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985 名前:1/2 :2012/12/09(日) 23:24:37.40
中井英夫「呼び名」

画家の矢川は庭の薔薇の手入れが唯一の趣味である。
ある日、薔薇の生け垣で怪我をしたという少年が警官に連れられてやって来た。
「僕、血友病なんです…」
と言う少年だが、掻き傷の血はすぐに止まった。
救急箱を持って来た内妻は、少年を見て顔をしかめた。因縁をつけられたと思ったのだろう。

少年はデザイナー志望の17歳で、警官には木村征夫と名乗ったが、
本名はひろしだと矢川にだけ告げた。
(難しい字なので、矢川は覚える気をなくした)

矢川の内妻の妖子はどこで何をしていたかもわからぬ自堕落な、ほっそりした美女で、
ふらりと現れて居着いたのだった。
「あたしの名前?ようこ。字?妖精の妖でいいじゃない」

矢川は木村少年を、家政夫として住み込ませた。
妖子の下手な料理に音をあげたのが真相だが、君には美しいモデルでいてほしい、と説得したのだった。
妖子は、ああいう変にきれいな顔の男の子って薄気味悪いわ、と言いながら渋々受け入れた。


986 名前:2/2 :2012/12/09(日) 23:25:45.46
木村少年はある日、薔薇の手入れの最中に囁いた。
「焼きものを白くするには骨灰を混ぜるというけど、薔薇にも効くんじゃないかな。女の人の骨とか」
矢川は、君はたいした小悪魔だな…と言うのが精一杯だった。

矢川がもう少し積極的ならば、二人は妖子を始末する計画をアトリエで、
時にはベッドの上で話し合うようになっていたかもしれない。
木村少年には矢川を拒否する様子はない、と矢川は思った。
しかし、ある日矢川が予定より早く帰宅すると、妖子の罵声が聞こえた。

「おい、肉ばっかし出すのはいったいどういう了見なんだい。
 サンマやアジの開きをジュウジュウ焼いた方が好きだって、お前昔っから知ってんだろ」
「え?ひろし。聞いてんのかよ、ひろし」

ヘーイ姐御、という木村少年の返事を聞いて、矢川は残酷な老いの到来を知った。
妖子とひろしは揃って家出し、薔薇園は朽ちた。

作者はホモで、原文はホモ臭一杯。
ノンケのはずの矢川が少年の美貌に惹かれる描写、妖子の自堕落さに飽きてきた描写もある。

 

新装版 とらんぷ譚3 人外境通信 (講談社文庫)
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