偉大なる、しゅららぼん(万城目学)

1011/4:2012/12/12(水) 11:57:37.12
長いっていうか、SFだから設定の説明だけで長文になっちゃったんだけど
「偉大なる、しゅららぼん」という小説

【あらすじ】
琵琶湖の湖東地方・石走では、琵琶湖から超能力を授かったと称する湖の民
日出家と棗家がいがみあいながら共存していた(もちろん能力の事は一般人には秘密)
湖の民は故地の湖から離れると徐々に力を失う
能力を生活にいかしていることもあり、両家は琵琶湖から離れられない

主人公は日出家の分家の息子で、超能力を持って生まれてきた
しきたりに従って超能力の使い方を学ぶため、中学卒業と同時に三年間
石走の本家(財閥総帥、アホみたいな金持ち)に住み込むことになった主人公
同じ高校の同じクラスには、本家長男、敵対する棗家の長男、
そして新しく赴任してきた校長の娘が在籍し
風変わりな本家長男が校長娘に恋をしたりしつつ日常を送っていた

ところがそこに“外敵”が現れる
実は新校長は両家の超能力者が到底かなわない数段強力な超能力者で
日出家、棗家の当主が体の時間を止められ停止状態にされた
その解除を条件として日出家と棗家に湖を去れと
(まあつまり一族全員滋賀県を出て行けと)要求してきたのだ
主人公・本家長男・棗家長男は力を合わせて立ち向かう事を決意する――って感じ

でまあ、最後の対決で校長は会談の場に、事情を知らない自分の娘を連れてくる
何も知らない娘は不穏な雰囲気に辞退しようとするが、それを超能力で暗示をかけてまで連れてきた
この校長は両家と対立して、その家族に危害を加えながらも
自分の家族を市外に避難させるなどの対策をとっておらず、当初からいぶかしがられていたが
この対応はもはや娘を盾にしているとしか思えない、と主人公は感じる
もちろん校長娘に片想いしている本家長男もそう感じたようで怒りを募らせる


1022/4:2012/12/12(水) 11:58:18.23
ところが校長は操られていただけで、黒幕は別にいた
その黒幕こそ日出家に五十年忠実に仕えてきた朴訥な老人・源治郎だ
ここに来て日の浅い主人公はもちろん、幼い頃から世話になってきた本家長男は衝撃を受ける
「自分はこの力を昔から持っていたが、日出家先代に封印された
その時に一緒に故郷の記憶を奪われた事、
そんなことも知らずここで働ける事を感謝していた自分を笑って見ていた先代当主が許せない
先日突然記憶と共に力が戻った、あなたたちに罰を受けさせるため町から出て行かせる」
そう宣言した源治郎を、本家長男は説得しようとするが通じず
ついにある手段で彼を殺すことになる
生まれた時から陰日向なく仕えてくれた老人を殺す決意をした背景には
家族や一族を守りたい気持ちと共に、校長娘を利用された怒りもあっただろう

だが、最後に「どうして校長娘をここに連れてきた」とたずねた本家長男に
源治郎は答える
「ぼっちゃんがあの子を好きなのは知っていた
自分は五十年前、好きだった女の子のことまで忘れさせられて、それがとても悲しかった
ぼっちゃんが街から出て行くなら、その前に会ってしっかり記憶に留めてほしかった」
源治郎には校長娘を盾にするつもりなどなかった、
今まで面倒をみてきた本家の姉弟をやはり大事に思っていたのだ
取り乱す本家長男の目の前から源治郎は消え、おそらくそのまま殺された

源治郎が死んでも当主たちの止められた時間は戻らず、皆が呆然とする中
棗家の長男が「棗に伝わる秘術を使う」と言い出した
(棗家は父だけでなく妹も時間停止させられ、日出家と違って自分たち一家以外に
一族の人間もいないので絶望感が強かった)
それが「棗家が超能力を授かったという過去自体をなかったことにするのと引き換えに
時間を巻き戻す」というもの
「主人公・本家長男・本家長女の記憶は残しておくから、源治郎の記憶を上手く戻してやって」
と言い残して、制止を振り切り棗家長男は秘術を使う
主人公たちは記憶を保ったまま、棗家があった場所には関係ない建物が立ってるような世界の、
源治郎が記憶を取り戻す前の時間に戻される


103 3/4:2012/12/12(水) 11:59:00.63
物語自体は
棗のいないクラスに寂しさを感じる主人公たちだが、
ある日改変前の世界には存在しなかった『家の事情で入学が遅れていた新入生』がやってくる
扉が開いて彼が入ってくるのを固唾をのんで待つ主人公、もしや彼は――
ってところで終って後味悪くないけど、結局源治郎の顛末が…

