百鬼夜行抄/人形供養(今市子)
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337:1/7:2013/10/25(金) 21:56:58.18
- 百鬼夜行抄は妖怪や幽霊の見える少年・律が、
親戚の女の子である司や晶と共に不思議な体験をするミステリ仕立ての漫画。
その中でも第六巻に収録されている『人形供養』は異彩を放っている。晶は大学でAという女の子から心霊相談を受けた。
何でも家族が人形みたいで変だというが、話の要領を得ない。
晶は相談を断ったが、Aが怪我をしたため、Aを家まで送ってゆく。Aの家で晶は、Aの姉を自称するBと出逢う。
Bは頸に包帯を巻いており、確かに作り物のような不自然さがあった。
晶は気味が悪くなり、自分を迎えに来るよう家族に電話する。
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338:2/7:2013/10/25(金) 21:58:06.01
- そして迎えに来たのが律だった。
しかし律はAの家の前で不可解な事故に遭い、足をくじいてしまう。
晶は医者を呼ぼうとするが、Aは、
「どうしてそんなに帰ろうとするの?」と言い、電話線をハサミで切った。そんな時、家を訪れたのが謎の男・Dだった。
Dは自分のことをAの従兄であり、十五年前にこの家を訪れたことがあると主張する。
しかしAにDの記憶はない。DはAの兄であるCに会わせろ、とAに要求した。
Aは困惑しつつ、「兄は病気で会えない」と反論した。
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339 :3/7:2013/10/25(金) 21:58:59.69
- AがDと話している最中、律と晶は家の中を散策していた。
どうやらこの家は、古い蔵の外壁を覆うようにして建っているらしい。
蔵の中で律は、七体の家族を模した人形を見つける。
そのうち一体は、天井から首吊りにされていた。
人形はどうやら供養のためのものらしい。
晶は、娘を模した人形にAと同じ怪我があるのを発見する。その頃Dは、仕事から帰って来たAの両親と顔を合わせていた。
しかし咄嗟に異常に気付き、Dは、Cを連れて帰らせろとAに再び迫った。
困惑するAにDは言った。
「C俺の弟だ! 君の兄さんじゃない!」
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340 :4/7:2013/10/25(金) 21:59:41.50
- 蔵の中で律と晶はAとDに合流し、Dから十五年前の出来事について聞かされる。
その頃Dの両親は仲が悪く、母親は実家であるこの家にDとCを連れて来ていた。
DとCはAを怖がらせるため、人形を首吊りにしてこの蔵で遊んでいた。
ところが人形が動きだし、三人はパニックになって蔵から逃げようとしたのだ。
しかし蔵には鍵が掛かっており、逃げ出すことが出来ない。眼が醒めた時、どういうわけかDだけが父親の許にいた。
Cと母親は戻ってこなかった。
その母親というのが、Aが母親と思い込んでいた人物である。
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341 :5/7:2013/10/25(金) 22:00:31.94
- 話を要約すると、Aが家族と思い込んでいた人物は、
母親→十五年前に帰って来なかったDの母親。
父親→Dの母親の弟。
Aの姉B→Aの母親。
Aの兄C→Dの弟。
偽りの家族構成は、人形の家族構成と一致する。首を吊っていた人形はBだ。ただし七体の人形に対し、頭数が一人足りない。
不思議な呪力を宿した人形は、元々バラバラの人間を取り込み、
さらに一人の人間を取り込もうとしていた。
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342 :6/7:2013/10/25(金) 22:01:20.66
- Aは異常事態に気づき、晶と共にCの部屋へ向かう。
CはAより一つ年上だが、部屋には幼いままのCの姿があった。
そこへBが現れ、十五年前蔵に鍵を掛けたのは自分だと告白した。Cは十五年前、吐瀉物を喉に詰まらせて死んだという。
そのことを責められ、BはDの母親を殺した。
途方に暮れていた時、人形が助けてくれたのだという。
Aは連れ出したCをDに預け、この家から逃げ出そうとした。
しかしそこでAは倒れた。Aが倒れた床には、一体の人形があった。
Dは幼いCを抱き、律と晶と共に家から逃げ出した。
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343 :7/7:2013/10/25(金) 22:02:04.15
- しかし、いざ車に乗り込もうとした時だ。
Dは自分が抱えているのが、一体の人形であることに気づく。
DはCを連れ出すべく、再び家の中に駆け込んだ。
晶は唐突にアクセルを踏んで車を走らせた。困惑する律に晶は言う。
「人形はあともう一人の人間が欲しいのよ!それは貴方でも私でも誰でも良かったわけ!
だからここは逃げるしかないの!」その後は振り返らずにひたすら突っ走った。
なぜなら、うっかりバックミラーなんか覗いたりしたら……。
小さな人形がゆっくりと立ち上がり、歩き出すのが……見えそうな気がして。