ホーム » 小説 » 小説/か行 » 幻色江戸ごよみ/第二話「紅の玉」(宮部みゆき)

130 名前:本当にあった怖い名無し :2012/06/08(金) 22:55:30.09
宮部みゆきの『紅の玉』という短編時代小説が後味わるい。

佐吉は腕のいい飾り職人(かんざしとかを作る職人)だが、
結婚した年に施行された『ぜいたく禁止令』のため、仕事を失っていた。
しかも、恋女房は心臓を悪くしてしまい、ほとんど寝たきりになってしまう。
お金さえあれば、恋女房に薬も買ってやれる。
だが、ぜいたく禁止令が出ているので、装身具であるかんざしを新しく作ろうと思う客なんていない。

腕がなまらないように、売るあてもないかんざし作りをする佐吉のもとに、あるとき、1人の老武士が訪れる。
「この高価な珊瑚の玉を使って、かんざしを作ってもらいたい」
このご時世、ぜいたく品は売ったほうも買ったほうも罰せられる。
最初、いわゆる「おとり捜査」で、わざと高価なかんざしを作らせては職人をひっくくるつもりかと警戒する佐吉。
だが、聞けば嫁入りする娘に持たせるものだという。
『ぜいたく禁止令』のため派手な嫁入りは出来ないが、ご政道に逆らってでも、
せめて1つくらい立派なものを持たせてやろうと思う老人の心意気(と破格の報酬)に打たれ、
佐吉はかんざしつくりを引き受けた。


131 名前:本当にあった怖い名無し :2012/06/08(金) 22:56:05.17
久しぶりの仕事に佐吉は熱中した。
出来上がったかんざしは自分でも会心の作で、佐吉はこの作品に自分の名を彫りたいと考える。
老人にきいてみると、見事な出来映えに満足した老人はそれを許してくれた。

「どんなものにも曲げられぬ、おのれの筋というのはあるものだ。
このご時世に、堂々と名前を刻んで残しておこうと言うおまえの心ばえは、町人ながら見上げたものだ」

そう褒め称ええて、老人は報酬にさらに5両、上乗せして払ってくれた。


132 名前:本当にあった怖い名無し :2012/06/08(金) 22:56:58.69
2日後。
佐吉はあだ討ちがあったことを知る。
近隣の噂話をきいていると、あだ討ちを行ったのは二十歳そこそこの娘で、
『髪にまっさらの、見事な珊瑚玉のついた銀のかんざしをさしていた』。
自分には縁遠い世界の話だと、話半分に聞いていた佐吉はぎょっとする。
新品の、珊瑚玉のついた銀のかんざしなど、この世に2つとあるわけがない。
そのかんざしは、佐吉が作ったものだ。佐吉の名前が彫られたものだ。
あの老人が言っていた、嫁入りの話は嘘だったのだ。娘は嫁入りではなく、あだ討ちをおこなったのだ。
佐吉は老人を呪う。
(あんたはあのかんざしを、あだ討ちの場にさしていくことを知っていた。
知っていたなら、俺が名前を彫りつけたとき、やめたほうがいいと言ってくれてもよかったはずだ)

結局、高価なかんざしを作った佐吉はお上にひっくくられる。
そのあいだ、心臓の悪い恋女房に何かがあったら、その仇はいったい誰がとってくれるんだろう?
というところでEND。

 

幻色江戸ごよみ (新潮文庫)
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