グランド・ブルテーシュ奇譚(バルザック)
- バルザックの短編「グランド・ブルテーシュ奇譚」フランスのとある田舎町に、貴族の夫婦が住んでいた。
ある夜、夫が予定より早く帰宅して妻の寝室のドアを開けると、
同時に衣装部屋のドアが閉まる音がした。
どうせ妻専属のメイドだ、と気にせず妻と話をしていると、
メイドが廊下側のドアから入ってきた。
- 衣装部屋に誰かいるの?
と訊ねると、妻は否定する。
衣装部屋のドアに手をかけると、妻は、信用して下さらないのね…と涙を流す。
夫は机上の十字架を突きつけ、中には誰もいない事を誓わせる。
(夫は初めて見る、スペイン風の美しい細工の十字架だった)夫はメイドに命じて左官を呼びつけ、
衣装部屋のドアを煉瓦で封印するよう命じた。
(左官は妻専属メイドの恋人。メイドに惚れ込んで何度プロポーズしても、
職人の女房なんか嫌、早く親方になってよ!と断られていた)
- 妻はこっそり、メイドに左官への命令を伝えた。
そしてわざとらしく、さあ恋人を手伝っておやり!と声をあげた。メイドは左官を手伝いながら、妻の
「お駄賃あげるから手を抜きなさい、後で壊すから」
という命令を伝えた。
左官が気を利かせてドアのガラス窓を割ると、
暗い中に当時町の宿屋に滞在していたスペイン人美青年の顔が見えた。
- 仕事が終わると、夫は左官を連れて部屋を出た。
妻はすぐさま、ツルハシに飛びついた。
戻った夫が背後に立ったのに気づき、妻は失神した。夫は倒れた妻をつきっきりで看護した。
衣装部屋から物音がするたびに、夫は何か言いたげな妻を制するのだった。
「君はあの日、誰もいないと神に誓ったのに…」夫は妻を一ヶ月あまり看護したが、その後パリの娼婦にのめり込んだ。
妻は夫が去ってまもなく衰弱死したが、
屋敷を今後50年間封印するよう命じる遺言状を遺した。
夫は左官に親方の権利を買うに足る額の口止め料を払ったが、
左官は町を離れメイドは独身主義を宣言している。
- タイトルは、夫妻が住んでいた屋敷の名前。
妻は教会で知り合ったスペイン人を間男にしていた。
スペイン人は貴族で、戦争捕虜。
収容所が手狭になったので、逃亡しないと宣誓した者を国費で養う法律ができたとか。
何かで読んだ、「町一つを刑務所の代わりにする」ってのがこれに当たるのか?「アモンティラードの樽」のような死に様も、信心深い貞淑な美人妻が
「教会でいつも近くに座っていた」だけの外人と浮気するのも後味悪い。
個人的に、妻とメイド・メイドと左官の内緒話が聞こえないってどんだけ広い寝室だよ、
いやわざと知らんぷりしたのか?と考えてモヤモヤする。