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9101/2:2013/01/13(日) 22:04:00.71
三島由紀夫「月澹荘綺譚」

O侯爵はS町の風光明媚な岬に月澹荘という別荘を持っていた。
別荘番の息子の勝造少年は、嫡男の若君の遊び相手という大役を仰せつかった。
漁師の息子である勝造にとって、若君は不思議な少年だった。
どんな遊びも勝造にやらせ、決して手を汚さず、大きな澄んだ目でじっと見るだけだったのだ。

若君が結婚する前年の夏のある日、二人は山へ散歩に出た。
山の上で、地元の白痴娘が歌を歌いながら夏茱萸の実を摘んでいた。
若君はそれをじっと見ていた。
気味が悪いからと帰ることを進言した勝造に、若君はある命令を下した。
子供の頃から理不尽な命令を聞いてきた勝造だが、今回ばかりはためらった。
若君に急かされて、勝造は命令を実行した。

勝造に組み敷かれて泣き叫ぶ白痴娘の顔を、若君は安全な
(だって勝造が漁師の力で押さえつけていたのだから)至近距離から静かに見ていた。

結婚した最初の夏、若君は夫人を伴って月澹荘を訪れた。
勝造は夫人を、顔を仰ぎ見ることも憚られる程美しい人だと思った。
勝造は漁師の常で暑い日には裸でいることも厭わなかったが、
夫人を知ってからはなるべく清潔な物を着るようにした。


9112/2:2013/01/13(日) 22:05:22.01
結婚して二年目の夏、若君の死体が崖下で見つかった。
犯人は白痴娘だと、勝造にはすぐにわかった。
若君が死んだ翌年の晩秋、月澹荘は不審火で焼け落ちた。
父が死んで別荘番になっていた勝造を、夫人の手紙が慰めた。
…月澹荘が焼けたのはむしろ天恵、土地はS町に寄付する。勝造が責任を感じることはない…
勝造は手紙を額に押し当てて泣いた。
S町を訪れることはもうないであろう、という一句のためである。

若君が死んだ翌年の夏、夫人は一人で月澹荘に滞在した。
勝造は夫人に招かれ、初めて座敷に通された。
白い浴衣に袴をつけた勝造に、夫人は若君が「あんな風に」死んだ訳を尋ねた。
勝造は誰にも話さなかった例の出来事を話した。

「それでわかりました、娘があなたを憎まず殿様に怨みをかけたわけが」
「話しにくい事を話してくれてありがとう。
私もあなたに、今まで誰にも話さなかった事を話しましょう」
「殿様と私は、一度も夫婦の契りを交わした事がなかったのです。
殿様はただ…隅々まで熱心にご覧になるだけでした」

結婚して二年目の夏、若君の死体が崖下で見つかった時、勝造にはすぐに犯人がわかった。
死体の目はえぐられ、かわりに夏茱萸の真っ赤な実が詰め込まれていたのだから。


913 本当にあった怖い名無し:2013/01/13(日) 23:20:34.93
文学系は話の表面だけなぞっても
意味ないかとは思う。
後味も悪くない。

915 本当にあった怖い名無し:2013/01/13(日) 23:30:39.75
厨二入ってた頃に読み漁った記憶が蘇って個人的には後味悪かったけど、
>>913でも言われてるように、文学系の話は後味悪い悪くないってもんでもないような気がする
文章とか雰囲気でその世界にどっぷりに浸ってこそだったりするから

 

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