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276 名前:1/2 :2012/11/14(水) 22:29:56.41
サマセット・モーム「コスモポリタンズ」から「困ったときの友」

バートン氏は神戸で会社を経営している。
有能で穏やかな人格者で、控えめなユーモアがあり、ブリッジでは大胆な手を使った。

ブリッジ仲間のレニー・バートン、本国からの仕送りで生活している、
当時の神戸では珍しくもない不良外人が、バートン氏に同姓のよしみで仕事の紹介を求めた。
仕送りが打ち切りになり、ブリッジからポーカーに鞍替えしたら全部すってしまい、金目のものは全部質に入れたという。
彼は35歳で、働いたことがなかった。
トランプの他に何ができるのか、と訊いたところ、大学で水泳部だった、、と大いばり。

バートン氏も若い頃は水泳が得意だったし、
学生時代に体育会系で有名だった連中をよく知っているので、何の感銘も受けない。


277 名前:2/2 :2012/11/14(水) 22:31:07.26
バートン氏はレニーに、一つの話を持ちかける。
A地点から出発してビーコン(信号浮標)を回り、B地点にあがる3マイルあまりのルートを泳ぎ切れば、雇ってあげよう。
ビーコンのあたりは海流が悪いから気をつけたまえ。今は10時過ぎだから、12:30にB地点で待っている。
これは若い頃のバートン氏が好んだルートだった。
レニーは、コンディションが万全じゃない、などと言い訳をしていたが、しぶしぶ出掛けて行った。

バートン氏はB地点で待ちぼうけを食らった。死体があがるまで三日かかったのだ。
バートン氏は横浜で知り合った筆者にこのエピソードを語り、
「当時うちの会社には空いたポストがなかったんですよ」
と悪戯っぽく穏やかに微笑んだ。

 

コスモポリタンズ (ちくま文庫―モーム・コレクション)
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