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38本当にあった怖い名無し:2013/04/12(金) 11:49:05.14
童話「ラビスメナとディオニジア」

昔々、あるお城にディオニジアという名前の、
とても美しい娘がいました。
彼女は母を早くに亡くし、王様のおとうさまと暮らしていました。

お姫様という身分のせいでお友だちのいないディオニジアは、
ある日海から「ディオニジア、ディオニジア」と
自分の名前を呼ぶ声に気づきます。
海へかけて行くと、そこには醜い海蛇がいました。
海蛇は名前をラビスメナと言いました。

二人はどんどん仲良くなって行きましたが、
あるとき、王様のもとにディオニジアを妻にしたい、とある国の王様がやってきます。


40本当にあった怖い名無し:2013/04/12(金) 12:01:50.55
この王様は、亡くなった王妃様との約束を果たしたいがために
この国にやってきたのでした。
それは、王妃の残した指輪がぴったりとはまる王女と結婚すること。
よぼよぼの王様の妻にはなりたくない、とディオニジアは思いました。
しかし、指輪はぴったりと彼女の指にはまってしまいました。
お父様は「あんなお金持ちの王様の妃になれるのだ」と上機嫌です。

41 本当にあった怖い名無し:2013/04/12(金) 12:09:58.02
ラビスメナは、悲しむディオニジアにこう言いました。
「お姫様。城に帰りこう言ってください。
 野の緑に、全ての草花が散りばめられたドレスが欲しいと。
 それがないと結婚はしませんと」

王様は家来たちに必死で探させ、ついに草花のドレスを手に入れました。

「では、こう言ってください。
 今度は、海の青に、すべての魚が散りばめられたドレスが欲しいと」

王様はまた必死で探させ、海のドレスを手に入れました。


42 本当にあった怖い名無し:2013/04/12(金) 12:20:25.45
「では、最後にこう言うのです。
 夜空に、すべての星が散りばめられたドレスが欲しいと」

どうしてもディオニジアと結婚したい王様は、
またしても世界で一着しかない、星空のドレスを手に入れたのです。

「ああ、これでとうとう、あのよぼよぼの王様と結婚しなければならないのね」
さめざめと泣くディオニジア。

「お姫様、船を用意してお逃げなさい。自分の手で幸せになるのです」
感謝するディオニジアに、ラビスメナは言いました。


43 本当にあった怖い名無し:2013/04/12(金) 12:30:46.00
「ただしお姫様、私のお願いもひとつ、聞いていただけますか。
 実は私は、ある国の王女なのです。父である王様が魔法使いを怒らせたせいで、
 海蛇の姿に変えられてしまいました。呪いを解くためには、
 世界で一番幸せな乙女が、その瞬間に私の名前を三回呼ばないといけません。
 お姫様、あなたが立派な王子様と結婚するその瞬間こそ、
 あなたが世界で一番幸せな乙女になるのです」

ディオニジアはその願いを聞き入れ、
ラビスメナと別れ、別の国へ向かいました。


44 本当にあった怖い名無し:2013/04/12(金) 12:37:08.60
その国のお城で、鶏小屋の番として働くことになったディオニジア。
あるとき、お城で開かれた舞踏会に、王子様が出ることを知ります。

舞踏会の一夜目。
草花のドレスを着て現れたディオニジア。
王子様は彼女に心を射抜かれ、一晩中踊ります。
しかし、夜があける頃には、ディオニジアは鶏小屋へ戻り、
ドレスをしまって知らん顔をしていました。

二夜目。
海のドレスを着て現れたディオニジアは、王子様と踊り明かします。
しかし、今夜も彼女は消えてしまいました。


45 本当にあった怖い名無し:2013/04/12(金) 12:43:08.99
三夜目。
ディオニジアは、星空のドレスで現れました。
今夜こそと王子様は思いますが、また逃げられてしまいます。

王子様は、舞踏会が終わってから日に日に弱っていきました。
どんな薬もごちそうも、王子様の病気を治せませんでした。
ディオニジアは、「私にスープを作らせてください」と名乗り出ます。
彼女が作ったスープの中には、指輪が一つ入っていました。
「このスープを作った者を呼べ!」

王子の目の前に現れたのは、卑しい鶏番の少女ではなく、
豪華なドレスをまとったディオニジア王女でした。


46 本当にあった怖い名無し:2013/04/12(金) 12:46:39.80
早速、二人の結婚式が盛大に執り行われました。

しかし、結婚式が終わる頃、ディオニジアはふと、ラビスメナとの約束を思い出します。
「ああ、ごめんなさい。ラビスメナ、ラビスメナ…わたし、すっかり忘れていたの。
 どうすればいいの?ラビスメナ…もうすべて遅いのね」
さめざめと涙をこぼしますが、もう遅いのです。

ラビスメナと交わした約束。
一番しあわせな瞬間に、彼女の名前を三度呼ぶという約束。
幸せに浮かれていたディオニジアは、すっかり忘れてしまっていました。


48 本当にあった怖い名無し:2013/04/12(金) 12:53:26.10
可哀想に、ラビスメナは、忘れっぽい王女のせいで、
いつまでも醜い海蛇の姿のまま、深い海の底にいなければならなくなってしまいました。
美しい王女に戻って、立派な王子様と結婚するという夢も、
永遠に叶わなくなったのです。

今でも、海辺に立ってごらんなさい。
波が岩にあたって砕ける音に混じって、
「ディオニジア、ディオニジア」とかすかに聞こえるでしょう。
あれは、心から尽くした人に裏切られた、
ラビスメナの嘆きの声なのです。


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