柔らかい手(篠田節子)
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716:1/2:2013/05/18(土) 16:38:15.69
- インターネット以前の短編小説。たしか女流のミステリ作家の作品。
有名な冒険家兼写真家が、撮影中の事故で寝たきりになった。
気がつくと見知らぬ部屋に寝かされていて、
声はほとんど出ないし手がわずかにしか動かない(うろ覚え)
若く美しく従順な妻が献身的に面倒を見ている。不自由な口で訊ねると、ここは助手の実家(不動産屋)のつてで借りているマンション。
体は残念ながら治らない。との答えを得た。冒険にかまけてほったらかしだった妻が自分を監禁しているのではないか?
と危ぶんだ冒険家は、以前からやっていたパソコン通信を再開する、
助手を呼べ、と不自由な口で命令する。IT音痴の妻は首をかしげながらどうにかパソコンを電話回線に繋いだ。
若い助手は彼が回復した事を喜んでいないようだ、と冒険家は思った。妻の腕には目立つ傷跡がある。
助手と二人で南の島に長いこと撮影に出掛けたら、
妻が勝手に追いかけてきて勝手に怪我をしたのだった。
冒険家はカメラに夢中で、助手が介抱した。
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717:2/2:2013/05/18(土) 16:40:03.02
- 助手はパソコン通信で呼び出されるたびに見舞に訪れた。
『お前は家内と寝たのか?』
モニターに打ち出された質問を読んで、潔白な助手は冒険家の首を絞めた。「死んだ方が奥さんのためだ」
「紛争地帯の写真?カメラを構えるより危険な立ち入り交渉をするのは、この僕なんだよ」
「貴重な高山植物だのサンゴだのを踏み荒らして、始末書を書かされるのもこの僕だ」
「都内に一戸建てを持つのが夢だと言ったら笑ったよな、あんたは所詮お坊ちゃんなんだよ」駆け込んできた妻が助手に平手打ちを食らわせ、追い出した。
そして、ハサミでパソコンのコードを一気に切断した。
「バカな人…やっと私の元に戻ってきてくれたのに。もう離さないわよ、あなた」