ホーム » 小説 » 小説/か行 » 蟹甲癬(筒井康隆)

81 名前:1/2 :2012/07/09(月) 10:42:58.10
筒井康隆「蟹甲癬」グロ注意。

地球の植民惑星、クレール星で奇病が発生した。
老人の頬に、クレール星固有の生物、クレール蟹の甲羅そっくりの疥癬ができる病気である。
角質化した患部は取り外しができるまでに進行し、そこで停滞する。命に別状はない。
今や男女を問わず、幼児以外の住民皆が感染あるいは発症している。

クレール蟹は植民初期に貴重な食料として狩り尽くされ、今や絶滅危惧種として保護されている。

地球からの貨物船は感染を恐れて途絶えた。
物資を積んだ無人宇宙船を送る、との連絡を最後に通信も途絶えた。

「蟹甲癬」の患部の裏側には、白いペースト状の物質が付着していた。
連絡船が途絶えたことで配給のクロレラで食いつなぐしかない患者は、それをこっそり食い出す。
それはクレール蟹の味噌のように旨かった。

老人たちは「味噌」を孫に食わせるようになる。
もちろん親は止めるが、幼児は
「ほっぺたが落ちるぐらいにおいしい」おじいちゃんのお味噌が食べたい、と泣きわめく。
「蟹味噌」のことは公然の秘密になる。


82 名前:2/2 :2012/07/09(月) 10:44:12.85
「蟹甲癬」患者が天寿を全うし、解剖で真相が明らかになる。
(蟹甲癬で死んだわけではない)
患部にはクレール星固有の連鎖球菌が見つかった。
患者の脳は連鎖球菌に食い荒らされてスカスカだった。
「味噌」は脳を食い荒らした菌の死骸と老廃物からできていた、とわかる。

鉱山の現場監督は部下の名前を忘れた。
酒場の主人はシェーカーの振り方を忘れた。
菌は脳の一番発達した部分を消化するらしい。

若い主人公(元役人)が公園のベンチでぼんやりしていると、幼女がおずおずと尋ねる。
「ねえおじさん、お味噌ある?」
ああそうか、おじさんのおみそがほしかったんだねえ。
でもねえ、たべたのが今朝だったかついさっきだったか、おじさんおもいだせないんだよ。
どうだい、おいしいかい?
「うん、おいしい!」

外した甲羅を舐める幼女をぼんやり眺めながら、主人公は思う。

こういう感じのいい女の子をなんというんだっけ?
そうそう、「かわいい」っていうんだった。
このこがおおきくなるまでに、あいつが海いっぱいになってくれたらなあ。
…あいつって、いったいなんだっけ。

 

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