨と変わり果てた。

色情の執念はおそろしいという話。


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