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918 名前:1/4 :2012/11/02(金) 00:02:11.76
ロバート・ブロック「ベッツィーは生きている」

ベッツィー…ハリウッドに20年あまり君臨する女優。
A…売れない脚本家。海辺のコテージにこもって小説を書いている。
B…映画会社の宣伝課員。Aの隣人。

4月、AはBと知り合った。
Aは小さなコテージを借りているが、Bは素敵な別荘を所有している。
高級車にシャンパンの箱を積み、イタリアもんのスーツを着て、女優の卵を引き連れてどんちゃん騒ぎをするのだ。
まだ23歳でイケメンでもなく、脚本一つ書けるわけでもないBがなぜ?と、Aはやっかむ。
酔った拍子に尋ねてみると、Bは何とも言えない奇妙な顔つきになって話題を変えた。
「ハタチで単身ハリウッドに乗り込んで、とんとん拍子に出世して
 
あのベッツィーの担当になったのか?社長が埋めた死体の場所でも知ってるのかね?」
「…ま、そんな所だ」

6月、女優のベッツィーが死んだ。
趣味のボートレースのための練習中、他のモーターボートと衝突して相手も死んだのだ。
ベッツィーのボートは発見されなかったが、ブロンドの死体が揚がった。
死体の損傷が激しく、検証には数日を要した。


919 名前:2/4 :2012/11/02(金) 00:04:06.42
BはAに、二人で伝説を作って大儲けしよう、と持ち掛ける。

ベッツィーは事故の前週、新作映画の撮影を終えていた。
映画は11月公開予定。主演女優が死んで半年も経って、誰が死体の演技を見たがる?
今すぐ公開してもいいが、会社は最大の利益をあげたい。
彼女は私生活も過去も明かさなかった。
つまり宣伝マンと脚本家が組めば、11月の公開までに好き勝手に伝説を作って彼女の人気をさらに高めることもできる。

Aは、有り難い話だが自分は食屍鬼(グール)にはなれない、と断る。
「僕がグールなら、君は底抜けの馬鹿だ。度胸がないから負け犬なんだよ」
墓荒らしの真似はできない、きっと育ちが違うのだろう、とA。
「…あんたに何がわかる。僕はギョーカイで英才教育を受けてきたんだ、まぁ見てろ」

8月、ベッツィーの人気は再燃した。
Bの言った通り、売れないライターを雇って記事を書かせたのだろう。
“ベッツィーの真実”、”誰も知らないベッツィーの恋バナ”、
“ベッツィーはティーンエージャーのシンボル”、”私はベッツィーのたった一人の親友”、
“謎の女・ベッツィー”


920 名前:3/4 :2012/11/02(金) 00:06:42.52
曰く、欧州の王室の御落胤。無声映画時代のスターの隠し子。
曰く、敬虔なプロテスタント。自由主義者。占星術狂。ブードゥー信者。魔女。
曰く、結婚願望の強い普通の女。プロデューサーとの間に隠し子あり。
アル中。演劇学校を設立するはずだった。実はインテリ。

11月、BがAのコテージを訪れて勝利宣言をすると同時に、酔った女が現れた。
小柄で太った、ブルネットの中年女である。
女を見て、Bは蒼白になった。

女はベッツィーだった。ベッツィーは語る。
事故を起こした相手は顔見知りのボート仲間。
あの日は(あの日も)ブロンドの娼婦をボートに連れ込み、よろしくやっていたに違いない。
彼女は気を失ってボートごと漂流し、メキシコの貨物船に救助されたのだった。
数年ぶりの完全な休暇を満喫し(ボートは売った)、アメリカに戻ってきた。
気ままな船旅、船長は親友、船員はみんな友達。
毛染めを手に入れてブロンドになったら、やっと誰だかわかってより一層ちやほやしてくれた。
メキシコ男はブロンドに弱いのだ。
「驚いたわ、B。うまくやったじゃないの。でも勘違いしちゃダメ、あんたの地位はあたしのおかげなのよ」


921 名前:4/4 :2012/11/02(金) 00:09:27.83
「映画の公開は来週でしょ?美容院に行かなくちゃ。エステもね、それはそうとお酒はないの?」
僕の別荘で飲みながら復帰計画を話し合おう、とベッツィーを宥めるB。

しばらくして、Bがやって来た。
あの女はただのゆすり屋。酒を飲ませて追い出したら、崖っぷちをフラフラ歩いて落ちた。
Aは警察に電話する。
Bは映画の宣伝に差し支えが出るからと、口止め料を提示する。
ベッツィーを名乗る女が死んだとなると、大衆は疑問を持つ。作戦は台なし。
だから一切を忘れて、女浮浪者が崖から落ちたと証言してほしい。

「しかしB、警察は徹底的に調べるさ。過去も洗うだろう。あれは本物のベッツィーだな、君の態度で確信できたよ」
「君が崖から突き落としたんだろ?でもなぜなんだ」
Bは語る。
自分は裏方、何をしても賞賛されるのはベッツィー。
手柄を横取りされるのは御免だ、あの女に支配されるのは御免だ、自分は浮かび上がりたい。
「何が宣伝マンだ、君はただの、伝説を作るためなら実の母親だって殺しかねない卑劣漢なんだぞ!」

Bは奇妙な表情を向けた。
「その通り。なぜわかった?」


922 名前:本当にあった怖い名無し :2012/11/02(金) 01:07:11.18
つまりAはベッツィーの隠し子だったのか
乙でした

923 名前:本当にあった怖い名無し :2012/11/02(金) 01:14:38.14
>>922
節子、AやないBや。

 

血は冷たく流れる (異色作家短篇集)
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