煌如星シリーズ(藤田あつ子)

475 名前:1/2 :2012/05/19(土) 11:57:50.65
藤田あつ子は後味悪いというか救われない話の宝庫

皇如星シリーズは清時代の検事(今でいう警視庁総監?)
が主人公の推理モノなんだが科学捜査出来ないから
状況証拠で捜査するのが特徴。

助手というか弟的存在の祥って男の子がいるんだが、
そいつが如星に会うための旅の途中で、1人の女性に会う。
女性は役人である夫の栄転で都まで家財一式旅していたが、
旅の一行とはぐれてしまったらしく、
ボロボロの身なりで懸命に夫を探していた。
しかし夫人は艱難辛苦を共にした伴侶がやっと出世したことを
嬉しそうに話し、たった一度買って貰った安いお香を大事そうに見せた。

道中を進むと程なく祥は廃屋で休んでいたその夫と出会う。
夫にはぐれた妻の事を話すと、夫は妻をわざとはぐれるように
意図的に置いて来たのだ、と言う。
「出世し都にはそぐわない女だから、捨てるつもりでいたのだ。
ここは以前自分が住んでいた家だが、
自分は、役人になった時も付き合っていた女を振った。
女は泣いてすがり、死んでやるなどと言ったが、
女の涙なんかにほだされるような私では無い。
自分でもその時の自分を褒めてやりたいよ。」
男が自慢気に武勇伝の様に話しているその時、
祥の目には男に恨めしそうに悲しそうに泣く女の幽霊が
とりすがる姿が見えていた。
恐怖で祥はその場で倒れてしまう。


476 名前:2/2 :2012/05/19(土) 12:04:24.81
翌々日、如星は絞殺された女の報告を受け、現場に向かう。
するとそこには何故か第一発見者として祥がいた。
死んだ女はあの日はぐれていた妻であり、状況証拠は犯人が夫であると示していた。
死ぬ直前に夫に会った形跡があり、夫には邪魔になった妻を殺す動機もある。
如星が夫に追求すると、夫は
「確かに一行に追いついた妻に会い、三行半を突きつけた。
しかし、殺してなどいない!私は無実だ!」
と泣いてすがった。当時の殺人は死刑である。
厳しい言葉で夫の非情を叱責し一蹴した如星だが、実は真実を理解した上で夫を逮捕した。

如星は祥を呼び出す。
「お前の気持ちも分かるが、このままだとあの男は死刑になるだろう。
罪も無い人間に罰を与えることはどんな人間だとしてもやってはいけない。」
真相は、第一発見者である祥が偽装工作して自殺を他殺に見せかけたのだった。
祥は黙って妻の遺書を如星に渡す。
遺書にはこう書かれていた。
「私ははじめ、夫が冗談を言っているのだと思いました。
けれど、夫が本気で言っているのがわかると、
私には夫が別人に見えたのです。
何年も連れ添い、愛し合ってきた男が、
まるで初めて見る、言葉の通じない、
知らない男に見えたのです。。。」
祥は言う。
「あいつ、廃屋で以前おんなじように女を捨てた話をしてた。
俺にはその女の幽霊がとりすがって、泣いてるのが見えた。
でもあいつには全然見えていなかった。
自分のせいで死んだ女が見えていなかったんだ。
俺は幽霊が怖かったんじゃない、あの男が、
人の心がない、あいつが怖かったんだ。。」


477 名前:本当にあった怖い名無し :2012/05/19(土) 12:06:08.57
最初にも書きましたが、藤田あつ子はこういう、なんとも哀しい後味の話が多くて好きです。
ホモくさい&耽美な所もありますが、推理ものってより人間ドラマの要素が強くて泣けます。

479 名前:本当にあった怖い名無し :2012/05/19(土) 13:18:15.91
自殺するより男見る目養えばいいものを…

女に感情移入して読めば悲しいんだろうが、
私には女がアホすぎてイラッとくるな。


480 名前:本当にあった怖い名無し :2012/05/19(土) 14:17:12.87
まさか助手はお咎めなしじゃあるまいな