ユーヴォラン王の船旅(クラーク・アシュトン・スミス)
ウステイムの王の王冠は、美しい宝冠をガゾルバ鳥の剥製が鷲掴みにしたものだった。
ガゾルバ鳥は九代前から宝冠を飾り、王権と分かちがたく結び付いていた。
美しいガゾルバ鳥は、とある水夫がはるか東方の島で
最後の一羽を殺してウステイムにもたらしたものと ...
呼び名(中井英夫)
画家の矢川は庭の薔薇の手入れが唯一の趣味である。
ある日、薔薇の生け垣で怪我をしたという少年が警官に連れられてやって来た。
「僕、血友病なんです…」
と言う少年だが、掻き傷の血はすぐに止まった。
救急箱を持って来た内妻は、少年を見て顔をしかめた。因縁をつけられた ...
妖精配給会社(星新一)
地球に一台のロケットが飛来した。中にはタマゴが一個。
タマゴからは「妖精」が生まれた。
猫ほどの大きさで、猫より軽く、全身を灰色の毛皮で覆われた、翼と尻尾を持つ生物である。
妖精は地球の言葉を学習し、世辞を言った…と言うより、世辞を言うしか能のない生物だった。 ...
柔らかな頬(桐野夏生)
小説、柔らかな頬
地元北海道の田舎っぷりに嫌気がさし、中学くらいに家出して上京した主人公。
大人になり小さな印刷会社で働きそこの社長と結婚し、子供女二人もうける。
が、夫の会社の客先の社長と不倫。
ホテル帰りに子供迎えに行ったりするが子供は大事で可愛い ...
カラカラ(塚本邦雄)
拷問注意。
「テルマエという言葉を御存じでしょうか」
淵上青年のもとに不躾な電話が来た。
確か大浴場のことでしょう、古代ローマの。
「ぴたり御名答。では貴方様を今週の招待客に決めさせていただきます」
電話の主は続ける、
完全会員制豪華浴場【 ...
與那國蠶は秋の贐(塚本邦雄)
東京にA男とB男の兄弟がいた。
兄のA男は某国の高級化粧品メーカー、ガビ化粧品日本代理店の名ばかり社長。
A男は繊細な美貌を持つホモで、偶然知り合ったガビ化粧品会長の「稚児」になり、日本代理店を与えられた。
(仕事は老舗薬品メーカーが引き受けている)
余生の幅(松本清張)
商売人の金持ち亭主が、従業員の小娘を妾にする。
女房は別居して小料理屋を始める。
時々金をせびりに来て、というか離婚してないので帰宅して、妾を
「時分どきだから寿司でも取ってくれ」
「気を利かせて蕎麦でも取ったらどうなんだい」 ...
歪んだ蜜月(阿刀田高)
夫は真面目で優しいだけが取り柄の冴えない男、新妻は20代後半のおとなしい女。
新婚旅行のホテルの部屋で、好奇心から妻の鞄を探った夫は、
隠しポケットから怪しげな手帳を見つける。妻は入浴中。
中身はローマ字で、結婚を後悔していること、結ばれない相手への愛な ...
屋根裏部屋の花たち(V.C. アンドリュース)
主人公の少女は、両親・兄・双生児の弟妹と共にごく普通に暮らしていた。
容姿が良く運動が好きな少女はバレリーナを目指し、シャイだが賢い兄は医者を目指していた。
だがある日、父が突然の事故で帰らぬ人となった。
舞台は現代より何十年も前のアメリカで、保険とかが ...
藪の中(芥川龍之介)
舞台は平安時代。藪の中で起こったある殺人事件の関係者が証言、告白するという
構成になっている。
男の死体の第一発見者、「木樵(きこり)の証言」
死骸には胸に刺し傷はあったものの凶器は見当たらなかった。
遺留