夢売ります(ロバート・シェクリイ)
A氏は尾行がない事を確かめてから、
がらくたの散らばる小路の奥のみすぼらしい小屋に入った。
友達から聞いて訪れた、夢を売る店である。
店主はマッドサイエンティストで、ある種の薬物と特製装置で客が望む夢を見せる。
たかがヘロインの幻覚に法外な金を取るな ...
八日目の蝉(角田光代)
ハッピーエンド風に見せていたが誰も幸せになれていなくて後味悪いと思ったな。
実在の事件を元にしたと聞いたけどそれより多少マシ程度か。
ヒロインはある既婚男性と不倫し妊娠してしまったが男性に
「その内妻と離婚するから結婚してから子どもを ...
夢の大金(星新一)
町はずれの小さな家に住む山田庄造という老人(70近い)がいた。
庄造は身寄りがなく、子に恵まれず妻にも先立たれ、退職金は詐欺師にすべて奪われた。
もう金もなく大家から立ち退きを請求され、
しかも最近は決まって大金に手を伸ば ...
指(江戸川乱歩)
とある名のあるピアニストが暴漢に襲われ、右手首を失った。
物語の語り手である医者は、ピアニストに右手首切断のことを教えなかった。
「あ、君が世話をしてくれたのか、ありがとう」とピアニストは言った。
「何せ酔っ払っていたもので、暴漢が誰だか解らなかった。右手だね?
僕 ...
ユリタン語四週間(式貴士)
遠い異星ユリタン星と地球の間で観光船が行き来するようになった遠い未来。
ユリタン星は自転周期の関係で太陽に一つの面すなわち「昼の国」を向けていて、
ユリタン星人はみな昼の国に住んでいる。
昼の国は気候が温暖で海も川もなく陸地ばかり、
反対側の「夜の国」は海も ...
行きずりの殺意(森村誠一)
ある日中に、結婚したての新妻が家事をしながら
昨夜の事を思い出して一人赤面していた。
バージンで結婚した彼女は、まだ性に関して未熟だったが
昨夜は夫の行為に普段と違う反応を示してしまったのを
今朝、出勤前の夫からからかわれて恥ずかしさの余 ...
酔いどれ天使(渡辺淳一)
主人公は平凡なサラリーマン。会社の帰りに酒を飲むのが唯一の楽しみ。
最近妻が妊娠したので、嬉しくてたまらない。
同僚に喜びを打ち明けるが、そいつは後日気になることを言った。
酩酊児。父親が酔っぱらった ...
柔らかい手(篠田節子)
有名な冒険家兼写真家が、撮影中の事故で寝たきりになった。
気がつくと見知らぬ部屋に寝かされていて、
声はほとんど出ないし手がわずかにしか動かない(うろ覚え)
若く美しく従順な妻が献身的に面倒を見ている。
不自由な口で訊ねる ...
薬缶(乃南アサ)
主婦A子は友人B美の所に遊びに行く。
B美の旦那は一流企業のエリートマンで、高級マンションに住んでいた。
専業主婦で暇を持て余しているのか、ドアノブやクッションなど
部屋はB美の手作りのもので溢れかえっている。
「私ね、時々思うの。主人が死んでく ...
山羊の首(三島由紀夫)
昭和19年の夏の日、砲台の警備兵辰三は野外で百姓娘を抱いていた。
(戦争末期の兵隊は、ちょっと粋に見える程ぐれていたのだ)
突然声も立てずにしがみついて震えた娘に促されて振り向くと、
土から生えたように置かれた山羊の生首が、辰三の行為をじっと見ていた。
工廠に徴用 ...