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チャールズ・ボーモント「越して来た夫婦」58年に別名義で発表

A夫妻は都会の狭い賃貸から郊外の中古住宅に越して来た。
前の持ち主が自殺した時の血痕が洗面所にかすかに残っているのが気に入らないが、
妻がこの家に惚れ込んだのだ。

今夜は近所の住民を招く初めてのホームパーティーだが、
養子のaはお客に会うのを嫌がり、
Aが機関車のおもちゃを買ってやっても線路を組み立てもせず塞ぎこんでいる。
夏休みに学校の友達のいない土地に引っ越したからよ、
学校が始まれば元気になるわ、と妻は暢気だ。

aは、あのおじさん達がガレージでやってる事を見ちゃったから怖い、
お部屋に引っ込んでてもいいでしょ、と泣いた。


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Aが何の事だと訊ねると、妻はaを叱って子供部屋に追い立てた。
おかしな作り話をするなんてあの子の本当の親は何者なのかしら、
と言う妻をAは、もう僕らが親だと制した。
私たちの血筋にはあんな気持ち悪い作り話をする人はいないわ、
と言う妻に、だから一体何の話だと訊ねた時、客がやって来た。

Aは今で言うコミュ障だが妻は社交的で、
近所の女たちとはもうファーストネームで呼び合う仲だ。
結婚して7年、相変わらず若々しく美しい。

この住宅地には成功者ばかりが住んでいる。
Aは公認会計士、
客は有名広告代理店の重役、有名弁護士、一流エンジニア、ハリウッドの脚本家等々。
妻も美人ばかりだ。


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女主人役を立派に勤める妻を見てAは、
イキイキとして実に美しい、彼女と寝る事ができたらきっと素敵だろう…と思った。

ラジオの音楽に合わせて皆踊り始めた。
広告代理店の重役Bの妻、20年代風のほっそりとした美女がAを誘った。
B妻は踊りながら、a君を養子にお迎えになったのは
あなた方お二人の条件を思えば実にご立派ですわ、と囁いた。
意味がわからず訊くAにB妻は詫びた。

(あいつめ、あの事までペラペラと喋ったのか!)
“宅の主人はイ○ポですのよ、御宅様はいかが?”

Aはキッチンに逃げ、泣いた。
そこにハリウッドの有名脚本家、今夜の客で唯一独身のCが現れて言った。


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僕はあなたが気に入りました、だから忠告します。今宵は満月、今すぐ引っ越すんです。
苛立ちを抑えて理由を聞こうとした時、
Bがキッチンの入口で、ずるいじゃないか今夜のホストを独占するなんて!と叫んだ。
既に酔っていたCは気まずそうに退出した。

困ったものだ、ハリウッドの一流の脚本家が酒に溺れて。
ところで息子さんに、Bおじさんが会いたがっていたとお伝えくださいよ。
と、Bはニコニコしている。

パーティーが終わり客が帰った頃、
Cから大事な話があるから家に来るようにと電話があった。
AがC宅を訪ねると、Cはやけに強く苦い酒を勧めて長い話をした。


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この街区の住民は成功者で、働かなくてもいい程の財産を既に作っている。
退屈しのぎに集まって、最初は単純なゲームをしていた。
そのうち高額な賭けトランプをやり、それにも飽きて負けた者が脱ぐストリップ・ポーカーを、
さらに金の代わりに妻を賭けるようになった。

結婚に備えて家を建てたが婚約者に捨てられて呆然としていたCも、
リーダー格のBに誘われて参加した。

そのうちスワッピング、さらに乱交に発展し、Bは写真を撮った。
脅迫する意思があったのかどうかはわからないが。
スリルを求めて犯罪にも手を染めた。銀行強盗、放火など。

さらに史実や創作の有名シーンを再現する遊びに手を染めた。


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例えばジャンヌダルクの焚刑やマリー・アントワネットの処刑、
ハムレットの叔父殺しを、誘拐したビート族を犠牲にして再現した。

彼らは他人を犠牲にする事に飽きて自分らでくじを引き、
ハズレを引いたA家の前の持ち主を自殺させた。
Cは空き家になったA家を皆で買い取って更地にすべき、
次の住人が我々のように退屈して刺激を求めるとは限らないのだから、
と主張したがBは反対した。
誰だって退屈するに決まってる、という主張だ。

我々…いいえ彼らは満月の夜に集まるのです、
あなた方がここを去るべき理由をお見せします、とCはAをB家に案内した。
低い位置の窓を開けて覗くと、今夜の客が集まっている。


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皆、Bを中心に呪文を唱えている。
悪魔を召喚するのです、僕は信じちゃいませんがね。
Bだって信じちゃいません。でも退屈ですから。とCが囁く。

地下室で二人の男が、シーツに包まれた荷物を台に乗せた。
荷物はおかしな音を立ててもがいている。
Bがシーツを剥ぐと縛られたA妻が現れた。
彼らは…いいえ我々は、ついに処女を見つけたのです、とCが囁く。
AはC宅で勧められた酒に盛られた毒で倒れた。

aはもう殺されていて、
毒で動けなくなったAと殺されたA妻は家に戻され、
失火を装った放火で家ごと全焼。
aはどこかのガレージで集会の準備か、
前回の集会の後始末を見て怯えていたのだろう。

 

夜の旅その他の旅 (異色作家短篇集)
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