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136 名前:本当にあった怖い名無し :2012/07/11(水) 15:14:16.74
昔読んだ時代小説。(すまん作者名と題名は忘れた。)

汚物の据えた臭いが漂っているような
最下層の者達が住んでいる吹き溜まり長屋に
五歳の娘と母親が身を寄せあって暮らしていた。

母親の生家は三代前までは裕福な呉服問屋だったのが
身上を潰してしまい、それでも働き者の大工の夫が生きていた頃は
幸せに暮らしていたが、去年その夫が現場の事故で寝たきりとなり
その後死亡した時には、僅かな蓄えも底をつき母親の内職で
食うや食わずの生活だったが、寒い季節に単の着物一枚で過ごす
娘を不憫に思った母親は曾祖父からの 柳行李の中に
汚く古びた布地の端切れがあったのを思いだし
自分の布団の綿を抜いて、それで娘に半纏を作ってやる。

それは如何にもみすぼらしかったが、娘は大喜びでそれを着て
外に遊びに出たもののそのまま戻らず、やがて人気のない河原で
裸にされ、悪戯をされた惨たらしい遺体で見つかる。


137 名前:136 :2012/07/11(水) 15:16:36.19
続き2
極貧の一家の事件に多くの同心達は投げ遣りの中
主人公の同心だけは熱心に探索して、やがて幼児を狙った変質者の
犯行にしては現状がおかしい事、娘の着物、紐帯は周りに散乱していたのに
半纏だけが無くなっている事に気が付いた事からやがて犯人が捕まる。

犯人は生地道楽の大店の隠居で、母親が何も知らずに半纏に使った
「汚い古布」は数奇者が見れば垂涎の稀少な古代布であり
通りすがりに娘の半纏を見たその隠居が、夢中でその半纏を娘から
取り上げようと河原に連れて行き、最初はお金で取り上げようとしたが
母親の心尽くしの半纏を必死に守ろうとした娘が
言う事を利かないので、逆上して絞め殺してしまったのだ。


138 名前:136 :2012/07/11(水) 15:17:54.52
続き3
我に返った隠居はやった事に怯えながらも、布を諦め切れなくて
半纏だけを持ち去ったのでは不審に思われると悪知恵を働かせて
着物を脱がせて変質者の仕業に見せかけた(本物でないので不自然)が
手に入れた古代布を隠しておけず、世間に自慢したくて
半纏をほどいて茶道具のふくさに仕立て直し、お茶会で披露したのが
噂になって主人公が隠居を突き止めた。

しかし自分が仕立てた半纏が結果として娘を殺した事実に打ちのめされる
母親に対して主人公は慰める言葉もなく、「まだ残っている端切れでも
数十両の値打ちがあるそうな、それで娘さんの菩提を弔ってあげな」と
言ってやるのが精一杯だった。

1ヶ月ほど後、母親が長屋で首を吊って死んだと知らされ
現場に駆けつけると、母親は残った古代布で紐を練りそれを使って首を吊っていた。


139 名前:136 :2012/07/11(水) 15:18:13.58
続き4
あの事件以降、母親の元には「いくらでも出すから古代布を売ってくれ」という
好き者が後を絶たず、長屋仲間も初めは貧しい者同士で娘を殺された母親に
同情していたが、何十両もする財産持ちだと判ってから露骨に嫌味や
嫌がらせをする者、中には母親に言い寄る者等も出て、娘の死に加えて
更に母親は周りに追い詰められての自殺と判った。

現場の検分中にも、古代布目当てにやって来た連中に向かって主人公は
「さあ、これがあんた達の欲しがっていた布だぜ!!人が首を吊った
大層縁起の良い布だから、さぞ夢見も良いだろうともさ( ̄□ ̄;)!!」と
母親が首を吊った紐を連中に付き出しながら怒鳴りつける。

当時の因習として、自殺に使われた物は不吉なので供養として
燃やされるのだが、現場に現れた数奇者達は不幸な母子を弔うより
「貴重な布が灰になる」のを惜しんでいる描写や
何か一つうまい具合に転がって最初に隠居が母親に話を持ちかけていたら
この悲劇の古代布は、母子、隠居、長屋仲間にも恩恵をもたらして
いただろうにと思わせる流れもあって後味悪かった。


140 名前:本当にあった怖い名無し :2012/07/11(水) 15:33:06.64
古代布オタクの隠居が、子どもからふんだくらずに買い取ってやれば
みんな幸せだったのに…

141 名前:本当にあった怖い名無し :2012/07/11(水) 17:02:55.37
>>140
だが断る状態だぞよく読め

それより布の価値を母親がわかってたらなあ
さっさと売れたのに


142 名前:本当にあった怖い名無し :2012/07/11(水) 17:56:09.02
隠居も娘に母親の所へ連れて行って貰って、交渉すれば良かったのになあ。

143 名前:本当にあった怖い名無し :2012/07/11(水) 19:09:29.96
娘にとってはお母さんが作ってくれた物が大事だっただけだもんな、余った布の方を買い取れば…
しかし布の存在がバレればどっちにしろ誰かに半纏も狙われるか

145 名前:本当にあった怖い名無し :2012/07/11(水) 21:32:55.46
母親が古代布の価値を知らなかったのが一番の不幸なのかな…。
遣る瀬無いね。

150 名前:本当にあった怖い名無し :2012/07/12(木) 00:58:14.02
どれだけ希少な趣味の持ち主であろうと
それ欲しさに小さい娘を殺すなんて、言い訳しようのない猟奇殺人犯だろう、

娘にいい服着せてしまった所為で、変態猟奇殺人犯に狙われた上
セカンドレイプまでされた可哀相な話だった。

物欲しさに小娘殺すなんて
殺人犯には同情の余地一切ない、シチュー引き回しの上獄門や。

 

木戸の椿―公事宿事件書留帳〈2〉 (幻冬舎文庫)
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