ホーム » 小説 » 小説/か行 » 故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実(H・P・ラヴクラフト)

997 名前:1/3 :2012/08/16(木) 13:32:47.37
埋めついでに
H・P・ラヴクラフトの短編「故アーサー・ジャーミン卿とその家系に関する事実」

コンゴには昔、無毛の白い類人猿がいたという。
彼等はそれなりの文明を持ち、女王を戴いていた。
ある時偉大な白い神が女王を娶り、息子を産ませると三人(三柱?)そろって立ち去った。
その後神と女王だけが戻り、女王は死んだ。
神は女王をミイラにして墓所に安置し、一人で立ち去った。
とある好戦的な部族が類人猿を滅ぼし、女王のミイラを奪ったと伝説にはあるが、詳細は不明である。

アーサー・ジャーミン卿は焼身自殺を遂げた。焼け焦げた遺体を骨壷に納めた者はいない。
故人の知り合いの一部は、故人がかつてこの世に存在したことを認めようとしない。

アーサーは吐き気を催す程の醜貌だったが、自殺の原因はそれではない。
彼は詩人にして学者であり、自分の醜さを気にすることなはなかったのだ。
ジャーミン家の者は皆、醜貌と狂気を持っていた。
狂気はアーサーの五代前の祖先、ウェイド卿から始まった。
彼はアフリカの魔力に取り憑かれたコレクター兼探検家で、妻をアフリカから連れ帰った。
彼は妻を、アフリカで知り合ったポルトガル商人の娘で、気性の荒い女だと説明し、召使にも会わせず隔離して暮らした。


998 名前:2/3 :2012/08/16(木) 13:35:20.25
ウェイド卿は妻を最後のアフリカ探検に伴うが、妻は現地で亡くなる。
彼は息子を恐れ、精神病院で死んだ。

ウェイド卿の息子、フィリップは低能で、怪力の持ち主だった。
森番の娘に子を産ませると貿易船の船員になり、アフリカで行方をくらましたという。

フィリップの息子、ロバートは学者だった。狂った祖父のアフリカコレクションを系統立てて研究し、家名を高めた。
子爵の娘と結婚して三児をもうけたが、長子と末子は心身ともにひどい奇形で、屋敷で隔離されたという。

祖父の無愛想と母の横柄を受け継いだ健常者の次男、ネヴィルは卑しい踊り子と駆け落ちし、
幼い息子のアルフレッドを連れて出戻った。

ロバート卿は数回のアフリカ探検を行なった。
ウェイド卿が夢中になっていた、コンゴの白い類人猿の伝説を研究するためである。
ロバート卿はある日、屋敷を訪ねて来た高名な探検家を殺した。
探検家はコンゴで原住民の民話を採集した帰りだったという。
ロバート卿はさらに、奇形の子供二人とネヴィルを殺して逮捕された。
彼は一切弁明せず、自殺未遂を繰り返した挙げ句に病死した。

アルフレッドは父に守られて生き延びた。
女芸人にアーサーを産ませ、サーカスに加わったがアメリカで事故死した。


999 名前:3/3 :2012/08/16(木) 13:37:25.07
「ゴリラVS人間のボクシング」芸のリハーサル中に、調教済みのゴリラを怒らせてバラバラ死体になったという。

アーサー・ジャーミン卿はひどい醜貌を打ち消すに足る、繊細な精神と高い学識を持っていた。
祖先が行なったアフリカ民俗学の研究を受け継ぎ、大規模な遠征を行なった。
イギリスに帰国すると、コンゴの役人から連絡があった。
例の伝説にある好戦的な部族は、今ではベルギー王に忠誠を誓っている。
彼等は秘蔵のミイラを差し出す事を承知した。

木箱入りのミイラが船便で届いた。
アーサー卿はコレクション展示室で、人払いをしてすぐに箱を開けた。

しばらくして恐ろしい悲鳴が上がった。
アーサー卿は部屋から飛び出し、地下室で油を浴びると荒野に駆け出し焼身自殺を遂げた。

ミイラは白い皮膚を持ち、きわめて毛の薄い類人猿だった。
人類に近い、今までに知られていない種類の類人猿である。
その首には、ジャーミン家の紋章が刻まれた首飾りがあった。
その顔は、フィリップ以後のジャーミン家の直系男子に似ていて、なお悪いことにアーサー卿に瓜二つだった。

王立人類学会はミイラを焼却し、首飾りを井戸に投げ込んだ。
アーサー・ジャーミン卿の知り合いの中には、彼がこの世に存在したことを認めない者もいる。


1000 名前:本当にあった怖い名無し :2012/08/16(木) 13:49:34.87
>>999は同人誌に載った後商業誌に載ったが、編集長がタイトルを「White Ape」に変えちゃったのが後味ワルー。
作者は手紙で、
私が「白い猿」ってタイトルで小説を書くなら、作中に白い猿なんか出さない!伏線が台なし!
と怒っていたそうだ。

 

ラヴクラフト全集 (4) (創元推理文庫)
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