天女木蘭(藤田あつ子)
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561 名前:1/2 :2012/05/22(火) 10:33:44.78
- 煌如星シリーズ第二弾
ドキュンというより腐耽美なのですが
(如星は美男ですが怪力美人妻がいる)とある大金持ちの老婆がいた。
老婆はいつも苦虫を噛み潰した様な顔をしている。
何故なら、親戚が皆老婆の資産目当てで金をタカリにくるのだ。
彼女には本当は孫が居たが、昔誘拐され行方不明になっていた。
ある時、身なりの汚ない青年がやって来て、
自分はあの時誘拐された孫だ、と名乗り出た。
貧しい家庭だかったが、両親が死ぬ時、
「お前は実は私達が金持ちの家から誘拐した子供だった。」
と聞かされたという。
証拠に誘拐時履いていた綺麗な刺繍のある子供用の靴をみせる。
老婆は泣いて喜び、青年と暮らし始める。困ったのは今までたかっていた親戚連中である。
今までは貸してくれていた金をもう貸してくれない。
それどころか、貸した金を返せ、孫の為にだけ金を使いたい、と言い始める。
青年は何も欲しいとは言わなかったが、
老婆は今まで孫にしてやりたくとも出来なかった事がしたい、と青年に言った。
青年は老婆の側で甲斐甲斐しく世話をし、語らい、
老婆は今まで見せた事のない幸せそうな微笑みを青年に向けていた。
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562 名前:2/2 :2012/05/22(火) 10:34:17.51
- 一週間ほどたって、老婆は何者かに殺される。
如星たちは現場に駆けつけ、事件を調べる。
なんと犯人は青年であった。
青年は本当は老婆の孫ではなかったのだ。青年が老婆に
「庭にある金木犀の香りがとても良い匂いだ」
と言うと老婆の形相が変わった。
老婆の孫は赤ん坊の時の大病で嗅覚を失っていた筈だった。
「貴方も私の金を目当てに近寄ったのか!
しかも私の一番大事な思い出である、孫を騙るなんて!!」
掴みかかってきた老婆と揉み合ううち、
青年は老婆を突き飛ばし頭を打った老婆は死んでしまった。「私の家は酷い家でした。
食べる物もなく、いつも暴力をふるわれていた。
両親は子供を誘拐したが殺してしまった。
けれど、その時残ったこの靴は、愛されている子供の象徴の様だった。
自分が初めて見た、唯一の美しい物だった。
ここではない、別の世界が有るのだという希望が持てたんです。
だから親に殴られてもどうしても手放せなかった。
お金が目当てだったんじゃない。
あの子供が貰っていた愛情が欲しかった。
本当に殺す気なんてなかった、、、」事故として青年は極刑は免れたのだが、投獄中、自殺をした。
如星はその報告を聞き、崩れ落ちて膝をつき哀しむ。
「彼はこんなことの為に生きてきたはずではない、、こんな事の為に辛い幼少期を過ごしてきたわけではない筈だ、、」
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563 名前:本当にあった怖い名無し :2012/05/22(火) 10:37:07.45
- 金木犀の話さえなければ、老婆と二人、
仲良く幸せに暮らしていけただけに哀しすぎる。
孫の成りすましを許せなかった老婆の心情も分かるだけに、
なんとも言えないお話でした。