収容所惑星(アルカジイ・ストルガツキー、ボリス・ストルガツキー)

177収容所惑星1/2:2013/12/25(水) 19:23:11.19
作者はロシアのSF作家ストルガツキイ。近未来を舞台にしたSF。

主人公は、地球とまだ交流のない未開の惑星に単身調査に行き、
レポートを出すのを仕事にしている。
実入りが多い代わりに危険なことも多く、身の安全も保障されないので、
その時代では長距離トラックの運転手みたいな扱いの仕事。
家族からもいい顔されていない。
主人公はまだ若く、冒険心があったので、
つまらないお役所仕事よりはマシだと思っている。

ある時、調査に入った惑星でロケットが故障した。
理由は忘れたけど完璧に壊れてしまって、救難信号も出せないし、
持ち物も何も持ち出せないまま、一人惑星に取り残される。
仕方なく惑星の住民に助けを求めるが、住民たちに不審者として捕獲されてしまう。

その星の文明はある程度は進んでて、自動車やラジオ、テレビくらいはある。
でも、天動説を頑なに信じているので、主人公が宇宙人であるなんて思いもよらない。
主人公は地球の科学力により、恐ろしくケガの回復力が高く、運動能力も高い。
そのことに驚く住民たち。
軍や医療機関らしきところをたらいまわしにされた後、
主人公はある人物に誘拐される。

連れ去られた先で逃げ出しさまよっているところを
彼はその惑星の政府に反抗するレジスタンスに助けられる。
主人公の特殊能力に目を付けたレジスタンスは、一緒に革命運動に参加してほしいという。
最初は地球に帰ることしか考えていなかった主人公も、言葉がわかってきて、
友人や彼女候補が出来ていくうち、心が揺れてくる。


178収容所惑星2/2:2013/12/25(水) 19:23:54.88
その星では、一日に数回、政府が謎の超音波を惑星中に流す。
それを浴びるとたまらなく頭が痛くなり
自分で考えたり反抗したりする気力がうせてしまうのだ。
どんなエリートや金持ちたちもその影響からは逃れることができない。

しかし、地球人である主人公は、体質が違うため全くその影響を受けない。
超音波に苦しみ、政府の言いなりになる人たちを見て、
主人公は「なぜこんなことを」と怒りに燃える。

身体能力が高く、銃によるケガもすぐ治り、超音波も効かない。
地球では平凡な青年にすぎない主人公は、その星ではスーパーマンに等しかった。
やがて主人公がレジスタンスのリーダーとなり、めざましい活躍を遂げていく。

数年経ち、多くの仲間を犠牲にしながらも、主人公たちはやっと黒幕中の黒幕にたどりつく。
どうやらそいつは、政府や軍をあやつり、その星で起こる内戦もコントロールしているらしい。
いよいよ強力になっていく超音波に、倒れていく仲間たち。
しかし、主人公たちも負けていない。
主人公が計画を立て、超音波を出す塔を次々と破壊していったのだ。
「もし革命が失敗して死んでも、何の後悔もない」
そう感じる主人公。

そしてボスとの対面……。
初めて会ったボスはあきれた声で言った。
「なぜこんなことをする?」
驚くことに、それは流暢なドイツ語だった。
そう、ボスは地球人だったのだ。

地球から極秘でこの惑星に潜入していたボスの目的は、
無知で野蛮で内戦ばかり繰り返す可哀想な原住民を救済すること。
超音波は彼らの凶暴性を押さえ、平和で正しい道に導くための技術だったのだ。
実は、ボスの任務を知らずに調査に来た主人公を、
一度は助けて地球に戻そうとしてくれたのだが(最初の誘拐)
主人公は勝手に逃げ出してしまった。

「君はすべてを滅茶苦茶にした。もういいから早く地球に帰りなさい」
とボスは静かに言う。
どうしたらいいかわらかず、呆然とする主人公の描写でラスト。


180 本当にあった怖い名無し:2013/12/25(水) 21:44:42.14
ロシア語じゃなくてドイツ語なんだ

まあジョークでも、
アメリカとソビエトのロケットが同時に月着陸に成功し、
宇宙飛行士がお互いに挨拶を交わした
「「グーテンターク!」」と
こんな感じで米ソ両方、ドイツのロケット技術を元にしてはいるが


181 本当にあった怖い名無し:2013/12/25(水) 22:04:22.07
乙でした。
その土地の事情を知らない余所者が善意で引っ掻き回すとか、
それ以前にやはり余所者のドイツ人が
善意で現地人を洗脳するっていうのが後味悪いな。

183 本当にあった怖い名無し:2013/12/25(水) 22:24:11.18
>181
作者がロシア人だから、たぶん何か比喩みたいなもんがあるんだろうね。
当事者は正義と思ってやってることが、もっと大きな力から見たら
「単なる余計なお世話」でしかないというのも後味悪い。

203 本当にあった怖い名無し:2013/12/26(木) 18:04:41.99
>>183
タイトルからして、ソルジェニーツィンの『収容所群島』を意識しているだろ。
マルクス・エンゲルスは今の区分ならドイツ人だし。

204 本当にあった怖い名無し:2013/12/26(木) 18:11:00.37
>203
収容所惑星読んだけど収容所群島知らなかった。
今wikiで見て納得。発表時期同じくらいだし。
このスレいつも勉強になる。読書の守備範囲が広くなってイイ!

 

収容所惑星 (ハヤカワ文庫SF)
収容所惑星
(ハヤカワ文庫SF)
収容所群島(1) 1918-1956 文学的考察
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