本家長女というのが、力は強いけど強すぎて無差別に人の心の声が聞こえるようになり
ひきこもってしまったという女性なんだけど
彼女が源治郎の身に起こったことの真相を師匠から聞き出して
源治郎の封じられた記憶だけを元に戻すことに成功する

改変後世界の源治郎は、元の朴訥で忠実な老人なんだけど
主人公たちに「昨日色々な夢を見て、忘れていた昔の事を沢山思い出せた」と嬉しげに語る
故郷の風景、暮らし、父母とのささやかだがあたたかい思い出…
「こんな大事な思い出を何十年も忘れてるなんて親不孝だった
両親は自分がこちらに来て何年も経たない内に亡くなったので久しぶりに話せてうれしかった」
「とても好きだった幼なじみの女の子の事も思い出せた、
自分は彼女と結婚したいと心に決めていて、必ず三年で戻ると約束したのに
よりによってその約束まで忘れて今日まで独り身だったなんて本当に馬鹿だった
でも、その子にも夢で会えてうれしかった」
……まあ、そりゃな…これはキレるわ……
結局こうやってやんわり記憶だけ戻してやったせいで、爺さんは全部先代のせいだってことも忘れて
自分が馬鹿なせいで色々取り返しつかなくなったけど、今となってはしょうがないって感じで
ただ思い出せた事だけ喜んでてもやもやする


104 4/4:2012/12/12(水) 11:59:42.02
しかも源治郎が記憶といっしょに力を封印された理由というのが…
日出家先代当主は全国各地の湖のほとりに住む湖の民の調査をしていた
戦後急速に湖の民が力を失い消えていくのを目の当たりにした先代は、
埋め立てられ消滅することが決まった八郎潟の湖の民出身であった源治郎を奉公人として引き取る
源治郎の父母を説得するため超能力で精神に影響を及ぼすことまでして、かなり強引に
琵琶湖の民にもいずれ起こるかもしれない力の消失現象を近くで観察するため、
また源治郎は父母共に能力者という珍しい生まれであり、その力を調査したかったためもある
しかし源治郎自身は能力に目覚めていなかった
そこで先代は日出家に伝わる方法で源治郎の力を目覚めさせる
普通、能力者同士は子供を作らない
そこでなにが起こるかわからないからと能力から遠ざけて育てられ
目覚めていなかった源治郎の力は強大だったが、暴走を起こしてしまった
その暴走を止めるために、先代と長女師匠は源治郎の力にまつわる記憶を消す事で力を封印する
しかしそのために、同時に彼の過去の思い出の多くも封印する事になってしまった
かわいそうだけど仕方ないよね
……というもの
不慮の事故だったかもしれないけど先代の自業自得すぎるー!擁護できねー!

大体さー、改変前の世界で源治郎に急に記憶が戻ったきっかけが
本家長男の行動のせいだったりするんだよな…
それもこれも源治郎が湖の民で力を封印されてるなんて知らなかったせい
知ってたら本家長男だってそんなことしなかっただろう

もちろん本家長女も知らなかったよ
そもそも知ってたらっつーか、先代が源治郎にやらかしたことが代々伝えられてたら
暴走当時は記憶ごと封印するしかなかったとしても、
規格外に強力な長女が育った時点で改変後世界でやったように普通に記憶戻してやれたはず

反省が足りないんじゃねーの反省が
というわけで後味悪かった


105 本当にあった怖い名無し:2012/12/12(水) 12:00:24.99
あと補足
校長になんとしても抵抗する!というのは「子供には責任ないから普通に生活してろ」って
話しあいから省かれてた高校生たちが勝手に決めて行動した事で
日出家の大人たちは別のところで話し合いしてる
そこでは結局
「当主を見殺しにできない、だからって敵やその家族に危害を及ぼして撃退するような
犯罪的・暴力的なこともできない、
とりあえず相手が期限切ってきた要求は一旦のむことにして、
それ以外はこれからもっとちゃんと話し合って妥協点を探ろう」
というごく常識的な結論が出たらしいので
源治郎は長年仕える中で、こうした日出一族の穏当さを把握していて
そんなに手荒な事にはならないと予想していたと思われる
本人も「抵抗したら時間止める、要求通りしてくれたら時間停止をとく、
むやみに時間停止をかけたくないので要求をのんでほしい」としか言ってないし

106 本当にあった怖い名無し:2012/12/12(水) 13:53:47.75
源治郎、元恋人には会えないんだろうか
50年もたっていたら無理か。気の毒過ぎる。
ひょっこり、「記憶が戻った、挨拶だけでも」って会いにいけたらいいのに。

107 本当にあった怖い名無し:2012/12/12(水) 18:06:51.28
虫唾が走る話だ
主人公と本家の息子たちも全滅してしまえばいいのに

 

偉大なる、しゅららぼん
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